- 自閉スペクトラム症(ASD)を持つ子どもたちの脳の構造の違いは、どのように彼らの行動や認知に影響を与えるのか?
- 研究から得られた神経細胞の構造の違いは、自閉症の診断や治療にどのような新しいアプローチをもたらす可能性があるのか?
- 自閉症と他の精神障害との脳の構造の違いは、どのようにそれぞれの特性を理解する手助けになるのか?
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちの脳のコミュニケーションを担う細胞が、一般の子どもたちとは異なる構造をしている可能性が新たに示されました。
英ロチェスター大学のデル・モンテ神経科学研究所の研究者たちは、自閉症の子どもたちの脳では、特定の領域で神経細胞の密度が一般の子どもたちと異なることを発見しました。
ロチェスター大学医学部・歯学部の博士課程学生で、この研究論文の第一著者であるザカリー・クリステンセンはこう言います。
「これまで長年、脳の厚さ、体積、曲率といった大きな特徴に注目してきました。
最近のMRIを用いた新しい技術により、脳の発達に伴う細胞構造の複雑さが新たに明らかになってきました」
研究者たちは、9歳から11歳の11,000人以上の子どもたちの脳画像データを使用し、そのうち自閉症と診断された142人の子どもたちと一般の子どもたちの脳を比較しました。
その結果、大脳皮質の一部の領域で、神経細胞の密度が低いことが確認されました。
この領域は、記憶や学習、推論、問題解決といった機能を担当しています。
一方で、感情を司る扁桃体のような脳の他の領域では、神経細胞の密度が高いこともわかりました。
また、自閉症の子どもたちと、ADHDや不安症といった一般的な精神障害を持つ子どもたちの脳も比較されましたが、同じ結果が得られました。
これは、これらの違いが自閉症に特有のものであることを示しています。
「自閉症の人々は、不安やうつ、ADHDなど、他の問題も抱えることが多いですが、今回の発見は、自閉症の特徴を捉えるための新しい測定基準を示しています。
もし神経細胞の構造的な変化を正確かつ簡便に把握できるようになれば、自閉症の発達過程を理解するための大きな手がかりとなり、より特化した治療を必要とする人を特定する手段としても活用できるでしょう」
技術の進歩により、研究者は神経構造をこれまで以上に精密に観察できるようになりました。
これまでは、神経細胞の構造的な違いを確認するには、死亡後の脳を調べるしかありませんでしたが、今回の研究では「Adolescent Brain Cognitive Development(ABCD)研究」という大規模な脳発達研究のデータが使用されました。
これは、子どもの脳の健康と発達に関する最も大規模かつ長期的な研究です。
ロチェスター大学は、この研究のデータを収集している全米21か所の研究機関の一つです。
デル・モンテ神経科学研究所およびゴリサーノ知的・発達障害研究所の所長であり、論文の上級著者であるジョン・フォックス博士はこう言います。
「ABCD研究が収集している膨大なデータが、子どもたちの健康に与える影響を理解し始めたばかりです。
このデータは、子どもの脳の発達についての知識を革新しつつあります」
(出典:英ロチェスター大学)(画像:たーとるうぃず)
亡くなられた方の脳と生きている脳では違うことも多いはずです。
技術の進歩により、困っている人たちを助ける研究がますます進むことを期待します。
自閉症の人の脳の構造の違いについてこれまでにわかってきたこと
(チャーリー)