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肥満の母の子はADHDが1.6倍、自閉症が1.4倍の確率に

time 2024/09/27

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肥満の母の子はADHDが1.6倍、自閉症が1.4倍の確率に
  • 妊娠前後の母親の肥満は、どのように子どもの神経精神的健康に影響を与えるのか?
  • 子どもの行動障害や発達の問題は、母親の体重管理によってどのように変わるのか?
  • 妊娠中の健康管理が、将来の子どもの行動や気分に与える影響はどれほど大きいのか?

オーストラリアを中心とした国際的な研究チームが、母親の妊娠前後の肥満が子どもの神経精神的および行動に与える長期的な影響について詳細に分析した結果を発表しました。

この研究は、南オーストラリア大学のプレシジョンヘルスセンターに所属するベレケット・ドゥコを筆頭に、クイーンズランド大学、カーティン大学、モナシュ大学、シドニー大学などの研究機関が参加する形で進められました。
この研究の結果は、子どもたちの将来の健康に重大な影響を及ぼす可能性があるとして、母親の妊娠前後の体重管理の重要性を強調しています。

研究の焦点は、母親が妊娠前や妊娠中に肥満であった場合、子どもが将来にわたってどのような神経精神的問題や行動障害を発症するリスクが高まるかという点です。
これまでにも、妊娠中の母親の健康状態が子どもの発達に影響を与えることは知られていましたが、とくに肥満に注目し、それが子どもの神経発達にどのように関係するかを包括的に調べた研究は限られていました。

この研究では、世界中の3,680,937組の母子ペアを対象とした42の観察研究を精査しました。

観察研究とは、実際の生活の中で、特定の要因(この場合は母親の体重)がどのように結果(子どもの健康)に影響するかを長期間追跡する研究です。

研究チームはこれらのデータを統合し、分析することで、肥満や過体重の母親から生まれた子どもたちが、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、行動障害、精神病性障害、対人関係の問題、外向的な行動問題などを発症するリスクがどれだけ高いかを評価しました。

まず、妊娠前に肥満であった母親から生まれた子どもは、ADHDの発症リスクが57%増加し、自閉スペクトラム症(ASD)に関しては42%のリスク増加が確認されました。

具体的には、肥満の母親から生まれた子どもは、ADHDの診断を受ける確率が1.57倍、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断を受ける確率が1.42倍となっており、さらに行動障害のリスクも16%高まることが示されました。

また、外向的な行動(反抗的な行動や攻撃的な行動など)や、友達との関係性の問題を抱えるリスクも顕著に増加していることがわかりました。

この結果は、妊娠前だけでなく、妊娠中に肥満や過体重であった母親にも共通しており、母親が過体重であるだけで、子どもに何らかの精神的または行動的な問題が発生するリスクが高まることが示されています。

とくに注目すべきは、母親が妊娠前および妊娠中に肥満であることが、子どもの精神障害リスクに関連している点です。

精神病性障害のリスクは、母親が肥満であった場合に1.61倍に達し、外向的な行動の問題も30%増加しています。
さらに、友人との関係に問題がある子どもたちのリスクは、母親が肥満であった場合、25%増加しました。

このようなリスクの増加は、母親が過体重である場合にも確認されましたが、肥満である場合のほうがリスクがより高いことがわかりました。

一方で、この研究では、肥満や過体重の母親から生まれた子どもが、気分障害(うつ病など)、不安障害、摂食障害、睡眠障害、利他的行動に問題を抱えるリスクには、明確な関連が見られないことも報告されています。
これらの問題については、母親の体重が直接的に影響を与えているとは考えにくいという結論です。

これまでの研究では、母親の肥満が妊娠や出産に与える影響として、早産や低出生体重、大きすぎる赤ちゃんの出生、あるいは死産のリスク増加が指摘されていました。
しかし、この新しい研究では、妊娠前および妊娠中の母親の肥満が、子どもの長期的な精神的・行動的健康に及ぼす影響について、より深い理解が得られました。

とくに、母親の肥満が、胎児の脳の発達に影響を与える可能性が指摘されています。
肥満によって引き起こされる慢性的な炎症や酸化ストレス、ホルモンの不均衡、脂肪酸の代謝異常などが、胎児の脳の発達に悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。

さらに、母親の肥満に伴う妊娠糖尿病や高血圧などの合併症も、子どもの神経発達に悪影響を与える要因として挙げられています。
これらの合併症は、胎児期の脳の発達に影響を与えるだけでなく、出産後の子どもの成長や発達にも悪影響を及ぼす可能性があります。

たとえば、妊娠糖尿病の母親から生まれた子どもは、神経発達障害のリスクが高まることが以前から指摘されており、今回の研究結果とも一致しています。

今回の研究で用いられた手法は「統合分析」と呼ばれるもので、異なる複数の研究結果を統合し、全体としてどのような傾向があるかを明らかにする方法です。
これにより、個別の研究では明確に見られなかった影響も浮き彫りにされ、より信頼性の高い結論を導き出すことができます。

統合されたデータの規模は非常に大きく、3,680,937組の母子ペアを対象としているため、得られた結果は非常に強固なものと言えます。
この研究の重要なポイントは、母親の体重管理が子どもの将来の健康に与える影響が非常に大きいということです。

肥満や過体重は、単に母親自身の健康問題にとどまらず、次世代の健康にも深く関わっているため、妊娠を計画している女性や妊婦に対する体重管理の重要性がますます強調されるべきだと研究者たちは述べています。

とくに、妊娠前から適切な体重管理を行うことが、子どもの精神的・行動的健康を守るために有効であるとされています。

さらに、この研究結果は、公衆衛生政策にも大きな影響を与える可能性があります。
妊娠前の体重管理や妊娠中の健康管理を推奨するプログラムや政策が、今後ますます重要視されることでしょう。
母親の健康が子どもの将来に直接影響を与えるという認識を広めることは、母子ともに健康な未来を築くために不可欠です。

また、今後の研究では、遺伝的要因や家庭環境、社会経済的背景など、母親の体重以外の要因がどのように影響するかも含めて、より詳細に調査されることが期待されます。
今回の研究は、母親の肥満が子どもの神経発達に与える影響を明らかにする重要な一歩であり、さらに深い理解を進めるための基盤となるものです。

(出典:Psychiatry Research)(画像:たーとるうぃず)

「母親の体重管理が子どもの将来の健康に与える影響が非常に大きい」

生まれてくる子のために、父親も認識し、協力していただきたいと思います。

糖尿病の母から生まれた子は発達障害の可能性が高まる。台湾研究

(チャーリー)


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