- 親の年齢が子どもの自閉症リスクにどのように影響するのか？
- 高年齢の親の子どもに自閉症が多い理由は何か？
- 早期診断や介入が自閉症の子どもにどのように役立つのか？
親の年齢が子どもの自閉症スペクトラム障害（ASD）のリスクに影響する可能性があることが、イランのケルマン医科大学に所属するタニア・デーシュらの研究で明らかになりました。
この研究は、過去30年以上にわたる41件の観察研究を分析し、親の年齢が子どもの自閉症リスクにどのように関連しているかを調査したものです。
これまでの研究では結果が一貫せず、親の年齢がどのようにリスクに影響するかについて明確な結論が得られていませんでした。
今回の研究は、こうした矛盾を解決するために行われました。
研究チームは、世界中のデータベース（PubMed、EMBASE、Web of Scienceなど）を活用して、1990年から2023年までに発表された関連文献を収集。
その中から、質の高い41件の観察研究を分析対象に選びました。
これらの研究はすべて、自閉症の診断にDSM（精神疾患の診断と統計マニュアル）やICD（国際疾病分類）といった国際的基準を使用しており、信頼性が高いと評価されました。
さらに、各研究の質を「ニューカッスル・オタワ・スケール」という基準で評価し、厳選されたデータを統一的に比較するためのメタ分析を実施しました。
今回の研究では、親の年齢を「20歳以下の若い親」「20〜34歳の中年層」「35歳以上の高年齢の親」に分類し、それぞれの年齢層が子どもの自閉症リスクにどう影響するかを調べました。
その結果、特に35歳以上の親の場合、子どもの自閉症リスクが有意に高くなることが明らかになりました。
母親が35歳以上の場合、子どものリスクは1.47倍、父親が35歳以上の場合は1.51倍に上昇しました。
この傾向は、地域や研究のデザイン、診断基準が異なる研究においても一貫して確認されています。
一方、20歳以下の若い親については、自閉症リスクとの明確な関連は見られませんでした。
若い親ではリスクが「ほぼ変わらない」か、「やや低い」とする結果が多く、リスク増加の証拠は確認されませんでした。
地域別に分析した結果、アジアでは高年齢の親によるリスクの増加が特に顕著である一方、ヨーロッパや北米ではその傾向が比較的緩やかでした。
また、診断基準の違いによる結果の差はほとんどなく、親の高年齢が自閉症リスクを高めるという結果は一貫して確認されています。
研究チームはまた、親の高年齢が子どもの自閉症リスクを高めるメカニズムについても考察しています。
現時点では具体的な原因は解明されていませんが、次のような可能性が考えられています。
まず、精子や卵子の老化に伴う遺伝的な変異が増えることで、子どもの発達に影響を与える可能性が指摘されています。
また、母親の年齢が高い場合、妊娠中の合併症リスクが増加することや、社会的・環境的要因が発達に影響する可能性もあります。
今回の研究は、現代社会で増加している高齢出産を考えるうえで、重要な示唆を与えるものです。
高年齢の親のリスクを理解することで、家族計画や医療現場でのリスク管理が改善される可能性があります。
また、自閉症の早期診断や介入が子どもの発達支援において重要であることも改めて示されています。
早期診断を行うことで、適切な療育や教育プログラムを提供し、子どもの生活の質を大きく向上させることが可能です。
研究チームは、「今回の研究結果が、家族や医療従事者にとって重要な参考資料となり、より良い社会支援や家族計画の改善につながることを期待しています」と述べています。
（出典：BMC Psychology）（画像：たーとるうぃず）
よく耳にすることですが、それを示す研究結果です。
７９歳で子をもつデ・ニーロ。男性の高齢と子どもの自閉症の関係
（チャーリー）
