- 摂食障害と自閉スペクトラム特性の関連性について、どのような影響が考えられるのか?
- 感覚過敏は摂食障害の行動にどのように影響を与えるのか?
- 自閉スペクトラム特性を持つ摂食障害患者に対して、どのような治療方法が効果的なのか?
イタリア・ミラノ大学の研究チームが行った最新の研究では、摂食障害を抱える女性たちの中に、自閉スペクトラム特性が見られることが確認されました。この研究は、摂食障害と自閉スペクトラム特性がどのように関連しているか、そして感覚過敏がこれらの特性にどのように影響を与えているかを探るために行われました。
摂食障害を持つ人々の中で、視覚や味覚、嗅覚といった感覚が鋭い人が多く、その鋭さが特定の食行動に影響を与えている可能性が示されています。
この発見は、摂食障害の治療法の見直しや支援の充実において大きな意義を持つものとされています。
研究チームは、摂食障害を持つ成人女性75名を対象に、彼女たちの自閉スペクトラム特性や感覚過敏のレベルを調査しました。
摂食障害の種類は「拒食症」「過食症」「過食性障害」、および「特定不能摂食障害」などさまざまです。
調査では、摂食障害に関する質問票と自閉スペクトラム特性の測定ツールを組み合わせて使用し、各参加者の特性や行動の傾向を測定しました。
この結果、参加者のうち12%が自閉症的な特性を強く示し、68%が部分的な自閉スペクトラム特性を持っていることがわかりました。
このことは、摂食障害を抱える人々の中で、自閉症的な特性がある程度存在する可能性を示唆しており、摂食障害のメカニズムに対する新たな視点を提供しています。
これまで、摂食障害と自閉症との関連性はあまり明確にされていませんでしたが、今回の研究はその関連性を浮き彫りにするものでした。
今回の研究でとくに注目されたのは、摂食障害患者に見られる「感覚過敏」の存在です。
感覚過敏とは、視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚などの感覚が通常の範囲を超えて鋭敏である状態を指します。
たとえば、視覚的に特定の色や形の食べ物に強い嫌悪感を抱いたり、味覚において特定の風味や食感を避ける傾向がある場合があります。
このような感覚過敏が、摂食障害の行動パターンにどのように影響を与えるのかを探ることが、研究のもう一つの重要なテーマでした。
調査結果によると、感覚が鋭敏なほど、自閉スペクトラム特性が強く出やすい傾向があることが明らかになりました。
また、この自閉スペクトラム特性が摂食障害の症状を悪化させたり、偏食や食事へのこだわりを生じさせたりする要因になることが確認されました。
たとえば、食事の際に、特定の食べ物の匂いや見た目が気になりすぎて食べられなかったり、特定の食感が苦手であるために食べることができないといった状況が挙げられます。
この感覚過敏と自閉スペクトラム特性の組み合わせは、摂食障害患者の食行動にも大きく影響しています。
摂食障害の特徴的な行動として、食べ物の種類や食べ方に対する強いこだわり、特定の食感や味の食べ物だけを好む傾向などが見られることがあります。
とくに、視覚や味覚といった感覚に対して過敏である場合、その感覚が不快に感じられるため、避ける行動が習慣化する可能性があります。
このように感覚が鋭敏であることが、摂食障害の症状を一層深刻化させることに寄与していると考えられます。
また、視覚に対する過敏さが、自分自身の体型や外見に対する意識を過剰に強め、理想のイメージにこだわりすぎることが、摂食障害の原因の一つになるとも指摘されています。
この感覚過敏は、単なる好き嫌いにとどまらず、生活の中で強い不快感を感じるほど影響している可能性が高いとされています。
この研究は、摂食障害の治療法についても新たな示唆を与えています。
これまでの摂食障害の治療では、一般的にグループセラピーや行動療法が取り入れられてきました。
しかし、自閉スペクトラム特性を持つ人には、こうしたグループでの治療方法が効果的でない場合があります。
他者と一緒に治療を受けることがストレスとなり、逆に治療への参加を妨げてしまうことがあるためです。
自閉スペクトラム特性を持つ摂食障害患者に対しては、個別対応が効果的である可能性が高いと研究者たちは考えています。
たとえば、特定の食材や食べ方に対するこだわりを理解し、患者の感覚過敏に配慮した食事の指導やサポートを行うことが考えられます。
また、コミュニケーション面でも、あらかじめ設定された話し方や内容でやりとりをするなど、患者が安心できる環境を整えることで、治療への参加意欲が向上し、より効果的な結果が得られる可能性があります。
この研究は、摂食障害と自閉スペクトラム特性の関係について新しい視点を提供しており、今後のさらなる研究が期待されています。
摂食障害の患者に自閉スペクトラム特性が見られる場合、その特性を正しく評価し、特性に合わせた個別の支援を行うことで、より効果的な治療が実現できるでしょう。
また、摂食障害の理解や治療方針において、患者一人ひとりの感覚特性や個別のニーズを尊重することの重要性が示唆されており、これは治療の成功率向上に繋がると考えられます。
さらに、日常生活においても、身近な人が偏食や食事に対する強いこだわりを抱えている場合、背景に感覚過敏や自閉スペクトラム特性がある可能性を考慮することは大切です。
これにより、家族や友人がより理解し、サポートしやすくなるだけでなく、本人が無理をせずに過ごせる環境づくりにもつながります。
(出典:Nature)(画像:たーとるうぃず)
「他者と一緒に治療を受けることがストレスとなり、逆に治療への参加を妨げてしまうことがある」
とくに、気にしていただきたい点だと思います。
(チャーリー)