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自閉症の人にとってTTRPGの社会的・心理的メリット。研究

time 2024/08/28

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症の人にとってTTRPGの社会的・心理的メリット。研究
  • TTRPGは自閉症を持つ人々の社会的交流をどのように改善するのか?
  • ゲーム内での役割演技が自己理解や自己表現にどのように寄与するのか?
  • TTRPGがもたらす社会的な孤立感の軽減は、長期的にはどのような影響を与えるのか?

テーブルトップ・ロールプレイングゲーム(TTRPG)が自閉スペクトラム症(ASD)を持つ成人にどのような社会的および心理的利益をもたらすかを探る研究が行われました。

イギリスのプリマス大学のグレイ・アサートン博士、エッジヒル大学のリース・ハサウェイ博士、そしてスウェーデンのダーラーナ大学のインゲラ・ヴィスリ博士らが共同で行ったものです。

とくに、この研究では、Dungeons & Dragons(D&D)というゲームが自閉症の人々に与える効果について調査しています。

自閉症は、発達障害であり、世界中で約100人に1人の子供が診断されると言われています。
自閉症の人々は、一般的に他者と違う形で世界を認識し、社会的なやりとりにおいて困難を感じることが多いです。そのため、孤独を感じやすく、友人関係や社会的ネットワークが限られがちです。

とくに、自閉症を持つ人々は、社会的な場面で自身の特性を隠す「マスキング」と呼ばれる行動を取ることが多く、それが精神的な負担となり、うつや不安、さらには自殺リスクの増加につながることがあります。

この研究の背景には、TTRPGが自閉症を持つ人々にとって、社会的な場でのやりとりをより自然に行える安全な空間を提供する可能性があるという仮説があります。
TTRPGは、ボードゲームの一種ですが、実際にはボードを使わずに、プレイヤーが架空の世界でキャラクターを演じることが特徴です。
各プレイヤーは独自のバックストーリーや個性を持つキャラクターを作成し、ゲームマスター(GM)が導く物語の中で、キャラクターとして冒険を進めていきます。
このゲームは、参加者全員が協力して物語を進めるため、チームワークやコミュニケーションが重要な要素となります。

研究では、8人の自閉症を持つ成人が参加し、2つのグループに分けられました。
それぞれのグループは、6週間にわたるオンライン形式のD&Dキャンペーンに参加しました。
キャンペーンは、事前に設定されたシナリオ「Waterdeep: Dragon Heist」を使用し、参加者はDiscordやRoll20などのオンラインプラットフォームを通じてゲームを進めました。
各セッションは2〜4時間にわたり、全体で6回のセッションが行われました。

ゲーム終了後、研究者は各参加者と個別に決まった質問をしながらも自由に話せるインタビューを行い、ゲーム内外での社会的なやりとりや、ゲームに対する感想などを尋ねました。
このインタビューでは、ゲームを通じて得られた経験が、日常生活における社会的交流にどのような影響を与えたかについても詳しく探られました。


インタビューの結果から、いくつかの重要なテーマが浮かび上がりました。

まず、参加者たちは一般的な社会生活の中で感じる「社会的な動機づけ」について語りました。

多くの参加者が、他者と関わりたいという願望を持ちながらも、現実世界では社会的なやりとりに困難を感じていることが明らかになりました。
たとえば、日常会話の中で適切なタイミングを見計らって発言するのが難しく、しばしば話題についていけないと感じることが多いと報告されました。
こうした経験は、しばしば過去の社会的な拒絶や関係の喪失に起因しており、それがトラウマとなっているケースも少なくありません。

一方で、TTRPGにおける社会的なやりとりは、現実のものよりも成功しやすく、参加者にとってより安心できるものであることがわかりました。
TTRPGは、協力的なゲームであり、競争や対立が少ないため、プレイヤー同士が協力して共通の目標を達成することが求められます。
また、ゲーム内ではキャラクターを通じて自分とは異なる役割を演じることができるため、普段の自分とは違った形で他者と関わることが可能です。

このため、ゲーム内でのやりとりは、現実の社会的なやりとりに比べて、ストレスが少なく、成功体験を得やすい環境であることが示されました。

さらに、参加者たちはTTRPGを通じて友人関係を築くことができ、これが社会的な孤立感を軽減するのに役立っていることも明らかになりました。

ゲームを通じて知り合った人々との関係は、現実世界での友人関係と同様に重要なものであり、参加者にとって大きな支えとなっていました。
とくに、自閉症を持つ他のプレイヤーとの間では、共通の理解や共感が生まれやすく、これが一層の安心感をもたらしていました。

最後に、研究では「ブリード」と呼ばれる現象(the “bleed” phenomenon)についても言及されています。
ブリードとは、ゲーム内でのキャラクターと現実の自分自身が心理的に重なり合う現象のことです。
たとえば、参加者たちは、自分自身の特性がキャラクターに反映されたり、逆にキャラクターの特性が現実の自分に影響を与えると感じることがありました。
このようなブリード現象は、ゲームを通じて自己理解を深めたり、新しい視点を得るための一助となり得ることが示唆されています。

この研究は、TTRPGが自閉症を持つ人々にとって、社会的な交流の場としてだけでなく、自己肯定感を高め、自己表現を促進する手段としても有効であることを示しています。
さらに、TTRPGは、自閉症を持つ人々が現実の社会的なやりとりで感じる困難を軽減し、より自然な形で他者と関わることを可能にするための新たなツールとして期待されています。

今後の研究では、TTRPGの長期的な効果や、他の自閉症を持つ人々に対する具体的な影響についてさらに検討される必要がありますが、この研究はTTRPGが自閉症を持つ人々にとってポジティブな影響を与える可能性が高いことを示す重要な第一歩となるでしょう。

(出典:Autism)(画像:たーとるうぃず)

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(チャーリー)


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