- 知的障害や精神的な問題を抱える人が投票できないのはなぜですか?
- 後見制度下にある人が投票権を取り戻すにはどうすればいいですか?
- どのEU加盟国では後見制度下の知的障害者が投票権を持っていますか?
約40万人の知的障害を持つヨーロッパの人々が、後見制度のために欧州議会の選挙で投票することができません。
「今年は投票したい」
そう、スフィアン・エル・アムラニは言います。
スフィアンは2015年に財務管理を母親に任せたため、法的後見制度下にあり、投票が許されていません。
41歳のベルギー人であるスフィアンは、知的障害や精神的な問題を抱え、法的後見人を必要とするために来月の選挙で投票できない約40万人の成人EU市民の一人です。
スフィアンはNGO「インクルージョン・ヨーロッパ」でアクセシビリティの専門家として働いています。
知的障害があるということは、学習や意思決定、日常生活の維持にサポートが必要であることを意味します。
家族やソーシャルワーカー、弁護士が後見人として支援することがあります。
インクルージョン・ヨーロッパのディレクターであるミラン・シュヴェレパは、法的能力の概念自体は必ずしも悪いものではないと述べています。
例えば、脆弱な人々を詐欺から守ることができます。
しかし、後見制度のモデルは時代遅れであり、人々の法的権利を大きく制限する可能性があると言います。
その影響は国によって異なります。
インクルージョン・ヨーロッパの昨年の調査によると、エストニア、ブルガリア、キプロス、ポーランドでは、後見制度下にある知的障害者には投票権がまったく与えられていません。
例えばブルガリアでは、この規則は1949年に導入された「人と家族法」に基づいています。
EUの27加盟国のうち15カ国(ドイツ、イタリア、フランスを含む)では、後見制度下にある知的障害者に完全な投票権が与えられています。
しかし、それらの国でも候補者として立候補することは制限されることがあります。
これまでに進展はありました。
インクルージョン・ヨーロッパによると、2019年の前回のEU選挙時には約80万人の知的障害者が投票から排除されていましたが、その数は半減しました。
それでも、マルタの人口に匹敵する数の人々がまだ投票権を持っていません。
欧州人権裁判所は、投票権に対する各国の制限を何度か支持しています。
2010年に精神的な問題を抱えるハンガリー人が投票権を取り戻すために法的措置を取った際、裁判所は「自分の決定の結果を評価し、意識的かつ慎重な決定を下せる市民だけが公共の事務に参加すべきだ」と判断しました。
この判決は、2021年に2人のデンマーク人が投票権を取り戻そうとした際にも再確認されました。
この排除は、障害を持つ人々に「二級市民」のように感じさせると、ヨーロッパ障害フォーラムのアレハンドロ・モレドは言います。
そして、これは「他の有権者は周りの人やメディアに影響を受けたり操作されたりしない」という誤った前提に基づいていると彼は述べています。
スフィアンの国、ベルギーは、投票権を制限する8つのEU加盟国の一つです。
ベルギーの知的障害者のための組織であるインクルージョンABSLのアドボカシーマネージャー、トーマス・ダブーによると、後見制度が設定されると、投票権については裁判官が判断しなければならず、その際に結婚や住居の選択など特定の行為を行う能力についても裁定されます。
ダブーによれば、問題は、裁判官が通常、その人とその障害を適切に評価せず、「チェックリスト全体を確認するだけ」であることです。
そのため、裁判官は「過剰に保護する」傾向があり、それがスフィアンに起こったことだと考えられます。
スフィアンのケースにはもう一つの疑念があります。
2015年にスフィアンが母親に財務管理を任せようとした際、裁判官がスフィアンについて検討したとき、裁判官に提示された潜在的な制限のリストには投票権が含まれていませんでした。
「裁判官は常に、保護が必要と考える他の行為を命令に追加する可能性を持っています」
とダブーは言います。
スフィアンは、ベルギーでほとんどの公共サービスへのポータルとして機能する地方政府を通じて投票権を取り戻そうとしています。
「メールしたところ、法的後見制度下にあるため、今年もしくは近い将来に投票用紙を受け取ることはないと言われました」
投票権を取り戻すことは非常に困難であるとダブーは言います。
「裁判官の保護措置を変更するには、その人の状況が変わったことを示す必要があります」
さらに、家族は高額な法的費用を支払わなければなりません。
「人々は自分の権利のために戦うことを諦めてしまいます」
(出典:英The Parliament)(画像:たーとるうぃず)
ヨーロッパというと、高い人権意識というイメージがあります。
一つの国ではないEUとなれば、こうして国によって異なったり、はたまた「高い人権意識」があるからこそ制限や問題も起きるのでしょう。
日本では、「後見人」は選挙権については関与できません。
また、知的障害があっても、選挙権に制限はありません。
「意思決定できない」自閉症や知的障害の人の研究参加(と選挙)
(チャーリー)