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自閉症・ADHDと診断されたい「診断の時代」。診断の意味

time 2025/03/26

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

自閉症・ADHDと診断されたい「診断の時代」。診断の意味
  • 現代の診断基準はどれほど信頼できるものなのか?
  • 「過剰診断」が私たちの生活にどんな影響を与えるのか?
  • 障害とアイデンティティの関係はどう考えるべきなのか?

『憂鬱の解剖学』(ロバート・バートン著)は400年以上も前に書かれましたが、現代人にも不思議なほど響く内容を持っています。
一見すると古めかしい言葉遣いやラテン語の引用に溢れているため、現代的とは言い難いようにも感じます。
しかしよく読んでみると、人間の心の悩みや悲しみ、苦しみの症状、原因、予後、治療法を詳細に記したその内容は、まるで最新の医学書や心理学の専門書を読んでいるかのような錯覚を覚えるのです。

とくにバートンが詳しく論じている「恋愛憂鬱症」という状態は、現代の私たちにも驚くほど身近なものに感じられるでしょう。
その症状として挙げられる食欲不振、やつれ、落ちくぼんだ目、恐怖感、深い悲しみ、不眠、他者への疑念、ため息やうめき、イライラ、顔色の悪さなどは、現代においても失恋や片想いの状態で多くの人が経験するものです。
さらにバートンは、こうした状態の原因を食事や気候、さらには占星術的な要因にまで求めているところに、当時の時代背景を感じさせます。
回復の見込みについてバートンは楽観的ではありませんが、信頼できる人からの「良き助言や説得」が、苦しむ人を助ける可能性があると提案しています。

もちろん現代では「恋愛憂鬱症」は正式な病名として認識されていませんが、バートンが示した「症状をもとに病気を見極める(診断する)」という行為は、いまなお世界中の診察室で毎日行われています。
診断とは、元来ギリシャ語で「区別する」「違いを知る」という意味を持ちます。鳥を分類したり、車の種類を見分けたりする行為と本質的には同じだと考えると、診断という言葉の意味がぐっと身近になります。

しかし、この診断という行為は非常に日常的である一方で、実は社会的に大きな論争を呼ぶものでもあります。
近年、さまざまな病気の診断件数が急増し、とくに精神疾患については社会的な注目度も非常に高まっています。
インターネットやSNSを通じて診断名が一気に広まり、かつて強い偏見や差別の対象だったうつ病やADHD(注意欠如・多動症)なども、最近ではむしろ積極的に診断を求める人さえいるほどになりました。

その一方で、診断という行為が行き過ぎていることへの批判も近年強まっています。
日常の些細な問題までもが「病気」として定義されてしまうことへの批判や、一部の精神保健の専門家からは、そもそも診断という枠組みそのものを捨てるべきだという主張さえ出ています。
またTikTokやInstagramなどのSNS上では、誤解を招くような自己診断が横行していることも問題視されています。

こうした状況を深く分析し、説得力のある視点を提供しているのが、アイルランド出身の神経科医スザンヌ・オサリヴァンの著書『診断の時代』(The Age of Diagnosis)です。
彼女は、自身の臨床経験をもとに「現代は診断が過剰に広がりすぎており、その弊害を社会全体が受けている」と指摘します。

とくに彼女が問題視しているのは、「過剰診断」と「医療化」の二つの現象です。

過剰診断とは、単に病気でないものを病気として診断するという意味ではありません。
診断を下すことで得られる利益よりも、むしろ診断によるデメリットの方が大きい状況を指します。
たとえば、自閉症やADHDは近年著しく診断件数が増加しましたが、これは実際にその病気が増えたのではなく、むしろ診断基準が曖昧で緩やかになり、より広い範囲の人々を対象にするようになった結果だとオサリヴァンは述べています。

もう一つの「医療化」とは、病気の定義がどんどん広がり、普通の人生の苦難や悩みまでもが「病気」として扱われる現象のことです。
軽度の精神的苦痛や単なる日常的な不安やストレスまでもが病名をつけられ、医療の対象となってしまう状況は、結果として人々をより不安にさせ、無用な治療を増やし、さらには医療資源の無駄遣いにつながります。

オサリヴァンは、この診断の広がりが個人にとって心理的負担や自尊心の低下を引き起こし、さらに自己認識や将来への希望を損なう可能性を指摘します。
とくにADHDや自閉症の診断をアイデンティティとして捉える近年の傾向に対しては批判的であり、診断に頼りすぎることは人の可能性を狭めてしまうと警告します。

また、がん遺伝子スクリーニングなど他の分野においても、診断や検査が必ずしも患者の利益につながらず、むしろ不安を増幅し過剰な医療介入を招くことが多いと指摘しています。

私たちは今、診断があまりに手軽で身近になった「診断の時代」に生きています。
しかし、この現状を深く理解し、診断を乱用するのではなく、本当に必要な場合のみ慎重に診断を下すという視点を持つことが求められています。
診断という行為そのものを問い直すことが、現代を生きる私たちには不可欠なのかもしれません。

(出典:THE CONVERSATION)(画像:たーとるうぃず)

自閉症や発達障害と診断される人、自分でそうだと診断する人の近年の急増にともない、その障害の定義や診断に焦点をあてる論調が増えてきました。

際限なしの増加の結果、本当に支援が必要な方に、支援が届かなくなってしまう未来。
私もそうですが、そんな未来への不安と危惧が増えているのでしょう。

自閉症を違いとする再定義が包括的で肯定的な世界にする

(チャーリー)


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