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知的障害者と健常者が共に成長する共生型スポーツの健康効果

time 2024/09/14

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

知的障害者と健常者が共に成長する共生型スポーツの健康効果
  • 知的障害を持つ人がスポーツを通じてどのように健康を改善できるのか?
  • 共生型スポーツが健常者にもたらす具体的な利益は何か?
  • 有効なスポーツプログラムはどのように設計すべきか?

ローマ・ラ・サピエンツァ大学のマリア・キアラ・ガロッタ教授を中心とする研究チームが、知的障害を持つ選手と持たない選手を対象にしたバスケットボールトレーニングの効果について、新たな知見を発表しました。
この研究は、知的障害者と健常者が一緒にスポーツを行う「共生型スポーツ」が、両者の体力と健康にどのような影響を与えるかを検証したものです。
知的障害者の健康増進だけでなく、健常者にとっても有益な結果が得られたことで、大きな注目を集めています。

知的障害を持つ人々は、運動不足が原因でさまざまな健康リスクを抱えやすいことが知られています。
肥満や心血管系の疾患、筋力低下、バランス感覚の衰えなどがその代表的な例です。
とくに、身体を動かす機会が少ないことで、生活の質が低下する傾向が強まることが問題視されています。
これに対して、スポーツや運動が有効な解決策になる可能性が高いと、過去の研究でも示されています。

しかし、知的障害を持つ人々だけでなく、健常者と一緒にスポーツを行うことでどのような効果があるのかについては、十分な研究がなされていませんでした。
そこでガロッタ教授らの研究チームは、共生型スポーツの効果を科学的に検証し、知的障害を持つ選手と健常者がともにスポーツを楽しむことが、どのような健康上の恩恵をもたらすかを調査しました。

研究チームは、知的障害を持つ選手99名(男性63名、女性36名)と健常者14名(男性9名、女性5名)を対象に、9か月間のバスケットボールトレーニングを行いました。
対象者は以下の3つのグループに分けられました。

  • 共生型グループ:知的障害者と健常者が一緒にトレーニングを行うグループ。
  • 非共生型グループ:知的障害者のみが参加するグループ。
  • 対照グループ:運動を行わず、通常の生活を続けるグループ。

トレーニングは週に2回、90分ずつ行われ、9か月にわたって継続されました。
すべての参加者は、トレーニングの前後で身体測定やフィットネステストを受け、その結果をもとに各グループの変化を比較しました。

フィットネステストでは、筋力や柔軟性、バランス感覚、持久力、俊敏性、動作速度など、さまざまな体力の要素が評価されました。
加えて、知的障害のレベル(軽度、中等度、重度)と各フィットネス項目の改善度との関連性についても分析が行われました。

結果は非常に明確でした。

まず、共生型および非共生型グループの知的障害者は、9か月のトレーニングを通じて、体重、筋力、バランス、柔軟性、敏捷性、持久力といった多くの項目で有意な改善が見られました。
たとえば、両グループともに体重が減少し、筋力や持久力が大幅に向上したことが確認されました。

一方で、対照グループでは、体重が増加し、体力の低下が顕著に見られました。
運動を行わなかったことで、彼らの健康状態が悪化したのです。

さらに注目すべき点は、知的障害を持たない健常者においても同様の改善が見られたことです。

共生型グループに参加した健常者は、体重が減少し、筋力、バランス、俊敏性などが改善しました。
とくに筋力と持久力の向上が顕著で、これまで健常者が知的障害者と一緒にトレーニングを行うことが、自身のフィットネス向上に寄与するかどうかは不明確でしたが、この研究によりその有効性が実証されました。

また、知的障害のレベルによる違いも分析されました。

軽度の知的障害を持つ人々は、より高いフィットネススコアを記録する傾向があり、重度の障害を持つ人々は相対的に改善が少ないことが示されました。
しかし、運動による改善度は知的障害のレベルにかかわらず見られ、トレーニングがすべての参加者に効果的であることが確認されました。

この研究は、単にフィットネスの向上にとどまらず、社会的な包摂の意義も強調しています。

知的障害者と健常者が同じフィールドでともに汗を流し、目標に向かって協力し合うことで、彼らの社会的なつながりが深まるとされています。
研究の中でも、共生型スポーツが知的障害者の自己肯定感や社会的スキルを向上させる効果があることが示唆されています。
これは、知的障害者が自らの身体能力に自信を持ち、日常生活での自立を促進する大きな要素となります。

一方、健常者にとっても、共生型スポーツは重要な学びの場となります。

健常者が知的障害を持つ人々と一緒にトレーニングを行うことで、相互理解が深まり、偏見や誤解が解消される可能性があります。
研究チームは、こうした共生型スポーツが社会全体の包摂力を高める手段としても機能することを強調しています。

ガロッタ教授は、今回の研究結果を踏まえ、共生型スポーツのさらなる普及を提唱しています。
とくに、知的障害者に限らず、他の障害を持つ人々にもこのアプローチが有効である可能性が高く、今後はさまざまなスポーツや運動プログラムにおいて、共生型の導入が期待されています。
また、この研究では心理的な効果や社会的な影響についても今後の課題として挙げられています。
今後の研究では、共生型スポーツがどのようにして参加者の心理的な健康や社会的スキルに影響を与えるか、さらに詳細な分析が行われる予定です。

ローマ・ラ・サピエンツァ大学のガロッタ教授らの研究は、共生型スポーツが知的障害者と健常者の双方にとって、健康とフィットネス向上に寄与することを示す重要な成果を上げました。
知的障害者にとっては、身体的な改善だけでなく、社会的なつながりを強化する場として、健常者にとっても新たな学びと成長の機会として、このアプローチが広く認知されることが期待されています。
スポーツが持つ力が、より多くの人々に届く未来が、すぐそこにあるのかもしれません。

(出典:Nature)(画像:たーとるうぃず)

私も中学生の頃は部活でバスケをしていました。
今でもジョギングしたり、けっこう運動をするほうです。

しかし「競技」にはまったく関心がありません。

うちの子と手を繋いで歩いたり、ここでいう「共生型スポーツ」であれば大好きです。

ますますこうしたメリットがあることが広く知られて、楽しくみんなが一緒に体を動かすようになるといいなと思います。

自閉症の子たちの運動機能改善に効果的なのは対面+親。研究

(チャーリー)


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