- 自閉症の診断が自己理解にどのような影響を与えるのか?
- 家族や友人の反応は診断後のサポートにどのように関わるのか?
- 社会が自閉症についてより理解し、受け入れるためには何が必要か?
アルテイシアは昔から人々を理解するのに苦労してきました。彼女は他人の行動を観察し、それを真似しようとしましたが、なかなかうまくいきませんでした。
13歳の時に心理学者に会い始めて初めて「自閉症」という言葉を知りました。
「自閉症については何も知らなかったけれど、興味が湧きました」
アルテイシアは社会的な常識、コミュニケーションの方法、共感の表現などについて独自の理解を持っています。
しかし、「自閉症」について学ぶことは彼女にとって大きな発見でした。
「自分自身について多くのことが説明できました。
だから、診断を受けることについて両親に話しました。
両親は懐疑的でした」
両親はラベルを付ける必要性や、それが大きな違いを生むのか疑問に思いました。
しかし、アルテイシアは確かめたかったのです。
正式に自閉症と診断されたことで、彼女は自分が必要としていた答えを得ることができました。
「診断のおかげで、両親は自分自身や私をサポートする方法についてもっと理解するようになりました。
とくに父とはとても仲が良くて、お互いに似ているからでしょう。
私たち二人とも特定のものに強く興味を持っています」
診断は大きな安堵でした。アルテイシアは自分の自閉症を隠し、「普通」に見えるようにするために長い間演じてきて、それは非常に疲れるものでした。
現在15歳のアルテイシアは、診断のおかげで不安を管理しやすくなり、自分自身についての明確な認識を持つことができたと言います。
「自閉症を恥ずかしいとは思っていません。
今は、話す時に目を合わせることや、もっと社交的になることを少しずつ学んでいます」
アルテイシアは現在、自閉症についての認識を高め、特に女性における自閉症の理解を深めたいと考えています。
アルテイシアと同じように、ルイも10代前半で自閉症と診断されました。
現在19歳のルイは、14歳まで診断されなかった理由は、「典型的な」自閉症のプロフィールに当てはまらなかったからだと考えています。
「4歳から6歳の白人の男の子で電車に夢中でなければ、診断されることはなかったでしょう」
ルイが不安やうつの症状を示し始めた時、学校は教室でのサポートを期待して、彼らの両親に診断を求めるよう勧めました。
ルイは自分の自閉症の診断を受けた時の家族の反応を「混乱した変な時期」と表現しました。
「両親は、遠い親戚の三従兄弟も自閉症だからそんなに悪くないと言っていました」
そのぎこちなさにもかかわらず、両親はすぐにサポートし、自閉症の子供を持つことが何を意味するのか理解しようとしました。
「みんなでこの新しいことを学ぼうとして大混乱でしたが、診断を受けることは重要な第一歩でした。
それで全てが理解できました」
最初、ルイは仲間に自閉症の診断を明かしませんでした。
偏見をもたれたり、異なる扱いを受けるのが怖かったからです。
「クイアでノンバイナリーで自閉症であることが何を意味するのか、先生や同級生に教えなければならなくなりました。
それは大きなプレッシャーでした」
ルイは、神経多様性についての教育が改善されるためには、とくに教師が生徒を理解しサポートするために重要だと考えています。
「人々は自閉症を否定的な特性だと考えていて、それに気づいていないのです。
『自閉症には見えないね』と言われることがあります。
でも、自閉症に見えるってどういうことですか?」
最終的に、ルイは自分の自閉症の診断が自分を形作る一部に過ぎないことを理解してほしいと願っています。
「診断を受ける前は、人間の殻をかぶっているようでした。
とても苦労しましたし、診断を受けなかったらここにいなかったかもしれないと心配しています。
多くの人が苦しんでいて、社会としてもっと思いやりを持ち、理解することが大切です」
心理学者で自閉症の擁護者であるジャック・デン・ホウティング博士は、自閉症の人にとって最も重要な要素は、診断後の家族や友人の反応だと言います。
デン・ホウティング博士は、子供や10代の若者が早期に診断された場合、親の対応が子供の未来に大きな影響を与え、全く異なる結果をもたらす可能性があると述べています。
「幼い子供が自閉症と特定されてから、その子供をできるかぎり自閉症でないようにしようとするなら、子供は早期に診断されない方が良いかもしれません。
そうではなく、親がその子供のニーズにあわせて肯定的で支援的な方法で一緒に学ぶのであれば、早期診断は絶対にメリットがあります」
これを実現するためには、社会が自閉症であることの真の意味と、それをどのように受け入れるべきかについてもっと教育を受ける必要があります。
親が、他の自閉症の人々と会い、自閉症コミュニティの一員になり、自閉症のロールモデルを持つことが含まれます。
「親がその子供を最良の自閉症の子供、そして最良の自閉症の大人になるようにサポートすることがとても重要です。
最良の自閉症でないふりをする人になることを目指してはいけません」
子供たちを本当の自分としてサポートしないことは、彼らの精神的健康やアイデンティティに影響を与える可能性があります。
しかし、進展も見られています。
「親たちが自閉症の大人に目を向け、自分たちが今育てている子供だった人々から学ぶことが増えています」
では、理想的な未来とはどのようなものでしょうか?
「私たち自閉症の人々をそのままの姿で認識し、私たちが自分自身であり、自由に生き、そして自閉症の人として繁栄できる世界です」
豪グリフィス大学の自閉症センター・オブ・エクセレンスの教授であるドーン・アダムス博士は、親が自閉症の子供を神経多様性を肯定する視点で理解する手助けをするための世界初のプロジェクトを進めています。
自閉症に関する研究者と実体験を持つ自閉症の人々によって共同開発されたこのプログラムが成功すれば、親が自閉症の子供をより良く理解し、自閉症と診断されてからのサポートができるうようになります。
「これまで、人々に証拠に基づくサポートを提供する有益な方法を示すことができませんでしたが、これが初めてのものになります」
アダムス博士は、「誰もが少しは自閉症スペクトラム上にいる」という考えが不正確であり、非常に有害である可能性があると述べています。
「人々が自閉症について理解していないのは、自閉症は多くの症状が一緒に現れるということです。
例えば、ルーティンを好むかもしれませんが、それが社会的コミュニケーションや感覚経験の違いと組み合わさっているわけではありません。
それがあなたを『少し自閉症』にするわけではありません。
自閉症とは、さまざまな考え方、感じ方、存在の仕方の集合体であり、それが一緒になって誰かを自閉症にするのです」
アダムス博士は、人々が包摂的であり偏見を減らしていると思っていても、それは自閉症の人にとっては虚しさを感じさせる可能性があると言いました。
「それぞれの人が異なる考え方や存在の仕方を持っていることに心を開くことが大切です。
それは祝うべきことであり、病理学的に扱うべきではありません」
(出典:豪abc)(画像:たーとるうぃず)
違って当たり前で、違うから良いんです。
自閉症の人に限りません。
一方で、それにより困難をかかえているのであれば、適切な支援が行われることが見過ごされてはなりません。
(チャーリー)