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自閉症への医療行為。「エビデンス」という言葉の濫用にも注意

time 2024/10/01

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

自閉症への医療行為。「エビデンス」という言葉の濫用にも注意
  • 新しい自閉症治療法を選ぶ際、どのように科学的な証拠を見極めればよいか?
  • 体験談と科学的データの違いをどのように理解し、判断に役立てるべきか?
  • 自閉症に対する治療法の効果を評価するために必要な基準は何か?

近年、自閉スペクトラム症(ASD)の診断が増えるとともに、それに対応するための実験的な治療法や、正式な承認を得ていない治療法の数も増えています。

自閉症の治療法を選ぶ際、親たちは複雑で時に矛盾する情報の中を迷いながら、医療の予定や教育専門家との調整、さらには家族全体のニーズに対応しなければならず、その過程はとても大変です。

自閉症の専門家たちが、治療法を評価する際に親や本人が注意すべき点について語りました。
これは、自閉症に限らず、他の病気に関する新しい治療法を検討する際にも重要なポイントです。

ある治療法が「人生を変えた」といった直接的な体験談は非常に魅力的です。

しかし、自閉症の専門家たちは、それだけではその治療法が他の人にも同じ効果があるかどうかは判断できないと言います。
自閉症支援団体のゾーイ・グロスはこう述べます。

「体験談に基づいて治療法を売り込んでいる場合には注意が必要です。
クリニックのウェブサイトで『この治療で子供がこれだけ変わった』といった親の感想が多く載っていても、それは科学的な証拠とは異なります。
もし体験談が主要な宣伝手段であれば、それは科学的な研究がないか、あるいは研究の結果が効果を示していない可能性があります」

データが伴わなければ、その治療法が他の患者にも効果があるかどうかを知る手段はありません。

「成功率がたった1%しかない治療法でも、何千人もの人が試せば、成功した体験談がいくつも出てくるかもしれません」

医師たちは、元患者の体験談を治療法を調べ始めるきっかけにするのは良いが、それだけで判断するのは避けるべきだと述べています。
UCLAのTMS臨床研究サービスの責任者であるアンドリュー・ロイヒター医師はこう言います。

「医学には古い格言があります。
体験談がいくら集まっても、それは科学的データにはなりません」

自閉症治療に関する科学的団体の代表であるデビッド・セリベルティ博士はこう言います

「現在では『エビデンスに基づく』と自称するのが流行っています。
消費者にとって、『エビデンスに基づく』という言葉は非常に魅力的に聞こえるかもしれませんが、その言葉を乱用しているケースも多いです」

たとえば、磁気共鳴治療(MERT)を開発したウェイブ・ニューロサイエンス社のウェブサイトには、研究資料が数多く掲載されています。
同様に、多くのライセンス契約を結んだクリニックのサイトにも研究のリンクがあります。
しかし、専門家たちは、そこに引用されている自閉症に関する研究の多くが、内容が限られているか、MERTとはあまり関係がないと指摘しています。

たとえば、2016年の「オースティン・ジャーナル・オブ・オーティズム・アンド・リレイテッド・ディスアビリティーズ」に掲載された短い記事があります。
この論文はMERTが自閉症に対する治療としてさらに研究される可能性があることを述べていますが、データやオリジナルの研究は含まれておらず、結論としては「重大な害を及ぼすリスクはないが、さらなる研究が必要だ」としています。

この論文の共著者であるジョン・クロフォード博士は、「これはエビデンスに基づく論文ではなく、この技術の可能性についての意見です」と述べており、科学的な視点から見るとあまり重要なものではないとしています。

また、多くのMERTクリニックでは、2014年に発表された電子ポスターも紹介されています。
これは、自閉症に対してMERTのベースとなっている経頭蓋磁気刺激法を受けた141人の子どもたちのデータを分析したものです。
しかし、報告書を見ると、治療後5日以内に改善が見られなかったり、症状が悪化した38人が分析から除外されています。
また、そのうちの1人は治療中に発作を起こしています。

このように、多くの患者が除外された結果、改善を示したのは最終的に残った44人中26人(59.1%)で、全体の研究対象者に対してはわずか18.4%に過ぎませんでした。

このようなポスター発表は、専門家の会議で研究結果を紹介するために準備されるもので、厳格な査読を受けているわけではない、とUSCの神経外科医であるチャールズ・リュー博士は述べています。

「これで重要なのは、より厳密な研究が必要であるという点です」

ウェイブ社やライセンスクリニックは、2022年のオーストラリアのクリニックで行われたMERT治療の研究も紹介していますが、これも他の科学者たちによれば、まだ十分なエビデンスがないとされています。

最終的に、医学研究には証拠の信頼性に階層があります。
最も下にあるのは体験談や観察結果で、それだけでは一般的な結論を引き出すには不十分です。
最も信頼性が高いのは「ランダム化比較試験」で、これにより研究者はバイアスを最小限に抑え、研究対象が本当に効果をもたらしているかを確認できます。
自閉症科学財団の科学責任者であるアリシア・ハラデイはこう言います。

「家族は、『ランダム化比較試験』という金字塔の存在を知るべきです。
自閉症に対して効果のある治療法を確認するためには、こうした厳密な試験が必要です」

(出典:米Medical Xpress)(画像:たーとるうぃず)

学会からも批判されているような「診断」「治療」の方法は、とくに避けるのが賢明です。

「自閉症は治せる」と英新聞が掲載した研究の大きな問題点

(チャーリー)


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