- 自閉スペクトラム症(ASD)の影響を受けている人々に、どのようなサポートが有効ですか?
- ASDの特性を持つ子どもたちに対する早期診断は、どれほど重要ですか?
- 地域ごとのASDの割合の違いは、どのように理解されるべきですか?
自閉スペクトラム症(ASD)に関する新たな研究が発表され、2021年時点で世界中で推定6180万人がASDの特性を持っているという結果が明らかになりました。
これは、世界の127人に1人がこの特性を有している計算になります。
この研究は、オーストラリアのクイーンズランド大学に所属するダミアン・サントマウロ博士が率いる国際的な研究チームによって実施され、疾病・傷害・危険因子に関するグローバル負担研究(GBD)の一環として発表されました。
研究では、ASDの特性の割合だけでなく、それが健康や生活に及ぼす影響についても包括的に調査されています。
この研究の最大の意義は、ASDに関する最新で詳細なデータをもとに、世界的な健康負担を数値化した点にあります。
その中心となる指標として使われたのが「障害調整生命年(DALY)」という概念です。
DALYは、病気や障害が人々の健康にどれだけ影響を与えるかを数値で表したものです。
具体的には、健康で暮らせる年数が失われる状況を示します。
たとえば、ある人がある疾患のために1年間苦しむ場合、その1年は「健康で完全な生活が送れなかった年」としてDALYに換算されます。
また、疾患が原因で早期に亡くなった場合、その亡くなった年数も含めて計算されます。
この指標は、世界中の人々が直面する健康課題を比較するために非常に重要です。
たとえば、病気や障害が人々の生活に与える影響を、死亡率だけでなく、生活の質の低下も含めて評価できるため、政策立案や医療リソースの配分に役立ちます。
この研究では、2021年時点でASDが世界全体で約1150万DALYを占めると推定されました。
これは、ASDを持つ人々が世界的にどれほど広範な影響を受けているかを示すデータとなっています。
ASDは発達特性の一種であり、主に社会的なコミュニケーションの困難さ、反復的な行動や興味、感覚の過敏さなどを特徴とします。
この特性は、程度の差はあるものの、人生全般にわたって人々の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
研究によれば、ASDの影響はとくに若い世代で顕著であり、20歳未満の若年層では、ASDが健康への非致死的負担のトップ10の原因のひとつとして挙げられています。
研究はまた、ASDの割合が地域ごとに異なることも明らかにしました。
調査によれば、ASDの割合は高所得地域でとくに高い傾向があり、たとえば日本では10万人あたり約1587人がASDの特性を持つと推定されました。
これは世界でも有数の高い値です。
一方で、南アジアや東南アジアの一部地域では割合が比較的低い数値となっており、この違いは診断基準の相違や医療アクセスの格差によるものと考えられています。
研究チームは、ASDを持つ人々に対する早期診断と支援の必要性を強調しています。
幼少期に適切な療育を行うことで、ASDの特性を持つ子どもたちがより良い生活を送れる可能性が高まることが示されています。
親や教育者、医療従事者が連携し、早期診断と支援を提供することが重要です。
これには、社会的なコミュニケーション能力を向上させるプログラムや、家庭での理解を深めるための教育が含まれます。
さらに、ASDの特性を持つ成人に対しても、生活技能や雇用支援を提供するプログラムが求められています。
研究は、ASDの理解を深めるためには、さらなるデータの収集と研究が必要であるとしています。
とくに、地域ごとの正確な割合を把握するためには、多くの国での診断調査が必要です。
また、ASDの特性を持つ人々の健康負担をさらに詳細に評価し、その人々に適した支援体制を構築するための努力が求められています。
ダミアン・サントマウロ博士のチームは、この研究が政策立案者や医療機関にとって重要な指針となることを期待しています。
ASDの特性を持つ人々がより良い生活を送れる社会を目指し、全ての関係者が協力して取り組むことが求められます。
この研究結果は、ASDの特性を持つ人々とその家族に対する理解と支援を促進し、より包括的な社会の実現に貢献するものです。
(出典:THE LANCET)(画像:たーとるうぃず)
支援が必要な方には適切な支援が行われること、世界のどこでもそうなることを心から願います。
(チャーリー)