
- 自閉症スペクトラム障害を持つ子どもは、どのように偏った食習慣の影響を受けるのか?
- 栄養不足を早期に発見するためには、どのような対策が有効か?
- 家庭や医療機関が連携することで、どのように子どもたちの栄養状態を改善できるのか?
近年、米国では自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子どもたちが急増しています。
米国の最新データによると、2020年には子どもの2.8%がASDと診断されており、とくに男児では4%に達しています。
ASDとは、コミュニケーションの困難さ、特定の行動への強いこだわり、感覚過敏などを特徴とする神経発達障害です。
こうした特徴が食習慣にも影響を及ぼし、極端に偏った食事パターンを持つ子どもが多いことが問題となっています。
2025年3月に発表された米国のテキサス小児病院の研究チームによる論文では、自閉症の子がとくに微量栄養素(ビタミンやミネラル)の不足に陥りやすいことが指摘されています。
この研究では2014年から2025年までの10年間に報告された自閉症の子の栄養不足に関する症例を分析し、具体的な栄養不足の状況とその影響を検証しました。
その結果、最も頻繁に不足が報告された栄養素は、ビタミンD(25%)、ビタミンA(約25%)、ビタミンB群(18%)、カルシウム(約11%)、鉄(約10%)でした。
たとえば、ビタミンDとカルシウムの不足は骨を弱くし、「くる病」などの骨疾患を引き起こします。ビタミンA不足では夜盲症(暗い場所での視力低下)や眼球の乾燥症が生じ、放置すると失明のリスクさえあります。
また、ビタミンB群の不足は皮膚炎や神経障害、鉄不足は貧血や発達への影響など、多様な症状を引き起こします。
この研究で重要な発見は、外見的には健康そうでBMI(体格指数)が正常でも、栄養不足が生じるケースがあることです。
自閉症の子は偏った食習慣を持ちやすく、好きな食べ物ばかりを摂取することで、知らない間に特定の栄養素が極端に不足してしまうのです。
たとえばあるケースでは、13歳の男児がパンとピーナッツバターに偏った食生活を続けた結果、ヨウ素不足により甲状腺が異常に腫れ、深刻な甲状腺機能低下症を発症しました。
また、7歳の別の子どもはほぼチーズスナックのみの食生活が原因でビタミンCや鉄不足となり、壊血病を発症しました。
研究者たちは、自閉症の子どもたちの栄養状態をより早く正確に把握し、栄養士を含む専門家が早期介入することの重要性を強調しています。
とくに、単なるサプリメント補給だけでなく、食生活の改善支援や長期的な栄養ケアの必要性も訴えています。
日本においても、この問題は決して他人事ではないでしょう。
家庭や医療機関、教育機関が連携して、子どもたちの栄養状態を定期的に評価し、早めの対策を取ることが重要です。
見えないところで進行する栄養不足を防ぐことが、自閉症の子どもたちの健康や成長を守るための第一歩となるでしょう。
(出典:Nutrients)(画像:たーとるうぃず)
自閉症の子には偏食が多く、その結果が示された研究といえるでしょう。
親や周りの人たちが、いっそう気をつけなければなりません。
(チャーリー)