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自閉症と過激思想の関連の研究。孤立感が引き起こすリスク

time 2024/08/31

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症と過激思想の関連の研究。孤立感が引き起こすリスク
  • 自閉症スペクトラムを持つ人々が過激思想に引き寄せられる原因は何ですか?
  • 社会での孤立感や疎外感をどう解消すれば良いのでしょうか?
  • 適切な支援を通じて過激思想への関与を減らすためには何が必要ですか?

カナダやアメリカの国際的な研究チームが、自閉症スペクトラム(ASD)を持つ人々がどのようにして過激な思想に引き寄せられ、そこに関わるようになったのかを明らかにするための研究を行いました。
この研究の中心となったのは、カナダのウェスタン大学のサチンドリ・ウィジェクーン博士、アメリカのウィリアム・アンド・メアリー大学のジョン・ロビソン博士、トロント大学のクリスティ・ウェルチ博士をはじめとする複数の研究者です。

研究の背景には、欧米では自閉症スペクトラムを持つ一部の人々が過激思想に染まり、暴力行為に及ぶという事件が報じられることが増えているという現実があります。
これまでの報道は、感情的な要素が強調される一方で、科学的な根拠に基づいた分析や理解が不足していることが指摘されてきました。
そこで研究チームは、自閉症と過激思想の関係を深く掘り下げるために、実際に過激な思想に関与した経験を持つ自閉症スペクトラムの人々の声を直接聞くことを選びました。

研究に参加したのは、カナダとアメリカに住む12名の男女です。
彼らは全員、自閉症スペクトラムであると診断されたか、あるいは自分自身でそのように認識している人々で、過去に極端な思想や過激主義に関わった経験を持っています。

インタビューはZoomや電話を通じて行われ、各インタビューは1時間から3時間にわたりました。
参加者はインタビューで、自身がどのようにして過激な思想に引き寄せられたのか、その過程で何が影響したのかについて詳細に語りました。

この研究の結果、3つの主要なテーマが浮かび上がりました。

第一に、「早期の傷」として、幼少期に経験したトラウマが彼らの後の行動に大きな影響を与えていることが分かりました。
参加者の多くは、幼少期に虐待や無視、暴力、または性的虐待といった深刻なトラウマを経験しており、それが彼らの世界観や社会に対する不信感を形成しました。
たとえば、ある参加者は幼少期に受けた暴行によって「自分は社会の外れ者だ」という感覚を強く持つようになり、その感覚が過激思想に引き寄せられる要因となったと語っています。

第二のテーマは、「発達の機会を逃す」というものです。
自閉症スペクトラムを持つ人々が成長する過程で、社会的に重要な発達の機会を逃してしまったことが、過激思想に引き寄せられる一因となっていることが明らかになりました。
参加者の多くは、幼少期から青年期にかけて、自己表現の機会や他者とのポジティブな交流の場を十分に得ることができず、自分自身を肯定的に捉えることが難しかったと述べています。
また、自閉症スペクトラムの診断が遅れたことで、必要な支援や理解を受けられず、それが彼らの孤立感や疎外感をさらに深めました。

第三のテーマは、「神経多様性に適合する場を見つける」というものです。
過激なグループは、参加者が社会で感じていた孤立感や不安を解消する場として機能していたことが分かりました。
これらのグループは、参加者の特性を受け入れ、彼らが持つ独自のスキルや興味を強調し、組織の中で活かすことを可能にしていました。
たとえば、ある参加者は、自分が持つ強い関心や徹底的なリサーチ能力が過激なグループで重宝され、そこで初めて自分が認められたと感じたと述べています。
また、過激なグループの中では、ルールや構造が明確であることが多く、それが自閉症スペクトラムを持つ人々にとって安心感を与える要素となっていました。

さらに、研究チームは、自閉症スペクトラムを持つ人々が過激思想に関わるのは、単に自閉症という特性だけが原因ではないことを強調しています。
彼らが過激思想に引き寄せられる背景には、幼少期のトラウマや社会からの疎外感、そしてそれらを解消しようとする中で見つけたコミュニティの存在が大きく影響しているのです。
つまり、過激思想への関与は、社会的な孤立感や疎外感を抱えている人々が、自己を肯定し、受け入れてくれる場所を求めた結果として生じているのです。

この研究はまた、過激思想に引き寄せられるリスクを減らすためには、社会が自閉症スペクトラムを持つ人々を包括的に受け入れ、彼らの特性やスキルを活かせる環境を作ることが重要であることを示唆しています。

研究者たちは、自閉症スペクトラムを持つ人々が社会で孤立せず、自分の特性を肯定的に受け入れることができるような支援体制の構築が必要であると提言しています。
また、彼らが過激思想に染まらないようにするためには、早期の診断や適切な支援が欠かせないとも指摘しています。

一方で、この研究にはいくつかの限界もあります。
参加者が自閉症スペクトラムであることを自認している場合が多く、その診断が必ずしも正式なものではない点が挙げられます。
また、参加者の多くが白人であり、アメリカやカナダに住む人々であるため、他の地域や人種の経験が反映されていない可能性もあります。
それでも、この研究は、自閉症スペクトラムと過激思想の関係を理解するための重要な一歩となるものであり、今後の研究や社会的支援の指針となることが期待されています。

この研究は、神経多様性を持つ人々が過激思想に関わるリスクを減らすために、社会が彼らをどのように支援し、包括的な環境を提供できるかを考える上で非常に重要な示唆を提供しています。
研究者たちは、過激主義に引き寄せられる前に、神経多様性を持つ人々が感じる孤立感や疎外感を解消するための取り組みが必要であると強調しています。

(出典:the journal Autism in Adulthood)(画像:たーとるうぃず)

この理屈には納得できるでしょう。

「神経多様性を持つ人々が過激思想に関わるリスクを減らすために、社会が彼らをどのように支援し、包括的な環境を提供できるかを考える」

「自閉症兵器」ヘイトグループに利用されやすい自閉症の人たち

(チャーリー)


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