
- 自閉症の子供は、痛みをどのように感じているのか、理解する方法はありますか?
- どのようにして、痛みの知覚と耐性の違いを説明すればよいでしょうか?
- 家族が子供の痛みのサインに気づくためには、どんな具体的な観察が必要ですか?
私の息子は、自分の頭をぶつける行動を繰り返します。
これは幼児のころから見られる自己刺激・スティミングの一種です。
私たちは、息子が硬い面に頭を強く打たないように、クッションや枕を使って保護するよう努めていますが、どうしても手が及ばず、ときには頭に打撲ができてしまうこともあります。
にもかかわらず、息子は打撲を負っても「何もなかったかのように」振る舞うため、これをきっかけに自閉症と痛みに対する耐性について疑問を抱くようになりました。
多くの人々は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供は、神経学的に通常の子供よりも痛みに耐えられる、つまり痛み耐性が高いと考えています。
しかし、実際には「痛み耐性」ではなく「痛みの知覚」の違いが関与している可能性があるのです。
介護者や親が、痛みの知覚と耐性の違いを正しく理解することは、大切な人が思わぬ形で自分自身を傷つけないようにするために重要です。
簡単に言えば、痛み耐性とは、人が痛みを和らげるための行動を起こす前に耐えられる痛みの「限界」のことです。
たとえば、私が子供のころ、友達と鉄棒に手を掛けてぶら下がり、腕の痛みにどれだけ耐えられるかを競っていました。
ある一定の時間が経つと、自然とバーを放して落下するという遊びです。
一方、痛みの知覚とは、痛みがもたらす不快な感覚や体験そのものを指します。
これは単純なものではなく、生物学的な要因だけでなく、心理的、さらには社会的な要因も複雑に絡み合ったプロセスです。
どちらの概念も、基本的には本人の自己申告によって評価されます。
病院では、痛みの強さを示すチャートを見せられ、「あなたの痛みはどの程度ですか?」と尋ねられることもあるでしょう。
あるいは、ご自身の子供に「1から10で、痛みはどれくらい?」と聞いた経験があるかもしれません。こうした自己申告のスケールは、症状の重さや適切な治療法を判断するために、医療従事者や介護者が利用しています。
長い間、自閉症スペクトラム障害を持つ子供は、通常の子供よりも痛みに耐えられる、つまり高い痛み耐性を持つと信じられてきました。
これは、彼らが痛みに対して低い感受性を示すと考えられていたためです。
しかし、近年の研究では、必ずしもそうではないことが明らかになりつつあります。
最新の研究によると、自閉症の人々は、刺激の種類によっては痛み耐性が低く、通常の人よりも激しい痛みを感じやすい場合があることが分かっています。
たとえば、感覚刺激や熱による初期の痛みは、ASDの人と神経学的に通常の人でほぼ同じレベルで感じられることが多いのですが、一旦痛みが始まると、自閉症の人はより強く痛みを感じ、慢性的な痛みを発症しやすい傾向にあるのです。
また、一部の自閉症の子供は、感覚処理の問題から逆に痛みを感じにくく、より強い刺激がなければ痛みを認識しない場合もあります。
このような場合、反応が遅れるため、結果的に高い痛み耐性を持っているように見えてしまうこともあるのです。
さらに、一部の自閉症の人は、他人の痛みに対する共感が低いこともあり、これが高い耐性のように見える一因となっている可能性もあります。
ただし、すべての自閉症の人が高い耐性を持つわけではありません。
多くの場合、彼らは痛み刺激に対して敏感で、些細な不快感でも激しい痛み反応を示すことがあります。
また、脳の痛みネットワークが通常とは異なる反応を示すため、自分がどれほど痛みを感じているのかをうまく伝えられないことも少なくありません。
自閉症の子供は、痛みを感じてもその表現が難しい場合が多いです。
親や介護者は、以下のような行動面および生理的なサインに注意深く目を向ける必要があります。
【行動面の痛みのサイン】
– 自己刺激行動(stimming)の増加
痛みを感じると、手を振る、体を揺らす、頭をぶつけるなど、普段よりも多くの自己刺激行動が見られることがあります。
実際、私の下の息子は、痛みを感じるととくに頭を打つ行動や攻撃的な行動が増えます。
– 攻撃性の増加、不安、引きこもり
上の息子の場合、痛みが原因で攻撃性が高まったり、引きこもりがちになったり、不安な様子が見られました。
– 睡眠パターンの変化
痛みを感じていると、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下することも多いです。
【生理的な痛みのサイン】
– 呼吸数の増加や心拍数の上昇
痛みを感じると、呼吸が早くなったり、心拍数が上がる場合があります。
– 消化器系の障害
腹痛や胃の不調など、消化器系に関連する症状が現れることもあります。
もし自閉症の子供が痛みを感じている兆候が見られた場合は、適切な痛み管理の支援を行い、必要に応じて医療専門家と相談することが大切です。
自閉症の人がどのように痛みを感じ、伝えようとしているかを理解するためには、以下の点に留意すると良いでしょう。
【オープンなコミュニケーションを優先する】
– シンプルな言葉と視覚的補助具の活用
専門用語を避け、簡単な表現やイラスト、写真などを使って、本人が痛みの程度を伝えやすい環境を作ります。
– 忍耐強く聞く
すぐに答えが返ってこなくても、本人が自分の痛みの閾値を表現できるよう、ゆっくりと時間をかけることが重要です。
【感覚面の配慮】
– 感覚過敏への対応
自閉症の人は、通常よりも感覚が鋭敏な場合があります。
深圧療法や加重ブランケットなど、落ち着きを与えるツールを取り入れると良いでしょう。
– 医療処置時の環境調整
痛みを伴う医療処置が必要な場合は、医療スタッフと協力して、感覚に優しい環境での対応を検討します。
【注意転換のテクニック】
– 好きな活動や感覚アイテムの活用
痛みが原因で不快な状態になっているときは、本人が興味を持つ活動や安心できるアイテムを使って、注意を他に向ける方法があります。
– リラックス法の導入
深呼吸や音楽鑑賞など、リラックスできる方法で気持ちを落ち着け、痛みの感覚を和らげる工夫も有効です。
痛みの閾値や感受性は、ASDの人でも通常の人でも個々に異なります。
しかし、自閉症の人々は痛みの処理が独自であるため、ときには高い耐性を持つように見えたり、逆に敏感すぎるように感じられたりすることがあります。
とくに、痛みを感じながらもその程度を伝えるのが難しい場合、親や介護者、医療専門家が協力し、痛みの原因やその対処法をしっかりと見極めることが求められます。
大切な人たちを安全に守るためには、地域や周囲の支援が不可欠です。
私たちは、互いに協力し合いながら、痛みを感じたときの適切な対処法を見つけ、安心できる環境を整えていく必要があります。
(出典:米Autism Parenting Magazine)(画像:たーとるうぃず)
うちの子は、痛みへの反応は鈍いように思います。
ちょっと、体を掻き出すと出血しても、平気でずっと掻き続けてしまいます。
なので、いったんそうなると、なかなか傷が治りません。
かさぶた → かゆい → 掻く → 出血 → かさぶた とずっとループ
一方で、予防注射などはまったく痛がらないので、私より得意です。
(チャーリー)