- 自身の障害と向き合いながら、愛するものを見つけることは可能か?
- 音楽が心の癒しになる理由は何か?
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ウォルター・シルヴァンが7歳のとき、母のミシェルは息子の声を初めて聞きました。
それは悲しくもあり、奇跡のような瞬間でもありました。
2017年11月16日、ウォルターは自宅を抜け出し、道に迷って道路へ出てしまいました。
彼はSUVにはねられ、地面に倒れ込みました。
その時、目の前には走ってくる母・ミシェルの姿がありました。ウォルターは手を伸ばし、一言こう言ったのです――「ママ」と。
「信じられませんでした」
そう、ミシェルは小さなリビングで語ります。
感情がこもった声には、いまだ驚きがにじんでいました。
「ずっと、息子の言葉を聞ける日を待っていたんです。
そして、私を見た彼が最初に言った言葉がそれだったんです」
現在15歳のウォルターは、その事故の後遺症を抱えています。
ミシェルは優しく彼の脚を持ち上げ、事故で粉砕骨折した右太もものこぶを見せました。
脚をまっすぐ伸ばすことが難しく、今もリハビリを続けています。
さらに、2歳で自閉症と診断されたウォルターは、日々さまざまな困難に向き合っています。
しかし、そんなウォルターにとって心を落ち着かせてくれる特別なものがあります。
それは音楽、とくにピアノです。
ミシェルは、このクリスマスにウォルターにキーボードを贈りたいと願っています。
それは、彼が大好きな音楽を心ゆくまで楽しめる手段であり、彼のための最高の贈り物だと信じているのです。
「話せなかった頃から、彼はいつも指をトントンと動かしていました」
ミシェルは自分の指で食卓を軽く叩きながら話します。
「おそらく振動や音が好きなんでしょう。それが彼を落ち着かせるんです」
自宅に本物のピアノがないため、ウォルターは母のスマホのピアノアプリで音楽を楽しんでいます。
ウォルターが通うマイアミ・セントラル高校でも、先生たちは彼の音楽への愛を大切にしています。
バンドルームの隅にあるピアノの前に座ると、ウォルターの顔は生き生きと輝きます。
「音楽は彼の違う一面を引き出してくれるんです」
そう、ァビオラ・デレルム先生は言います。
「ピアノを弾いている時の彼は、より集中し、活発で、表情も豊かです。
まるで音楽が彼の中の何かを解き放つかのようです」
ウォルターに好きな音楽のジャンルを尋ねると、一言「ジャズ」と答えました。
ジャズへの愛は確かなものです。
「ゆっくりした音楽、とくにジャズが一番落ち着くようです」
ミシェルにとって、ウォルターとの日々は困難と希望の連続でした。
事故の後、彼女は40日間病院に付き添い、椅子で寝泊まりし、ほとんど病室を離れなかったそうです。
「ストレスで髪が抜けて、体重も増えてしまいました。
寝ることも食べることもまともにできなくて」
医療費は10万ドル(約1,500万円)を超えました。
それでも、彼女の決意は揺らぎませんでした。
「キーボードがあれば、息子は心から喜べることができる。息子にはそれが必要なんです。」
ウォルターの先生たちも、キーボードが彼のさらなる可能性を開いてくれると信じています。
「もしかしたら、彼は音楽の天才になるかもしれません。
それは時間が教えてくれるでしょう」
今の目標は、ウォルターに自分を表現し、心を落ち着けるための手段を与えることです。
「彼は社交的に大きく成長しました。音楽がその助けになっているんです」
ミシェルは最後に静かにこう語りました。
「息子には、自分が大好きなもの、自分だけのものを持ってほしいんです。」
このクリスマス、ミシェルの願いは、リビングでキーボードの鍵盤に触れた瞬間に、ウォルターの顔が喜びに輝くこと。
それはただ音楽を奏でること以上に、心の癒しと未来への希望を意味しているのです。
(出典・画像:米Miami Herald)
「自分が大好きなもの、自分にしかないものを持って欲しい」
その気持ちよくわかります。
そうなるように応援しつづけましょう。
(チャーリー)