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自閉症の発症メカニズム、ミトコンドリア異常が関与。研究

time 2024/09/08

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症の発症メカニズム、ミトコンドリア異常が関与。研究
  • 自閉スペクトラム症(ASD)の発症にミトコンドリアの問題がどのように関与しているのか?
  • ミトコンドリア機能改善はASDの症状緩和にどれほど効果が期待できるのか?
  • ミトコンドリアDNAの異常を修正することでASDの治療にどのような可能性があるのか?

自閉スペクトラム症(ASD)の原因の一つとしてミトコンドリア機能不全が大きく関わっていることが示唆されています。
イスラエルのエルサレム・ヘブライ大学薬学部に所属するイゴール・カリウリン博士、ワジェハ・ハムーディ博士、そして主任研究者のヘイサム・アマル博士が行った研究の結果です。

ASDは、社会的なやり取りの困難さ、興味の狭さ、コミュニケーションの問題、繰り返しの行動など、子どもに発生する慢性的な神経発達障害です。

今回の研究では、ミトコンドリアが正常に機能しないことが、ASDの症状に関与していると考えられており、その結果として脳の発達に悪影響を及ぼしている可能性があることが明らかになりました。

ミトコンドリアは、細胞の中でエネルギーを作り出す「パワーハウス」として知られていますが、それ以外にも、細胞内でカルシウムのバランスを保つ役割や、不要な細胞をプログラムされた形で処理する「アポトーシス」と呼ばれる仕組みの調節にも関わっています。

カルシウムは神経細胞が情報を伝達するために必要な物質で、ミトコンドリアがカルシウムの処理を適切に行わないと、神経細胞の働きが悪くなり、シナプス(神経同士が情報をやり取りする接点)の機能が障害されることになります。

こうした問題がASDの症状につながることが示唆されています。

ASDの子どもたちの中には、ミトコンドリアの機能に問題があることが見つかっています。

具体的には、エネルギーを作り出す仕組みである「電子伝達系」や「酸化的リン酸化」といった機能がうまく働かないことが、ASDの原因の一つとして考えられています。
これにより、脳が必要とするエネルギーが十分に供給されず、その結果として脳の発達が妨げられることになります。

たとえば、カルシウムの取り扱いやATP(エネルギーを蓄える分子)の生成に問題があることが、神経伝達やシナプスの形成に悪影響を与えていることがわかっています。
シナプスがうまく形成されないと、神経細胞同士のコミュニケーションが障害され、これがASDの症状の原因の一つとなる可能性があります。

さらに、ASDの人のミトコンドリアでは、活性酸素種(ROS)や一酸化窒素(NO)といった有害な化学物質が過剰に生成されていることも確認されています。
ROSは、細胞がエネルギーを作り出す過程で自然に発生する物質で、通常は細胞内の抗酸化物質によってコントロールされていますが、ASD患者ではこのバランスが崩れ、ROSが過剰に蓄積されることで「酸化ストレス」が発生します。

酸化ストレスは、細胞膜やDNAを傷つけ、最終的には細胞死を引き起こす原因となることが知られています。

このようなミトコンドリアの異常は、ASDの発症や進行に寄与していると考えられています。
つまり、ASDの子どもたちの脳では、ミトコンドリアの機能不全が原因でエネルギー不足が発生し、脳の発達に影響を及ぼすことが示唆されています。

さらに、ミトコンドリア内でのカルシウムの取り扱いの異常がシナプス形成に悪影響を与えることも確認されています。
神経細胞同士の情報伝達がうまくいかないため、ASD特有の社会的な行動や認知機能の異常が生じるのです。

また、研究では、ASD患者のミトコンドリアでの異常な活性酸素種の生成が、細胞内のバランスを崩し、神経細胞の成長や発達に悪影響を及ぼしていることも確認されています。
これにより、酸化ストレスが長期間にわたって脳にダメージを与え、最終的にはASDの症状を悪化させることが示されています。
酸化ストレスは、脳内で炎症を引き起こし、これが神経伝達を阻害する要因となっている可能性があります。

さらに、ミトコンドリアが関与する細胞死のメカニズムである「アポトーシス」や「ネクロプトーシス」が、ASDの発症や進行に深く関わっていることが明らかになっています。

アポトーシスは、細胞が自らを計画的に処理する仕組みで、正常な発達過程では必要不可欠な機能ですが、ASD患者ではこの仕組みが過剰に働きすぎていることが確認されています。
これが脳の発達に悪影響を与え、神経回路の形成に障害を引き起こしている可能性があります。

一方、ネクロプトーシスという別の形態の細胞死もASDに関連しているとされています。
ネクロプトーシスは、炎症を伴う細胞死で、過剰なROSの生成やカルシウムの異常な流入によって引き起こされます。
この細胞死のプロセスがASD患者の脳で異常に活性化していることが確認されており、これが神経細胞の死を招き、ASDの症状を悪化させていると考えられています。

今回の研究は、ASDの治療においてミトコンドリアが重要なターゲットとなり得ることを示唆しています。

現在、ASDに対する効果的な治療法は限られていますが、ミトコンドリアの機能を改善することで、ASDの症状を緩和できる可能性が示されたのです。
たとえば、ミトコンドリアのエネルギー生成を助ける薬や、酸化ストレスを抑える抗酸化物質が、今後の治療法として期待されます。
とくに、ミトコンドリアのエネルギー生成を改善し、ROSの過剰生成を抑えることで、神経細胞の健康を回復させ、ASDの症状を軽減する可能性が考えられます。

また、ミトコンドリアDNAの異常や電子伝達系の問題を修正する遺伝子治療の可能性も議論されています。
ミトコンドリアDNAに見られる特定の変異が、エネルギー生成の障害を引き起こし、ASDの症状を引き起こしていると考えられるため、これらの遺伝子を修正することで根本的な治療が期待されています。

この研究は、ASDの原因解明と治療に向けた重要なステップとなるもので、ミトコンドリアに焦点を当てることで、ASDの治療法が大きく前進する可能性を示しています。

今後の研究がさらに進むことで、ミトコンドリア機能をターゲットにした新しい治療法が確立され、ASD患者の生活の質が向上することが期待されます。
今回の研究によって、ASDの発症メカニズムに関する理解が深まり、効果的な治療法の開発に向けた道が開けていくでしょう。

(出典:Nature)(画像:たーとるうぃず)

影響が広範なので、原因というより、むしろ結果のようにも思えます。

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(チャーリー)


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