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「自閉症は治せる」と英新聞が掲載した研究の大きな問題点

time 2024/07/26

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

「自閉症は治せる」と英新聞が掲載した研究の大きな問題点
  • 自閉症は本当に「治す」ことができるのか?
  • どのような療育方法が自閉症の人々にとって最も安全で効果的なのか?
  • 自閉症に対する社会の理解をどう深めれば、神経多様性を尊重する環境を作れるのか?

先週末、英国新聞紙に「自閉症は治せる」という研究についての記事が掲載され、ネット上で大きな反発を引き起こしました。この研究はアメリカの双子の少女を対象にしたもので、『Journal of Personalized Medicine』に先月発表されたものです。

この研究は、たった一つの2年間にわたるケーススタディであり、発表直後に英国自閉症協会などの機関から、その信頼性に疑問が投げかけられました。
広範なサンプルサイズがなく、明確な方法論も欠けており、双子の結果すら一致しないため、どのような「結論」も信頼性が低いとされています。

研究に含まれる複数の療育(結果を曖昧にする要因の一つ)も懸念を引き起こしています。
とくに、1960年代にオレ・イヴァー・ロヴァスが開発した応用行動分析(ABA)療法は問題視されています。
ロヴァスは、この療法で自閉症の人々を「正常」にできると考えていましたが、ABA治療に携わるセラピストは、子供たちの「問題行動」を抑えるために叩いたり、怒鳴ったり、電気ショックを与えたりすることがありました。

何年も経った今でも、ABAは自閉症コミュニティ内で非常に議論の的となっています。

とくにアメリカでは、多くの家族が保険会社から提供される唯一の「治療法」としてABAを受けていますが、他方で虐待や不適切な扱いを受けたという恐ろしい体験を語る人々もいます。
さらに、ABAのような療法がPTSDの症状を増加させる可能性があるという証拠が増えており、「正義と無害性の原則」に反する非倫理的な療法であるとされています。

また、この研究に登場する双子が、幼少期から自閉症の特性を隠す「マスキング」を教えられるリスクも指摘されています。

マスキングは、自分の自閉症の特性を抑えて自閉症でない人のように見せる戦略で、差別から自分を守るために行われますが、長期的には燃え尽き症候群、低い自尊心、増大するストレス、自殺念慮と関連することが研究で示されています。

自閉症の人は自閉症でない人よりも自殺する確率が7倍も高いという懸念すべき問題があります。

自閉症を治すための絶望的な探求は新しいものではなく、めずらしくもありません。
自閉症の人たちを「正常な機能」に戻すために、長年「治療法」が探し続けられてきました。

しかし、神経多様性運動の核心的な原則の一つは、この探求を拒絶することです。

自閉症の人を自閉症でない人に「治す」ことを目指すのは、「病理学的パラダイム」に基づく目標であると、心理学教授で自閉症のニック・ウォーカーは述べています。

このパラダイムには二つの前提があります。
まず、人間の脳と心の配置と機能には一つの「正しい」「正常な」「健康的な」方法があり、または一つの相対的に狭い「正常な」範囲があるということ。
次に、あなたの神経学的な配置と機能がこの「正常」の基準から大きく逸脱している場合、それは「何かが間違っている」ということです。

このパラダイムを完全に拒絶する神経多様性運動は、人間の神経認知機能には単一の「正しい」ものは存在しないと主張しています。
「逆転」や自閉症の人を病理学的に捉えることは、社会が作り上げた価値判断であり、それを変える力は私たちにあるとしています。

この病理学的パラダイムの継続的な支配が、今回の研究のようなものを生み出します。

神経多様性運動は、代わりに自閉症のニーズに対応するための環境を整え、アクセス可能性と包括性を高め、システムの障壁が自閉症の人々を社会生活から排除しないようにすることに焦点を当てるよう求めています。

自閉症の人がそのままで成功できるように支援し、必要に応じてスキルを身につける機会を提供することを求めています。

この記事のセンセーショナルな内容は、何年にもわたって自閉症の人々を非人間化してきた有害な物語に拍車をかけ、自閉症の人々が「治療」を求めていないという声を無視しています。

自閉症の人々が繁栄するとはどういうことか、自閉症コミュニティのさまざまなメンバーが最も望む研究は何か、自閉症コミュニティが周りにいることでどのように生活が改善されるか、などの研究のポジティブな貢献を、この研究は否定し、私たちを後退させます。

自閉症の治療法はありません。
今こそ自閉症の人とその家族を支援する時です。

(出典:英huck)(画像:たーとるうぃず)

『Journal of Personalized Medicine』に掲載された問題の研究は、

「2人の双子の女の子に生後20ヶ月から2年間、環境の改善、特定の栄養療法、行動療法(ABA)などを行ったところ、社会的行動や言語能力の著しい向上が見られた」

というものでした。

研究の対象となったのはたったの2人だけ。
そして、「栄養療法」の中身は、グルタミン酸、グルテン、カゼインを含まない食事を心がけ、人工着色料や加工食品を避け、糖分を控える。ホメオパシーの治療薬を利用など。
自閉症を「治す」と謳うエセ医療の典型例で、これを新聞が肯定的に掲載するのはどうかと思うものです。

(なので、たーとるうぃずでも取り上げませんでした)

なお、もちろん「療育」はかかえる困難を減らしますし、大きくなるうちに自閉症の診断基準を満たさなくなることもあります。

自閉症幼児の4割が学齢期には診断基準を満たさなくなった。研究

(チャーリー)


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