
- 他人の価値判断に基づいて、自分や他者の神経発達特性を疑うことはどれほど適切なのか?
- SNSの情報をもとに自己診断をし、医療機関での診断を希望することはリスクがあるのか?
- 発達障害に対する理解を深めるために、どのように正確な情報を見極めればよいのか?
「ねぇ、もしかしてADHDなんじゃない?」
ある日、私が「仕事中に集中しすぎることもあれば、まったく集中できないときもある」と何気なく話したとき、親しい友人がこう言ってきました。
悪気はないのはわかっているけれど、そんなふうに軽く「診断」みたいなことを言うのって、いつから当たり前になったんでしょう?
しかも、時にはまったくの他人からも言われたりして。
正直なところ、それってちょっと失礼じゃないですか?
もちろん、私はADHD(注意欠陥・多動性障害)ではないと思っているし、もしそうだとしたら、スマホを持ってるオフィスワーカーは全員そうなんじゃない? と思ってしまいます。
それに、医療の専門知識がない人が、簡単にそういうラベルを人に貼るのって、ちょっと変な時代になってきたなぁと感じます。
最近、この話題がまた注目されているのは、俳優のベラ・ラムジーがドラマ『The Last of Us』の撮影中に、自閉スペクトラム症(ASD)の診断を受けたことを明かしたからです。
撮影スタッフの一人が、本人の子どもも神経発達の特性があるため、ラムジーさんの様子に気づいて助言したそうです。
こうしたケースはまれで、多くの場合はまったく資格のない人が勝手な判断をしています。
SNSの影響で、「自分も、友だちも、もしかして神経発達に特性があるかも」と思う人が急増しています。
TikTokやInstagramなどではADHDや自閉スペクトラム症についての投稿が急増し、当初は啓発や偏見をなくす役割を果たしていた一方で、最近では誤情報も多くなってきており、自分や他人を誤って「自己診断」してしまう人が増えているんです。
今月発表されたカナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究では、TikTokの人気ADHD動画100本のうち、半分以下しか臨床的に正確な内容ではなかったと報告されています。
残りの多くは、「部屋が散らかっている」「鍵をよく忘れる」「仕事を後回しにする」といった、ごく普通の行動を“症状”として取り上げていたそうです。
こうした動画をよく見ている若者たちは、ADHDの症状を過剰に信じてしまう傾向があるとのこと。
自閉スペクトラム症についても同じ傾向があります。
2024年12月に科学誌『Drugs, Addictions and Health』に掲載された分析によると、TikTokで「autism spectrum disorder(自閉スペクトラム症)」というタグが付いた100本の動画のうち、有用だと判断されたのは24%だけ。誤解を招く内容が40%で、投稿者のほとんどは医療の専門家ではありませんでした。
しかも、そうした動画の多くは「診断」や「症状」に焦点を当てていて、全体の62%がそれに該当していたとか。
これじゃあ、SNSを見ている人たちが、日常の中に“神経発達の特性”をいたるところで見つけ始めるのも無理はありません。
一部の人は、こうしたSNSの情報をもとに「もしかして自分も」と思い、実際に医療機関での診断を求めるケースも増えています。
イギリスでは2024年8月時点で、自閉スペクトラム症の診断を希望する人が前年比22%増の20万人に達し、2019年の10倍以上。
診断を待っている人の90%が、推奨される13週間を超えて待たされているというデータもあります。
特に深刻なのは子どもたちの状況で、コロナ禍以降、診断待ちの子どもが350%も増加。
待機期間は2年以上にも及び、児童思春期精神医療サービス(CAMHS)は対応しきれていません。
ある友人の話では、自閉症と診断された甥が、ニーズに対応できる地元の中学校を見つけられずに困っているそうです。
診断はあくまでスタート地点。診断後にサポートが受けられなければ意味がありません。
こうした流れに対して、一部の専門家は「過剰診断のリスクがある」と警鐘を鳴らす一方、「実際に特性を持つ人が増えているなら、支援の方に力を入れるべきでは?」という声もあります。
ロンドン大学のウィリアム・マンディ教授は「診断を“ある/ない”で分けるのではなく、“こういう特性がある。
その人の生活にどう影響しているのか、どう支援できるか”を考えるべき」と語っています。
いずれにせよ、素人の“なんちゃって診断”が最善の方法とは言えません。
もし次に、ちょっと几帳面なご近所さんに「自閉症っぽいね」なんて言いたくなったり、10分遅刻してくる同僚を「発達障害かも」なんて思ったりしたときは、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。
もしかしたら、問題なのはその人ではなく、自分のほうかもしれません。
(出典:英INDEPENDENT)(画像:たーとるうぃず)
笑って済ませられる人もいれば、そうでない人もいるはずです。
また、すでに診断されている人たちはどう思うでしょうか。
「『発達障害かも』なんて思ったりしたときは、ちょっと立ち止まって考えてみましょう」
(チャーリー)