- 幼児期のスクリーンタイムは子どもの発達にどのような影響を与えるのか?
- ASDの診断に関連する要因にはどのようなものがあるのか?
- スクリーンタイムを管理するために家庭でできる具体的な対策は何か?
幼児期のスクリーンタイムが子どもの発達に与える影響について、興味深い研究が発表されました。
今回の研究は、オーストラリアの長期子ども研究(Longitudinal Study of Australian Children)のデータを活用し、幼少期のスクリーンタイムが12歳時点での自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断にどのような関連があるかを調査しました。
スクリーンタイムとは、子どもがテレビ、ビデオ、インターネットなどのデジタル機器を使用している時間のことを指します。
近年、幼い子どものスクリーンタイムが増加しており、その影響が社会的にも注目されています。
この研究では、特に2歳までのスクリーンタイムに焦点を当て、その長さがASDと診断される可能性にどう影響するかを分析しました。
この研究を行ったのは、セントルイス大学医学部のダニエル・リン博士と、ニューサウスウェールズ大学のウェン・トン・ウー、さらに台湾国立大学のユエ・リャン・レオン・グオ博士です。
彼らの研究チームは、子どもたちが2歳時点で週にどれくらいテレビやビデオ、インターネットを見ていたかを記録し、そのデータを元に12歳でのASD診断の可能性を評価しました。
調査対象はオーストラリアの5107人の子どもたちで、このうち145人が12歳時点でASDと診断されていました。
この研究では、スクリーンタイムが週14時間以上の子どもたちが、14時間未満の子どもたちに比べて1.79倍高いASDと診断される可能性を持つことが確認されました。
また、男児であること、母親の教育年数が少ないこと、家計収入が低いこともASDと診断される可能性と関連がある要因として挙げられました。
さらに、スクリーンタイムがASDと診断される可能性に影響を与える理由について詳しく調査した結果、直接的な因果関係は示されませんでした。
研究チームは、スクリーンタイムが多い家庭では他の社会経済的要因や環境要因が影響している可能性があるとしています。
たとえば、家計収入が低い家庭では教育リソースが限られる場合があり、スクリーンが子どもの注意を引きつける役割を果たしている可能性があります。
また、母親の教育年数が少ない場合、子どもの発達をサポートする情報や方法へのアクセスが制限されている可能性も指摘されています。
この研究の重要な点は、スクリーンタイム自体を必ずしも「悪」とみなすのではなく、家庭環境や支援ニーズを見極める手がかりとして利用できることです。
研究チームは、スクリーンタイムの長さを医療機関での子どもの発達評価の一環として取り入れることを提案しています。
これにより、支援が必要な家庭を早期に特定し、適切なサポートを提供することで、子どもの健全な発達を促すことが期待されます。
また、この研究では、2歳時点でのスクリーンタイムが将来のASDと診断される要因としてどのように機能するかに焦点を当てています。
たとえば、週14時間以上のスクリーンタイムは1日あたり平均2時間を超えるものであり、これが子どもの社会的相互作用や運動機会を減少させる可能性があると考えられます。
このような減少が、結果的にASDと診断される可能性を高める要因として働く可能性もあると示唆されています。
さらに、研究は統計モデルを用いて、社会経済的要因がどの程度スクリーンタイムやASDと診断される可能性に影響を与えているかを検討しました。
その結果、家計収入や母親の教育年数はスクリーンタイムの長さに影響を与えるものの、それ自体が直接ASDと診断される可能性を高めるわけではないことが示されました。
これにより、スクリーンタイムとASDと診断される可能性の関連は複雑な背景要因によるものと解釈されています。
研究チームは、これらの結果を踏まえ、スクリーンタイムの削減を目指すだけでなく、家庭全体の生活環境を改善するための包括的な支援が必要であると強調しています。
たとえば、教育プログラムや地域社会でのサポートを通じて、家庭にリソースや知識を提供することが、子どもの発達を促進するうえで重要です。
今回の研究は、幼児期の生活習慣が子どもの長期的な発達にどのような影響を与えるかを考える重要な一歩となりました。
親や保護者にとっては、スクリーンタイムの適切な管理だけでなく、子どもが健やかに成長できる環境作りを見直す良いきっかけとなるでしょう。
(出典:JAMA Pediatrics)(画像:たーとるうぃず)
スクリーンタイムがASDを「引き起こす」わけではなく、スクリーンタイムの多さが他の社会経済的要因や発達支援の不足と結びついて、ASDと診断される可能性に影響を与えているのではないかと考えられるということです。
とはいえ、幼い頃であればなおさら、スクリーンではなくお互いの顔、たくさんの笑顔が見えるように過ごすことが親子にとって一番だと思います。
(チャーリー)