- 自閉症特性がある人はなぜ孤独感を強く感じやすいのか？
- 孤独感が精神病的体験にどのように影響するのか？
- 社会的スキルの向上がどのように精神的健康を改善するのか？
自閉症特性のある人ほど「孤独感」や「社会的痛み」を感じやすく、それが幻覚や妄想といった精神病的な体験につながる可能性があることが、最新の研究で明らかになりました。
この研究は、チュニジアのチュニス・エル・マナール大学医学部のフェテン・フェキフ＝ロムダーヌ博士らが主導し、アルジェリア、バーレーン、エジプト、イラク、ヨルダン、サウジアラビア、クウェート、レバノン、モロッコ、オマーン、パレスチナ、チュニジアのアラブ12か国の若年成人を対象に実施されたものです。
今回の調査では、18歳から35歳までの合計7,646人の若年成人（女性が約75％）に対し、インターネットを通じて匿名のアンケートを実施しました。
このアンケートには、自閉症特性を測定する「自閉症スペクトラム指標AQ-28」、精神病的な体験を測定するための「Prodromal Questionnaire-Brief（PQ-B）」、孤独感を評価する「ジョング＝ギアベルド孤独感尺度」、社会的痛みへの敏感さを測る「社会的痛み質問票（SPQ）」の4種類の自己評価式質問紙が用いられました。
「自閉症特性」とは、コミュニケーションが苦手、変化への適応が難しいなど、自閉症に関連した特徴のことを指します。
「精神病的体験」は、幻覚や妄想などの体験を指しますが、これらは一般的な精神病よりも軽度であり、日常生活に支障をきたさない範囲で現れることがあります。
研究チームは、参加者の回答を分析し、自閉症特性が強い人ほど孤独感や社会的拒絶を感じる際の心理的苦痛が大きく、さらにそれらの感情が強い人ほど、幻覚や妄想などの精神病的体験を報告する傾向があることを発見しました。
研究の主な分析手法としては、統計ソフトウェアを用いて「媒介分析」という手法を行いました。これは、自閉症特性が精神病的体験に直接影響を与えるかだけでなく、孤独感や社会的痛みという感情を通じて間接的に影響を与えるかを統計的に検証するものです。
その結果、自閉症特性は精神病的体験に直接的な影響を及ぼすと同時に、孤独感や社会的痛みを介して間接的にも影響を与えることが明らかとなりました。
さらに、この結果は参加者の性別、結婚歴、教育水準、喫煙習慣、経済状況、居住環境などの要因を調整した上でのものです。
このように、多くの要因を統計的に考慮することで、より正確に自閉症特性と精神病的体験の関連を明らかにしています。
研究を主導したフェキフ＝ロムダーヌ博士らは、「今回の結果は、社会的なつながりがいかに私たちの精神的健康にとって重要であるかを示しています。
とくに自閉症特性がある人々は、社会的スキルを身につけたり、孤独感を軽減するような支援を受けることで、精神的な健康問題のリスクを減らせる可能性があります」と述べています。
研究チームは今後、今回得られたデータを基に、他の地域や文化圏でも調査を進め、自閉症特性と精神病的体験の関係をさらに深く解明する予定です。
現代社会で増加している孤独感や社会的痛みによる精神的な影響を軽減するためにも、引き続き研究が求められています。
（出典：Nature）（画像：たーとるうぃず）
「とくに自閉症特性がある人々は、社会的スキルを身につけたり、孤独感を軽減するような支援を受けることで、精神的な健康問題のリスクを減らせる可能性があります」
多くの人が予想するだろうことが示されたというところでしょう。
守るために、理解するだけでなく、行動につなげるための研究です。
（チャーリー）
