- 身体や知的障害を持つ人たちが、どのように仲間として支え合うことができるのか?
- 障害を持つ人々がスポーツを通じてどのように自信を持てるようになるのか?
- インクルーシブな環境が、障害者と健常者の相互理解にどのように寄与するのか?
シンガポール・スポーツハブのウォータースポーツセンター近く。
汗をにじませ、眉をひそめながら行ったり来たりする彼らは、10秒おきにスマートフォンを確認していました。
その緊張と興奮が入り混じる空気の中、突然の声が響きます。「1分1秒……2位だ!」
鮮やかなターコイズブルーのTシャツに「Different Dragons」と書かれたチームメンバーたちは、歓声を上げ、抱き合って銀メダルの喜びを分かち合いました。
この場所は11月に開催された「シンガポール・レガッタ・ウォーターフェスト」、200メートルのドラゴンボートレースで競い合う一大イベントです。
教育機関や企業、さまざまな団体が参加するこの大会で、「Different Dragons」の部門2位という結果は特に喜ばしいものでした。
それは、チームメンバーのうち9人が身体や知的障害を持ちながらも努力を重ねた結果だったからです。
「背中の問題で漕ぐのが難しいし、みんなと同じスピードで漕ぐのも大変です」
そう話すのは、ウィリアムズ症候群を持つジャラン・ン。
この遺伝疾患は身体的特徴や認知発達、心臓など体のさまざまな部分に影響を及ぼします。
「でも、チームは一度も『無理だ』なんて思わせませんでした。
自分がこの場所にいていいんだと思えたんです」と笑顔で語りました。
2019年に設立された「Different Dragons」は、ただ勝利を目指すだけのチームではありません。
「私たちはとてもリラックスしたチームです。楽しむことが一番大事なんです」
そう語るのは、設立当初からボランティアコーチを務めるレイソン・ウン。
とはいえ、その裏には強い意志があります。
チームは1年間を通して練習を重ね、障害ではなく能力を見てもらうことを目指してきました。
そしてその努力が実を結びました。
もちろん、簡単な道のりではありませんでした。
基礎であるパドルの持ち方から指導方法を模索する日々は、試行錯誤と忍耐の連続でした。
たとえば、自閉症の兄弟とともにチームに加わったボランティアのタン・チェル・フイは、最初は兄を支えるのに苦労しました。
雨で練習スケジュールが変わると、兄がパニックに陥ることも。
「兄にとって、ドラゴンボートは『毎週日曜日にあるもの』なんです」
そう、タンは語ります。
とくにコロナ禍で活動が止まったときは、兄にとって大きな負担となり、続ける意味があるのか悩んだといいます。
それでも他のボランティアの励ましが彼女を支え、兄弟で努力を続けることができました。
「さまざまな障害を持つ人たちと関わる方法を学び、手話まで覚えました。
兄を温かく迎え入れてくれたチームには本当に感謝しています」
メンバー同士が共感し合えるチームは、彼らにとって特別な存在です。
聴覚障害を持つジミー・チャンは、職場で孤立感を抱えることが多かったと語ります。
「偏見の目で見られたり、違うと感じさせられる場所ではなく、自分が受け入れられる場所を探していました」
彼はドラゴンボートの太鼓の振動や、前列の漕ぎ手の動きに合わせてチームと息を合わせます。
「私たちはお互いを支え合い、困難に挑むチームです。どんな挑戦も、仲間となら価値のあるものになります」
練習以外でも、食事やハイキング、クリスマスパーティーなどチームでの活動を大切にしています。
「体調が悪い日もあるけれど、みんなと会えるのを楽しみにして練習に来るんです」
そう、ボランティアコーチのハムザ・ルーは話します。
また、知的障害を持つテン・ダー・シュインは毎週土曜日、母親に「明日はドラゴンボートの服を着なきゃね」と確認するほどこの活動を楽しんでいます。
「家ではあまり活発ではなかった息子が、こんなに熱心になれる活動が見つかって本当に嬉しいです」
そう、母親のテオは笑顔を見せました。
こうした活動が可能になるのは、シンガポールの「レガッタ・ウォーターフェスト」のような大会が適応部門を設け、障害を持つ人々にも適切なリソースを提供しているからです。
シンガポール障害者スポーツ評議会のケリー・ファンは、インクルーシブスポーツの重要性を強調します。
「障害のある人とない人が一緒にスポーツをすることで、障害を持つ人々の努力を直接理解し、社会的な交流を深めることができます」
シンガポール政府も支援を強化しており、2024年には「エネーブリングスポーツ基金」が開始される予定です。
この基金はコミュニティ主体の障害者スポーツを支援し、2030年までに1,000万シンガポールドル(約10億円)の資金調達を目指しています。
「Different Dragons」のメンバーは、障害者ができないと思われがちなことにも挑戦できるというメッセージを発信し続けています。
「障害者は健常者ほど漕げないと思われがちですが、それは誤解です」
そう、ウンコーチは言います。
知的障害を持つリー・ウェイ・キオンは、チームが自分を奮い立たせてくれる存在だと話します。
「若いころは知能指数が低いと言われ、何もできないと思われていました。
でも、他の人ができることは自分にもできるんだと学びました。
普通の人がドラゴンボートをするなら、僕にだってできるんです」
(出典・画像:シンガポールcna)
一緒にする。
お互いに理解できる一番の方法ですね。
(チャーリー)