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自閉症の感覚過敏、実は「アレキシサイミア」が原因。研究

time 2025/03/11

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症の感覚過敏、実は「アレキシサイミア」が原因。研究
  • 自閉症の感覚過敏はアレキシサイミアに由来するのか?
  • アレキシサイミアの特性を持つ人はどのように感覚過敏に対処すればよいのか?
  • 自閉症の診断や治療において、アレキシサイミアを考慮することがなぜ重要なのか?

イギリスの研究チームによる新たな研究で、「自閉症の人がよく持つ感覚過敏の原因は、『アレキシサイミア(感情をうまく感じたり表現したりできない状態)』という特性にある可能性がある」と発表されました。

これまでの研究によると、自閉症の人の45%から95%が、音、光、触覚などの刺激に対して極端に敏感(または鈍感)だと言われてきました。
たとえば、普通の人なら気にしないような音がとても気になったり、逆に強い刺激を感じにくかったりすることがあります。
この感覚の問題は、現在、自閉症の診断基準の一部として認識されており、多くの自閉症の人が日常生活で抱える大きな悩みのひとつになっています。

今回の研究では、これまで指摘されてきた「自閉症と感覚過敏は遺伝的に関連している」という説に新たな視点を加えました。

それが、「アレキシサイミア」という特徴です。
アレキシサイミアとは、ギリシャ語で「感情を言葉で表せない」という意味で、自分の感情をうまく感じとったり、他人に伝えたりすることが難しい状態を指します。
この特性は一般の人ではめずらしいのですが、自閉症の人の約半数がこれを持つと言われています。

今回の研究では、このアレキシサイミアが自閉症と感覚過敏の両方に関わっているかどうかを調べました。
イギリスのロンドン大学キングスカレッジなどの研究グループは、イギリスとウェールズで生まれた双子の子どもたちを対象に調査を実施しました。
双子の研究を行うことで、遺伝と環境のどちらが特定の特徴にどれくらい影響するかを調べることができます。
一卵性双生児(遺伝的に100%同じ)と二卵性双子(遺伝的には50%程度共有している)の比較を行うことで、特定の特徴がどの程度遺伝子によって影響されているのかが分かります。

この研究では、自閉症と診断されている子どもと、そうでない子どもを含め、13歳前後の双子たち、計207組を対象に調査が行われました。
保護者には、自分の子どもがどれほど感情を理解したり表現したりするのが苦手か、そしてどのくらい感覚が敏感なのかを質問紙を使って回答してもらいました。

研究結果によると、自閉症とアレキシサイミアの両方は非常に強く遺伝的影響を受けていました。
また、自閉症と感覚過敏も遺伝的に関連していることが示されました。
ここまでは従来の研究でも指摘されてきた内容と一致しています。

しかし、注目すべきことに、アレキシサイミアを考慮すると、自閉症と感覚過敏の遺伝的な関係はほぼ消えてしまいました。
つまり、自閉症そのものよりも、むしろアレキシサイミアの特性が感覚過敏と強い関係を持っていることがわかったのです。

これはどういうことかと言うと、「自閉症だから感覚が敏感」という考え方より、「アレキシサイミアの傾向があるから感覚に敏感になる」という説明のほうが正しい可能性を示しています。

アレキシサイミアが感覚過敏に関係する理由として、自分の感情や身体の内側からの信号(たとえば空腹感や緊張など)に意識が向きにくい分、外からの刺激に敏感になってしまったり、逆に鈍感になったりする可能性が挙げられています。
自分の感情を感じとりにくい人ほど、外の刺激に対して敏感になることでバランスをとろうとしているのかもしれません。
あるいは、自分の内面的な状態をうまく把握できないため、外からの刺激を誤解してしまうことがあるのかもしれません。

今回の研究結果は、自閉症の人が必ずしも感覚過敏になるわけではないことや、感覚過敏が自閉症だけの特徴ではなく、ADHDや統合失調症、さらにはうつ病など、他のさまざまな精神的な問題にも見られることをうまく説明しています。

実際、アレキシサイミアは、自閉症以外にも、ADHD(注意欠如・多動症)、統合失調症、摂食障害、不安症、うつ病など、多くの精神疾患においてもよく見られる特性です。
これらの病気に共通して見られる感覚過敏という症状も、実はアレキシサイミアによって説明できる可能性があります。

つまり、感覚過敏という症状は「自閉症だから起きる」というよりも、「アレキシサイミアがあるために起こる」と考えた方が正確かもしれないのです。

この研究は、精神疾患における感覚過敏を理解する上で新しい視点を提供しています。
自閉症だけではなく、さまざまな精神的な問題を抱える人において、アレキシサイミアという特性が感覚過敏を引き起こしている可能性が高いことを示しています。

今回の結果はまた、自閉症の診断や治療においても重要な意味を持ちます。
現在の診断基準では、自閉症の人の感覚過敏は自閉症特有の特徴として位置づけられていますが、実際にはアレキシサイミアが関係していることが多いため、この点を考慮した治療やサポートが必要になるかもしれません。
アレキシサイミアの特性が強い自閉症の人の場合、感覚の問題に対する特別な支援が必要になる可能性があります。

ただし、今回の研究にはいくつかの限界もあります。
たとえば、研究に参加した人数が比較的少なかったため、小さな影響を正確に捉えるのが難しかった可能性があります。
また、親の報告に基づいて行われた調査のため、親が感じた印象に偏りがある可能性があります。
今後の研究では、本人自身の感じ方や専門家による評価など、さまざまな視点からの情報を統合して分析することが重要になるでしょう。

それでも、この研究は、自閉症の人々が直面する感覚の問題の原因を理解し、より良いサポート方法を考える上で、大きなヒントを提供しています。
とくにアレキシサイミアという特徴が感覚の敏感さに強く関係していることが分かったことで、感覚過敏を抱える人への対応をより具体的に考える道筋が見えてきました。
自閉症を持つ人やその家族にとって、より生きやすくなるための重要な手がかりになるでしょう。
また、感覚過敏を持つ自閉症以外の精神疾患についても、同様の視点で研究を進めることで、より多くの人の生活の質を改善する可能性があるのです。

(出典:Nature)(画像:たーとるうぃず)

・感覚に関わる問題は、自閉症によるものではない。

・自閉症の人に多い、アレキシサイミアのため。

という研究結果です。

かかえる困難の原因を正しく把握し、効果的に軽減する方法につながることを期待しています。

自閉症の私が抱えるアレキシサイミア(失感情症)について

(チャーリー)


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