- 自閉症の子どもは虐待されるリスクが高いのですか?
- 自閉症の子どもが虐待を受ける割合はどのくらいですか?
- 自閉症の子どもが虐待を受けた場合、適切な支援を受けられるのでしょうか?
児童虐待とそれに対するケアのあり方は複雑な問題です。
そして、そこに自閉症が加わると、その複雑さはさらに増します。
自閉症の子ども(および大人)が虐待を経験する割合に関する統計は注目に値します。
成人女性が子ども時代の経験を振り返る研究では、自閉症特性と逆境体験との間に驚くべき一致が見られました。
研究に参加した1,077人のの中で、自閉症特性が高い人の40%が性的虐待を、23%が精神的または身体的虐待を受けたと報告しており、10%がPTSDの基準を満たしていました(Roberts et al., 2015)。
さらに、社会機関の記録を調査した研究では、自閉症と診断された子どもは、一般の子どもと比べて虐待のリスクが約2倍であることが分かりました(McDonnell et al., 2019)。
知的障害のない子どもは身体的虐待を受けやすく、自閉症に加えて知的障害がある子どもはネグレクトされやすいことが示されました。
また、同じ研究によると、「かんしゃく」、攻撃性、多動性は自閉症の人、自閉症でない人の両方で虐待と関連がありましたが、その正確な関係を特定するのは難しいとされています。
子どもが虐待を経験したり、その他の必要が満たされなかったり、暴力を経験すると、しばしばそれに対する反応として問題行動を示すことがあります。
別の研究では、自閉症の子どもに対する虐待の報告は神経典型の子どもの2倍以上でしたが、自閉症の子どもを含む家庭では、その報告がさらなる虐待調査に発展する可能性が3分の1低いことが分かりました(Fisher et al., 2019)。
それにもかかわらず、虐待の発生率は定型発達の子どもと自閉症の子どもでほぼ同じでした。
- 実際には同じ割合 自閉症の子の虐待率 = 自閉症でない子の虐待率
- しかし、 自閉症の子 = 自閉症でない子 ✕ 2(通報)✕ 1/3(さらなる調査)= 自閉症でない子 の 2/3。
- つまり、自閉症の子の虐待の1/3は見過ごされている可能性
自閉症と虐待の関連について考えるとき、行動上の課題が虐待率に影響していると考える人もいますが、この点を裏付ける証拠はほとんどありません。
もう一つの説明としては、世代間でのトラウマの影響が考えられます。
自閉症は家族内で遺伝することが多く、自閉症の子どもの親も虐待を経験している可能性が高いのです。
自閉症の子どもとその親の逆境体験を調査した研究では、両者ともに平均して有意に多くの逆境体験を報告していました。
同様に、527人の自閉症の子どもを対象とした研究では、PTSDの基準を満たす親が虐待の重要なリスク要因であることが示されました(McDonnell et al., 2022)。
ただし、大多数の自閉症の親が逆境体験にかかわらず、子どもを虐待することはありません。
自閉症の子どもを持つ多くの親(自閉症であっても定型発達であっても)は、素晴らしい親です。
アメリカのほとんどの地域では、児童虐待の調査と介入は次のように行われます。
まず、児童虐待ホットラインに通報が行われます。
通報が「受理」され、さらなる行動が必要と判断された場合、州の児童保護機関が調査を開始します。
これには、子どもやその家族、生活に関わる他の大人へのインタビュー、生活環境の調査などが含まれます。
調査が完了すると、報告は根拠があるとされるか、根拠がないとされます。
根拠がない場合は、それ以上の行動は取られません。
根拠がある場合は、家族に対して定期的なケースワーカーとの面会、親教育クラス、薬物やアルコール治療などの家族維持サービスが提供されるか、義務付けられます。
子どもが安全に家庭に留まることができないと判断された場合、親戚、里親、グループホーム、または入所施設に一時的に預けられることがあります。
このシステムは、自閉症や発達障害などの有無に関係なく、すべての人にとって過酷なものです。
各家庭の状況はそれぞれ異なりますが、自閉症の子どもが児童保護サービスに接触する際に生じる特に複雑な状況に対応する準備が整っていない場合があります。
自閉症の子どもをスケープゴートにする家族や文化的な物語、自閉症への過剰な強調は、虐待を過小評価し、介入の欠如や不適切な介入を招く可能性があります。
自閉症の子どもが定型発達の子どもと同じような共感能力を持たないという誤った認識や、コミュニケーションの障壁により、自己主張が極めて難しいシステムの中で、これらの子どもたちが自分自身を擁護することが特に困難になります。
さらに、世代間のトラウマや神経多様な家族のニーズが考慮されない場合、提供されるサービスが適切な課題に対応せず、逆に害を与える可能性があります。
感覚過敏、メルトダウン、シャットダウン、そして神経典型の脳の設計図に基づいた世界に対処することは、誰にとってもストレスとなります。
しっかりとした理解がなければ、ケースワーカーは適切なサポートを提供する機会を逃すことになります。
現在、児童福祉システム内には、自閉症に特化した取り組みがほとんどありません。
神経多様な子どもたちにサービスを提供するケアシステムと、児童福祉システム全体での教育は価値のある取り組みです。
同様に、神経多様性を肯定する家族向けのリソースは、ストレスを軽減し、子どもたちを力づけ、親が自分自身と子どものニーズを理解するのに役立ち、虐待を防ぐ可能性があります。
すべての子どもに、優しさと安全を享受する権利があります。
(出典:米Psychology Today)(画像:たーとるうぃず)
虐待かもと思った時などに、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」(こども家庭庁)
米国での研究調査結果ですが、そんな悲しい事実があるのですね。
ちょっと想像するだけで、涙が出そうになります。
見過ごされないよう、守られるように、心から願います。
(チャーリー)