
- 自閉スペクトラム症のある人が就職面接でどのように評価されることが多いのか?
- 神経多様性に関する教育は、求職者に対する偏見をどのように軽減できるのか?
- トレーニングを受けた面接官は、求職者の採用意欲にどのような影響を与えるのか?
自閉スペクトラム症(ASD)のある求職者は、就職面接の際に不利になることがよく知られています。
その主な理由は、面接官が彼らの社会的な行動の違い(例えば、目を合わせにくい、ジェスチャーが独特であるなど)をネガティブに受け取り、「ぎこちない」「親しみにくい」と評価してしまうことにあります。
アメリカのチャールストン大学を中心とした研究チームは、ASDを持つ求職者に対するこうした偏見を減らす方法として、面接官に対して「神経多様性(ニューロダイバーシティ)」に関するトレーニングを実施し、その効果を調べました。
研究では、アメリカ全土から集めた一般の参加者(96名)と大学生(205名)を対象に実施しました。
参加者は、まずオンラインで約30分の神経多様性に関するトレーニングを受講しました。
このトレーニングでは、自閉スペクトラム症の診断基準や行動特性についての基本的な知識を紹介し、さらにASDを持つ当事者が自身の体験を語るビデオや、専門家による解説を通して、参加者がASDへの理解を深められるよう工夫されていました。
トレーニング終了後、参加者は内容の理解度をチェックするテストを受け、80%以上の正答率を達成するまでトレーニングを繰り返す仕組みになっていました。
その後、参加者は一定期間を空けてから、求職者の就職面接を模した映像を評価する第2段階に進みました。
一般参加者はトレーニングから2週間後、大学生は2か月後に、この映像評価を行いました。
映像は、実際の大学生(ASDあり・なし)が夢の職業に応募するという設定で撮影されたもので、参加者には各求職者がASDを持っているか否かが事前に知らされました。
参加者は、映像の視聴後に求職者の「好感度」「信頼性」「自信」「ぎこちなさ」などの社会的特徴について7段階で評価し、最終的に「自分が採用するなら、この人を雇いたいか」を評価しました。
結果として、参加者はASDを持つ求職者を「ぎこちない」「自分とは似ていない」と感じる傾向が残っていましたが、
一方で「信頼できる」「率直である」「自信がある」という評価も同時に多くありました。
また、採用したいかという評価については、ASDのある人とない人の間で差は見られず、採用意欲に影響がなかったことが分かりました。
この結果から、事前に神経多様性に関するトレーニングを受け、求職者がASDであることを知っている評価者は、ASDのある求職者に対してより公平で前向きな評価を下せることが示されました。
また、その効果はトレーニング後数か月間持続することも示されました。
研究チームは「神経多様性に関する教育とASD診断の開示を組み合わせることで、就職活動におけるASDの求職者への偏見を軽減し、公平な採用の機会を提供できる可能性がある」と結論づけています。
ただし、実際の職場環境においても同様の効果が得られるかどうかは今後の課題であり、さらなる研究が必要だとしています。
(出典:Journal of Autism and Developmental Disorders)(画像:たーとるうぃず)
こうした偏見は、企業にとっても不利なことになります。競争力も低くしてしまいます。
正しい認識をもって頂かなければなりません。
(チャーリー)