- 自閉スペクトラム症の脳の成長が社会的スキルに与える影響はどのようなものか？
- 重度と軽度の自閉スペクトラム症ではどのように脳の発達が異なるのか？
- 自閉スペクトラム症の早期診断や治療法はどのように進展することが期待されるのか？
この研究は、米カリフォルニア大学サンディエゴ校のチームが行ったもので、自閉スペクトラム症（ASD）の子どもたちの社会的な問題が、どのように脳の発達と関係しているのかを調べました。
とくに、ASDの子どもたちがどのようにして社会的なスキルを発達させにくいのか、その理由を探るために、胎児期の脳の成長に注目しました。
研究チームは、ASDの子ども10人と健常な子ども6人の血液を採取し、そこから細胞を取り出しました。
その細胞を使って、脳の一部を模倣した「脳のミニチュアモデル」（BCOと呼ばれるもの）を作り、子どもたちの脳がどのように発達するのかを実験室で再現しました。
このモデルを使って、脳の成長がASDの症状にどのように影響しているのかを詳しく調べたのです。
結果は驚くべきものでした。
ASDの子どもたちの脳モデルは、健常な子どもたちのものよりもはるかに大きく成長し、その成長速度も速かったのです。
具体的には、ASDの子どもたちの脳モデルは39%から41%も大きく、成長速度は健常児の約3倍に達しました。
この大きな脳モデルを持つ子どもたちは、社会的なスキルが低く、言葉の発達やIQも低い傾向が見られました。
さらに、この研究では、ASDの子どもたちを二つのグループに分けて分析しました。
一つは、非常に大きな脳モデルを持つ「重度ASD」のグループで、社会的な問題が深刻で、言葉や認知の発達が大幅に遅れている子どもたちです。
もう一つは、脳モデルの成長が比較的穏やかな「軽度ASD」のグループで、社会的な問題が少し軽く、言葉や認知機能もそれほど悪くない子どもたちです。
この二つのグループに分けることで、ASDの重症度が脳の発達にどのように影響しているかがより明確になりました。
重度ASDのグループでは、脳の特定の領域、特に社会的な行動や言語に関わる領域の成長が異常であることが確認され、社会的スキルや言語能力が大幅に低下していることが分かりました。
一方、軽度ASDのグループでは、脳の成長が比較的正常に近く、社会的な問題や言語発達の遅れも軽度にとどまっていることが明らかになりました。
この発見は、ASDの異なるタイプに対して、異なる治療アプローチが必要であることを示唆しており、重度のASDには集中的な支援が、軽度のASDには適応的な支援が有効である可能性を示しています。
この研究成果は、ASDの早期診断や治療法の開発に向けた大きな一歩となるでしょう。
とくに、胎児期の脳発達に基づいた治療法が進展すれば、ASDの重症化を防ぎ、子どもたちがより良い生活を送れるようになる可能性があります。
研究チームは今後も研究を続け、ASDの原因解明と治療法の開発に取り組んでいく予定です。
このような研究は、ASDに対する理解を深めるだけでなく、ASDの子どもたちやその家族にとっても、大きな希望となるでしょう。
研究の進展によって、ASDに対するより効果的な支援が提供される日が近づいているかもしれません。
（出典：the journal Molecular Autism）（画像：たーとるうぃず）
脳の大きさとの関連はこれまでにも指摘されています。
かかえる困難を減らし、過ごしやすくなる早期療育につながることを期待します。
（チャーリー）
