- なぜ神経発達症の人々は摂食障害に悩むことが多いのでしょうか?
- 神経発達症の特性に配慮した治療法はどのように設計されるべきでしょうか?
- 摂食障害の治療において、感覚の違いをどう活かすことができるのでしょうか?
オーストラリアでは、摂食障害に悩む人の中で神経発達症(ニューロダイバージェント)の人々が多く、その割合は約3分の1に上ると言われています。
これらの人々は、感覚の捉え方や食習慣の違いから特有の課題に直面しています。
このような背景から、研究者たちは個々の特性を考慮した治療方法の重要性を提唱しています。
神経発達症(ニューロダイバージェンス)は、認知機能が「一般的」とされる基準から異なる状態を指します。
以下のような状態が含まれます。
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 注意欠如・多動症(ADHD)
- ディスレクシア(読字障害)
- トゥレット症候群
かつては神経発達症を直線的な「スペクトラム」として捉えられることが多かったですが、現在では個々人がさまざまな側面でユニークな特性を持つことが理解されています。
たとえば、感覚処理、運動能力、実行機能(記憶や柔軟な思考、抑制力)などの違いです。
摂食障害は、体重や食べ物に関する考えや感情、行動が大きく乱れる深刻な精神的健康問題です。
オーストラリアでは、110万人以上が摂食障害に苦しんでおり、特に神経発達症の人々がこの問題に影響を受けやすいことがわかっています。
たとえば、自閉スペクトラム症の人の22.9%が摂食障害を持つとされており、一般的な人口の2%と比較して非常に高い割合です。
また、ADHDの人々は摂食障害を診断される可能性が約4倍高いという研究結果もあります。
なぜ神経発達症の人々は摂食障害になりやすいのか?
明確な原因はまだ特定されていませんが、以下の特徴が関係していると考えられています。
1. 感覚の違い
自閉スペクトラム症の子どもたちは、食べ物の選択や拒否において感覚の影響を強く受けることがあります。たとえば、特定の食感や味に敏感で、一貫した食感や淡白な味、ニュートラルな色合いの食品(例:チキンナゲット、プレーンなパスタ、白ご飯)を好むことが多いです。
2. 特徴的な性格傾向
完璧主義やルーティンへのこだわりといった神経発達症の特徴は、摂食障害に関連する行動(たとえば食事のルール設定や体重への執着)と関連があることが示されています。
3. 衝動性と過食
ADHDの人々では衝動性が過食症やむちゃ食い障害(短時間で大量に食べる行動)に関連していることが示唆されています。
4. その他のリスク要因
神経発達症の人々は、トラウマ体験、または他の精神的健康問題を抱える傾向が高く、これらも摂食障害のリスクを高める要因となっています。
現在の摂食障害治療は、神経発達症の人々の多様なニーズに十分対応していないと言われています。
とくに一般的な治療法として用いられる認知行動療法(CBT)は、神経発達症の人々にとって効果が限定的であることが指摘されています。
自閉スペクトラム症の女性たちは、CBTが一律的で、必要なスキルを前提としている点が受け入れにくいと感じることが多いようです。
研究では、以下の原則を基にした治療法が神経発達症の人々に効果的であると示唆されています。
- 平等なパートナーシップ:患者をケアの意思決定における対等なパートナーとし、彼らの経験を重視する。
- 特性の尊重と肯定:神経発達の特性を「欠点」や「治療対象」として捉えるのではなく、個性として認め、自尊感情を育む。
- 配慮と適応: 感覚過敏や特定の食習慣などの特性を考慮し、食事環境や食事計画を調整する。たとえば、食堂の音や光を減らす、感覚的に心地よい食品を中心にした食事計画を作る、といった配慮です。
さらに、摂食障害の治療はトラウマを考慮したケアであることが重要です。
摂食障害と発達の状態に関する研究はまだ発展途上ですが、これらの違いを理解し、それに基づいた支援を行うことで、より良い治療結果が期待されています。
(出典:豪SciTech Daily)(画像:たーとるうぃず)
うちの子も今では何でも食べてくれますが、小さな頃は本当に偏食でした。
必要なときには、医療機関に相談されてください。
(チャーリー)