
- 自閉症の人が食事に対して感じる不安やストレスを和らげるためにどのような方法があるのか?
- 食事に対する感覚の違いは、自閉症の人の生活にどのように影響するのか?
- 自閉症の人が偏食を克服するためには、どのような支援が効果的なのか?
他人と一緒に食事をすることに強いストレスを感じたり、一般的な食べ物の匂いや食感をひどく不快に感じたりすることは、自閉症の人々にとってよくある経験です。
こうした感覚の違いが、自閉症の人々の食生活に大きな影響を与えることは想像に難くありません。
イギリスでは人口の100人に1人が自閉症だと推定されていますが、実際にはその2倍ほどいる可能性も指摘されています。
また、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもの約70%は、食べられるものが非常に限られているなど、特徴的な食習慣をもっています。
自閉症の人々の食事支援を専門とする臨床心理士のエリザベス・シェイ博士は、次のように述べています。
「このような制限された食習慣は、特定の食品グループだけを好むという形で現れることが多いです。
たとえば、『ベージュ色の炭水化物』のように、見た目や食感が似ていて、感覚的に食べやすいものばかりを好むケースがあります。
ただし、一部の人にとっては、こうした偏食が深刻な問題になります。
体重が著しく減ったり、栄養が不足したりすることもあります」
英国自閉症協会によると、自閉症の人は摂食障害になりやすい傾向があり、摂食障害を持つ人のうち4%から23%が自閉症だという研究結果もあります。
なかでも自閉症と関連が深いのが、「回避・制限性食物摂取障害(ARFID)」という摂食障害です。
ARFIDは「極端に限られた種類の食べ物しか受け付けない障害」として知られていますが、摂食障害支援団体BEATによれば、その症状は人によって大きく異なります。
そのため、ARFIDは様々な症状を含む「総称」のような障害とされています。
ただ、すべてのARFID患者に共通するのは、「食べ物の摂取量または種類、あるいはその両方を避けたり制限したりする」点です。
また、他の摂食障害と異なり、ARFIDは自分の体型や体重を気にする気持ちとは関係がないとされています。
周囲から聞こえる賑やかな会話や食器が触れ合う音、多彩な食べ物の香り、そしてテーブルを囲む友人や家族とのにぎやかな食卓……。
多くの定型発達(神経学的に一般的とされる発達)の人にとってこれは楽しい状況でしょうが、自閉症の人には不快で耐えがたいものになることがあります。
学校の食堂で食事をする子どもたちにも同じことが言えます。
30歳のロブは、かつて非常に食べられるものが少なかったといい、「学校で食事をするのはつらかった。人が食べているのを見ると吐き気がして、いつも一人で食べたかった」と話しています。
結局、学校では何も食べずに帰宅することも多かったそうです。
近年は、自閉症を公表する有名人が増えたことで、こうした問題への理解が進みつつあります。
動物番組の人気司会者クリス・パッカムもその一人で、彼は自分の感覚過敏について率直に語っています。
「フルーツなど、手がべたべたする食べ物は触りたくないんです。
食べたら必ず手を洗わないと耐えられないので、すべての食べ物をフォークやナイフで食べます。
食事をコントロールすることで安心感を得ることもあります。
とくにストレスがある時はその傾向が強くなります」と話しています。
食事に対する不安は、いつも同じ椅子に座る、皿の上の食べ物を特定の並び方にするなど、「儀式的」な行動に現れることがあります。
シェイ博士は、「不安になると、安心を得るために秩序を作ろうとしてしまいます。これは単なるわがままや頑固さではなく、恐怖症に近い状態です」と説明します。
また、これが理由で自閉症の人が特定の食品やブランドにこだわる傾向があるのです。「不安が強くなるほど、感覚が過敏になり、普段よりもさらに匂いや音、味が気になってしまいます」。
食事に影響するのは、外的な刺激だけではありません。
「インテロセプション」と呼ばれる、身体の内側の感覚にも違いがあります。
シェイ博士は、「自閉症など神経発達が異なる人は、自分がいつ空腹なのかが分かりにくい場合があります。長時間何も食べないこともあり、健康面でリスクになることがあります」と指摘します。
さらに、自閉症と消化器系のトラブルにも関係があります。
データによると、自閉症の子どもはそうでない子どもよりも、便秘や下痢、腹痛などの消化器症状が4倍も起こりやすいと報告されています。
これらの症状があると、食べ物との関係がさらに複雑になるでしょう。
こうした消化器の問題が「食生活によるものなのか、それとも自閉症特有のものなのかはまだ不明です」とシェイ博士は述べています。
一部では、グルテン(小麦などに含まれるたんぱく質)やカゼイン(乳製品に含まれるたんぱく質)を除去した食事が効果的との意見もありますが、研究結果はまだ一貫していません。
英国栄養士協会の広報担当バヒー・ヴァンデボアは、「2016年の研究では、グルテン・カゼイン除去食で症状が改善したという結果は得られませんでした」と指摘しています。
こうした除去食には慎重に取り組む必要があり、英国の国立医療保健評価機構(NICE)も、自閉症の特性を管理するために食事制限やサプリメントを使用すべきではないとしています。
最後に、自閉症の人が食べることを楽にするために、次のような支援方法があります。
- 本人の感覚や経験をよく理解する。
- 健康的でなくても好きな食べ物を許容し、不安を軽減する。
- 深呼吸などを取り入れて不安を和らげる。
- 規則的な食事の時間を設定する。
- 苦手な食材を無理なく、段階的に慣れさせる(まずは見る、触るだけなど)。
こうしたサポートによって、徐々に食事を楽しめるようになるケースも多いのです。
(出典:英BBC)(画像:たーとるうぃず)
うちの子も小さな頃は、からあげなど、特定のものしか食べませんでした。
しかし、特別支援学校に入って、先生に助けられて、大きくなった今では何でも食べます。
あせらず、取り組んでいってほしいと思います。
(チャーリー)