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自閉症の人は「読み方」が違う?脳の活動パターンを解析。研究

time 2025/03/14

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自閉症の人は「読み方」が違う?脳の活動パターンを解析。研究
  • 自閉症の人々が言葉を読む際、どのように脳の働きが異なるのか?
  • 自閉症の人が文字と音の対応を学ぶ際、どのようなアプローチが効果的なのか?
  • 具体的なイメージを持つ単語と抽象的な単語では、自閉症の人々の理解にどのような違いがあるのか?

自閉症の人たちは、単語を読むときに脳の働かせ方が自閉症でない人とは異なることが、アメリカのラトガース大学の心理学部コリー・マッケイブ博士らの最新の研究で明らかになりました。

自閉症スペクトラムの人々の中には、文字を見てそれを正確に発音する能力(いわゆる文字の解読能力)にとくに優れた人もいますが、その一方で文章全体の意味を理解する読解力が苦手であることがしばしば指摘されています。
つまり、「書かれた言葉を読むことは得意だが、その意味を十分に理解することは難しい」という現象があるのです。

こうした特徴の理由を調べるため、研究チームは、自閉症のある成人19人と自閉症のない成人21人の計40人を対象に、脳の活動を測定するMRI(磁気共鳴画像)を使い、単語と「疑似語」(実際には意味がなく、発音だけ可能な言葉)を声に出して読む際の行動や脳活動を詳しく調査しました。

参加者には、「リンゴ」や「蛾(が)」のような実際に使われる単語のほか、「wint」や「hont」のような実際には存在しないが、発音は可能な疑似語を含む合計220個の言葉を、MRIスキャナーの中で一つずつ声に出して読んでもらいました。
研究者たちは、それらの単語を読む際の正確さや反応時間(読み始めるまでにかかる時間)を測定し、同時に脳のどの領域が活性化するのかを観察しました。

研究の結果、全体的な正確さや反応速度には自閉症と自閉症でない人々の間で大きな違いはありませんでしたが、詳しく分析したところ、自閉症の人々は特定の特徴を持つ単語に対して異なる反応を示すことが分かりました。

とくに注目されたのが「イメージしやすさ」という単語の特徴です。
「イメージしやすい言葉」とは、例えば「リンゴ」「犬」「山」といった視覚的に明確で具体的なイメージを頭に描きやすい言葉のことです。
一方、「正義」「真実」「信頼」など抽象的で具体的なイメージを描くのが難しい言葉では、そのような効果はあまり見られませんでした。

自閉症の人々は、イメージがしやすい単語を読む際には反応速度がとくに早くなる傾向がありました。
これは、自閉症の人々が抽象的な意味を理解する経路を使うよりも、具体的な視覚的イメージを伴う情報処理を得意としている可能性を示唆しています。
つまり、自閉症の人にとって、頭に映像が浮かびやすい言葉ほど迅速に処理できるのではないかと考えられるのです。

さらに、疑似語を使った実験でも、自閉症の人々に特徴的な傾向がみられました。
疑似語の文字と発音が規則的で一致しているほど、自閉症の人々の脳の活動が減少し、効率よく言葉を読み上げることができていました。
この時、脳内では、とくに「頭頂間溝(IPS)」という領域が活動を抑えながらも効率的に機能していました。
この領域は、文字と発音の対応付けという規則的な言語処理を行う際に重要な働きをしているとされます。

また、自閉症の人々は、単語の文字と発音の一致度が高いほど、「後方上側頭回(pSTG)」や「腹側後頭側頭皮質(OTC)」といった言語に関連する領域の活動が強くなりました。
これらの領域はとくに、言葉を音に変換するプロセスに関わっていることが知られています。

一方で、自閉症でない人々の脳では、単語の使用頻度や意味情報(イメージ性)に関連して、意味処理に関わる脳領域が活性化する傾向がありました。
つまり、自閉症でない人々は単語の「意味」に強く影響を受けて情報処理をしていましたが、自閉症の人々ではこのような傾向があまり見られず、意味情報の活用が比較的限定的でした。

研究チームは、この結果をもとに、自閉症の人々にとって効果的な言葉の学習方法についても新たな提案をしています。

一般的に、新しい単語を学ぶ際はその「意味」から入る方法が多いですが、自閉症の人にとっては、意味を理解するよりも前に、単語の文字と音の対応を中心に学ぶ方が効果的である可能性があります。

自閉症の人々が持つこのような規則性への感受性は、彼らが新しい単語を効率よく学習するための強みとして活用できると研究者らは考えています。
とくに初めて触れる言葉に対しては、文字の規則性や発音の規則性を強調し、そこから徐々に意味を結びつけていく方法が望ましいとしています。

この研究は、自閉症スペクトラムにおける言語習得や読解力の特性を理解するための重要な手がかりとなり、自閉症の人たちが抱える読み書きの困難を軽減し、教育や支援の質を高める可能性があります。
研究チームは、今回の知見を基に、今後の教育やサポート方法を改善できることを期待しています。

研究を率いたラトガース大学のコリー・マッケイブ博士は「自閉症の人がどのように言語を処理しているのかを理解することで、自閉症の人が直面する言語理解の困難さを軽減し、日常生活の質を向上させるための重要な一歩となるでしょう」と述べています。

(出典:Nature)(画像:たーとるうぃず)

こうして、違いについて理解が進み、より効果的な療育、教育につながっていくことを期待しています。

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(チャーリー)


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