- 食事に対する感覚的な過敏さをどう理解し、対応するべきか?
- 自閉症やADHDを持つ人のための適切な治療方法は何か?
- 親や家族がどのようにして発達障害を持つ子供をサポートできるのか?
リサ・ブルーム(36歳)が「自由に楽しく食事をした」記憶は、3歳の時が最後だといいます。
「私は幼い頃から、食べ物の匂いや食感、そして音などに敏感で、食べることが難しく感じていました」
当初、母親のスーは、娘がただの「好き嫌いが激しい時期」を迎えていると考えていました。
しかし、リサの食事はますます制限され、彼女は孤立していきました。
「娘は自分の部屋でよく遊ぶ子供でした。
誕生日パーティーには全く行きたがらなくて…『どうして彼女は何にも参加したがらないんだろう』と考えたものです」
スーはリサを何人もの医師に連れて行きましたが、そのたびに彼女の心配は軽くあしらわれたと感じていました。
「食べ物を娘の敵にしたくはなかったけれど、同時に娘が栄養失調になっていくのを見ていました。
ある医者には『家に帰って、自然にうまくいくのを待てばいい』と言いました。
それは一番ひどい言葉でした。
問題があることは分かっていたのに、問題がないと言われたんです」
リサの摂食障害の診断は、彼女の症状が「単一の枠にきちんと収まらない」ため、さらに複雑でした。
彼女は何十年もかけて、神経性無食欲症(拒食症)などいくつかの摂食障害と診断され、さまざまな治療法を試みましたが、20代で自閉スペクトラム症の診断を受けたことで、自分の感覚過敏が理解され、なぜ従来の治療がうまくいかなかったのかが明らかになりました。
「感覚的な問題があることや、強いストレスを感じていることは伝えていたのに、それに対応する手立てがほとんどなかったんです。
結果的にかなりトラウマになってしまいました」
そう、リサは言います。
リサは、過去の医師たちは善意で治療に取り組んでくれたと信じていますが、彼らには自閉症の人に対して治療を適応させる知識が欠けていたと感じています。
2023年に発表されたDeloitte Access Economicsとバタフライ財団の報告書によると、110万人以上のオーストラリア人が摂食障害を抱えています。
英ロンドン大学キングスカレッジの心理学および摂食障害の教授、ケイト・チャンチュリア博士によれば、世界的な研究では、自閉症を持つ摂食障害患者の割合が高いことが示唆されています。
「マウズリー病院での臨床監査データによれば、患者の3分の1が自閉症の可能性があるか、正式な診断を受けているとされています」
研究では、ADHDを持つ摂食障害患者の割合も過剰であることが示されています。
Eating Disorders Neurodiversity Australiaの共同創設者であるローレンス・コバートは、トゥレット症候群、知的障害、ギフテッド(特別な才能を持つ人々)など、あらゆる形態の発達障害に関連した摂食障害の発生率を理解するために、さらなる研究が必要だと述べています。
コバート自身も摂食障害の経験があり、神経発達障害の人々には、さまざまな脆弱性から摂食障害のリスクが高まると指摘しています。
「たとえば、自閉症の人にとって、体重が増えることへの恐怖は、必ずしも身体イメージの問題に関連しているわけではありません」
発達障害を持つ人々は、感覚過敏を経験したり、空腹や満腹感を感じ取りにくいことがあります。
食べ物の触感や匂い、味などが不快であることもあります。
また、騒がしい環境や人が多い場所が圧倒される原因となり、1人で食事をすることを好む場合もあります。
コバートは、食事中にヘッドフォンを着用して感覚的な負担を軽減していると話します。
さらに、組織化や実行機能の問題が、神経発達障害を持つ人々の食材の購入や準備の能力に影響を与えることもあります。
「私は簡単に作れる軽食を準備しています。
あまり調理のモチベーションがいらないようなものです。
また、感覚的な負担を軽減するために、食材の買い物はオンラインで行っています」
ケイト・チャンチュリア教授は、摂食障害に対する新しいアプローチを開拓しています。
ロンドンのマウズリー病院で、彼女とそのチームは、自閉症の患者向けにPEACE Pathwayというサービスを立ち上げました。
このサービスでは、自閉症の患者のために、シンプルで予測可能な食事メニュー、騒音を減らすための工夫、感覚的な道具(重いブランケットなど)、自閉症の訓練を受けた臨床医、そして家族へのサポートを提供しています。
「自閉症の人には、食事中に話しかけることが必ずしも良いわけではなく、むしろ食事に集中できるようにすることが治療的に有効です」
PEACE Pathwayは、病院の滞在期間を短縮し、年間50万ドル以上の節約にもつながっており、シドニーの病院とも協力して、このサービスの適用を拡大しています。
リサは、臨床心理学者のエイミー・タルボット博士の支援を受けて回復しました。
エイミー・タルボット博士は、神経発達障害を持つ人々に対する「神経アファーミング・ケア」と呼ばれる治療を行っています。
「リサの場合、私たちは彼女の行動の背後にある原因を一緒に探るために、たくの協力をしました」
そう、タルボット博士は説明します。
リサにとって、タルボット博士が彼女の自閉症を理解し、必要な治療を提供してくれたことが回復のカギとなりました。
「彼女はいつも、『感覚的にどう感じているのか?』とか『光は大丈夫?』とか聞いてくれました。
私が何か手でいじっている時も、決して怒られませんでした。
それが実際に私の不安を調整する助けになっていると彼女が理解してくれていたからです」
タルボット博士は、自閉症の人々にとって、同じ食べ物を長期間食べることが、予測可能性や安心感をもたらすと説明しています。
また、異なるコミュニケーションスタイルを理解し、尊重することも重要だと強調しています。
「リサの場合、視覚的なコミュニケーションが非常に有効でした。
リサはしばしば自分の経験を絵で表現したり、持ち込んだものを通じて私と共有してくれました」
リサは、摂食障害が自分の子供時代と10代を奪ってしまったと感じています。
彼女は学校をよく欠席し、「非常に孤立していた」と振り返ります。
しかし今、彼女は不安を克服し、外の世界に踏み出せるようになりました。
リサは、自分が絶望的だった時に希望を持ち続けてくれた母親とタルボット博士に、心から感謝しています。
「時には、自分が希望を持てなくても、誰かが代わりにその希望を持ち続けてくれる必要があるんです。そうすることで、いつかまた自分で希望を見出せるようになります。
本当に大変なことですが、出口は必ずあります」
(出典・画像:豪abc)
食べることができなく、孤立し、そして痩せていく。
ご本人、そして家族にとって本当に深刻なことだと思います。
そうなったら、すぐに適切な医療機関に相談に行かれてください。
(チャーリー)