- 自閉症の兄姉がいる場合、次に生まれる子どもも自閉症になる可能性はどのくらいありますか?
- 自閉症が家族内で再発する理由や影響する要因は何ですか?
- 自閉症のリスクを減らすために、家族や医療提供者はどのような対策を講じるべきですか?
米カリフォルニア大学デービス校のMIND研究所と「Baby Siblings Research Consortium」の研究チームは、自閉症の兄姉を持つ子どもが、自閉症と診断される確率が一般の子どもに比べて大幅に高いことを明らかにしました。
この研究結果は医学雑誌『Pediatrics』に掲載され、自閉症の子どもがいる家庭では、後に生まれる子の約20%が自閉症と診断されることがわかりました。
これは、自閉症の兄姉がいない子どもと比べて、約7倍高い確率です。
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、コミュニケーション、行動、社会的相互作用に影響を及ぼす複雑な発達障害です。
自閉症の子どもを持つ家族にとって、次に生まれる子どもも自閉症になる可能性があるかどうかは重要な関心事であり、とくに診断後の生活が大きく変わることからその可能性について知りたがることが多いです。
この研究の動機となったのは、一般の子どもにおける自閉症の診断が増加している現状です。
たとえば、2011年には約110人に1人の割合だった自閉症の診断が、現在では36人に1人と急増しています。
この増加が、家族内での自閉症の再発にも影響しているかどうかを調べるため、研究が進められました。
2011年に、同じ研究チームが行った研究では、自閉症の子どもを持つ家庭の18.7%の弟や妹が後に自閉症と診断されることが確認されていました。
この10年間で、診断基準の改善や、とくに女の子や認知能力の高い子どもに対する自閉症の認識向上により、診断率が上昇しています。
今回の研究では、こうした変化を反映させるために最新のデータで再調査が行われました。
「以前の研究でも、自閉症の兄姉を持つ家庭では、自閉症が再発する確率が、持たない家庭に比べて高いことが分かっています。
2011年以降、自閉症の一般的な発症率がほぼ2倍に増えたため、同じ要因が家族内での再発にも影響しているのではないかと考えました」
そう、研究の著者であるサリー・オゾノフ(UCデービス校の著名教授で早期発見ラボの主任研究者)は述べています。
新たな研究では、18か所の研究機関から収集されたデータを分析しました。
これらの研究機関は、国際的な自閉症研究者のネットワークである「Baby Siblings Research Consortium」に所属しており、研究は2010年から2019年の間に、自閉症の子どもがいる家庭に生まれた1,605人の乳幼児を対象に行われました。
これらの乳幼児は3歳から5歳まで追跡されましたが、これは自閉症の症状が現れ、正式に診断される時期です。
診断の一貫性を保つため、すべての研究機関で「自閉症診断観察スケジュール(ADOS-2)」と「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」の基準が使用されました。
これらは自閉症の診断において信頼性が高いとされています。
加えて、これらの子どもたちが自閉症かどうかを評価するだけでなく、認知、運動、言語スキルを測定する「Mullen早期学習尺度(MSEL)」も使用して発達状況が確認されました。
また、家族の人種や親の教育レベル、家庭構成(自閉症の子どもが1人いるか、複数いるかなど)などの重要な人口統計データも収集されました。
これにより、これらの要因が自閉症の再発にどのように影響するかが明らかにされました。
研究では、弟妹が自閉症と診断される再発率が依然として高いことが確認され、20.2%の弟妹が自閉症と診断されました。
これは、一般の子どもにおける自閉症の発症率(約2.5%)よりも大幅に高い結果です。
2011年に報告された18.7%という再発率と比べると、全体としてはわずかに上昇しているものの、統計的には有意差は見られませんでした。
これは、自閉症の一般的な発症率が増加しているにもかかわらず、家族内での自閉症の再発率は安定していることを示しています。
「私たちは、家族内で自閉症が再発する確率が約20%であるという前回の発見を再確認しました。
2011年には18.7%という数字でしたが、統計的には有意な差はありません。
今回のサンプルは、以前よりも大規模で多様性があり、より信頼性の高い結果を得ることができました。
10年以上にわたって安定した結果が得られたことは、家族や医療関係者にとって、次に生まれる子どもが自閉症である確率が5分の1であるという見解が信頼できることを示しています」
そう、オゾノフは述べています。
「この結果は、自閉症が家族内で遺伝的要因により引き継がれる可能性が高いことを裏付けるものです。
兄姉が自閉症である場合、次の子どもがASDを発症するリスクが高いため、早期の発達監視と迅速な対応が求められます。
この結論は2011年の論文でも示されましたが、実際には十分に実施されていないかもしれません。
医療提供者は、自閉症の子どもを持つ家庭の兄弟姉妹の発達を慎重に監視する必要があります」
この研究で特に注目すべきは、再発率がいくつかの要因に基づいて異なることが確認された点です。
たとえば、男児の方が女児よりも自閉症と診断される確率が高く、男児では25.3%、女児では13.1%でした。
これは、自閉症の研究全般で男児が女児よりも診断されやすいという傾向と一致しています。
しかし、複数の自閉症の兄姉がいる家庭(多重家族)の女児は、1人だけ自閉症の兄姉がいる家庭(単一家族)の女児よりも、自閉症を発症するリスクがはるかに高いことがわかりました。
多重家族では、女児の再発率は39.5%であるのに対し、単一家族では12.6%でした。
さらに、最初に自閉症と診断された子どもの性別が再発率に影響を与えることも確認されました。
自閉症の姉を持つ家族では再発率が34.7%であるのに対し、自閉症の兄を持つ家族では22.5%でした。これは、女児が自閉症を発症するためには、より多くの遺伝的または環境的リスク要因が必要であるという「女性保護効果」という理論を支持しています。
また、家族の人種や母親の教育水準も再発率に影響を与えることが明らかになりました。
非白人の家庭では自閉症の再発率が24.3%、白人家庭では17.4%でした。
また、母親の教育水準が大学を卒業していない場合、自閉症の子どもが生まれる確率が高いことも示されました。
「家族の人種が、再度自閉症の子どもが生まれる確率に影響を与えていることが分かりました。
白人家庭の再発率は18%でしたが、有色人種の家庭では25%と有意に高い結果となりました。
また、母親の教育水準が再発率に影響を与えていることも分かりました」
そう、オゾノフは述べています。
「これらの結果は新しく、驚くべきものであるため、他の研究チームによる独立した検証が必要です。
もし再現された場合、社会的要因や健康の社会的決定要因が、自閉症の発症率に影響を与える可能性が示唆されます。
これは、制度的な人種差別や経済的困難を経験している家族で特に顕著かもしれません」
この研究は、遺伝的要因と環境的要因が自閉症にどのように関与しているかについて、さらに研究が必要であることを強調しています。
たとえば、なぜ多重家族の女児が自閉症を発症するリスクが非常に高いのかを解明することが重要です。
自閉症の遺伝的基盤に関するさらなる研究は、家族にとってより明確な指針を提供することにつながるでしょう。
この研究は、「Autism Science Foundation」などの複数の組織によって資金提供されました。
Autism Science Foundationの科学責任者であり、「Baby Siblings Research Consortium」のプログラム責任者であるアリシア・ハラデイは、早期の発達監視の重要性を強調し、「自閉症の兄姉がいる家庭では、次の子どもが自閉症を発症するリスクが高いため、早期の発達監視と迅速な診断評価が必要です」と述べています。
「とくに、男児や、女児の兄姉に自閉症がいる場合、あるいは複数の自閉症の兄姉がいる場合は、幼少期から慎重に観察されるべきです。
経済的に不利な家庭の子どもに対しては、特に継続的な発達監視が必要です」
(出典:米PsyPost)(画像:たーとるうぃず)
まず、今回の研究について、研究者がこう言っていることも、きちんと認識し冷静に注意してください。
「これらの結果は新しく、驚くべきものであるため、他の研究チームによる独立した検証が必要です」
親としては無視したくなるような次の研究結果ですが、目を背けることはできません。
- 20.2%の弟妹が自閉症と診断されました。一般の子どもにおける自閉症の発症率(約2.5%)よりも大幅に高い結果
- 家族や医療関係者にとって、次に生まれる子どもが自閉症である確率が5分の1であるという見解が信頼できる
なお、次のような数字も挙げられていました。
- 男児の方が女児よりも自閉症と診断される確率が高く、男児では25.3%、女児では13.1%
- 複数の自閉症の兄姉がいる家庭の女児の再発率は39.5%であるのに対し、1人だけ自閉症の兄姉がいる家庭の女児は12.6%でした。
- 自閉症の姉を持つ家族では再発率が34.7%であるのに対し、自閉症の兄を持つ家族では22.5%
- 非白人の家庭では自閉症の再発率が24.3%、白人家庭では17.4%
- 母親の教育水準が大学を卒業していない場合、自閉症の子どもが生まれる確率が高い
「自閉症の兄姉がいる家庭では、次の子どもが自閉症を発症するリスクが高いため、早期の発達監視と迅速な診断評価が必要です」
愛する子どもたちの困難が減るように。
(チャーリー)