- GABAの活動を高めることで、自閉症のある人とない人で目の網膜の反応が異なる方法で調節できるのか?
- アルバクロフェンによるGABAの調節が、自閉症的特徴と網膜活動の関係にどのような影響を与えるのか?
- GABA経路の違いが自閉症の神経的多様性にどのような影響を持っている可能性があるのか?
英キングス・カレッジ・ロンドンの研究者たちは、脳内の化学物質であるGABAが、自閉症のある人とない人で、目の網膜の活動を異なる方法で調節することを明らかにしました。
自閉症の人は、目の網膜で単一の光のフラッシュに対する反応が大きいことがわかっていますが、この新しい研究により、GABAの活動を高めることで、この反応を減らすことができることが示されました。
この研究は『Neuroscience』に掲載されました。
研究では、GABA薬剤のアルバクロフェンを一回投与した後に網膜活動が大きく変化した人は、より多くの自閉症的特徴を報告したことも示されています。
これは、GABAが感覚処理に及ぼす影響が、自閉症の人の経験するより複雑な振る舞いの中心にある可能性を示唆しています。
GABA(ガンマ-アミノ酪酸)は、中枢神経系の神経細胞の活動を調節する脳内の化学伝達物質です。
研究により、自閉症のある人とない人の間でGABA経路に違いがあることが示唆されています。
最近、キングス・カレッジ・ロンドンの研究者たちは、GABAタイプB受容体をオンにする薬剤アルバクロフェンを使用し、自閉症のある人とない人の視覚や聴覚情報を処理する脳の領域の活動を変えて、より似たような処理をするようにすることができることを示しました。
今回の新しい研究は、GABAシステムに影響を与える薬剤を使用することで、自閉症のある人の網膜の活動に影響を与え、過活動を減少させて、自閉症でない人の光への反応とより似たものにできることを初めて示しました。
この研究は、GABAが自閉症での感覚処理にどのように影響するかをより正確に理解しようとする既存の研究を基にしています。
自閉症では、中枢神経系におけるGABAの作用が異なることを見つけています。
そして、研究に参加した人をみると、自閉症的特性にそれは関連していました。
つまり、GABA経路の違いが、自閉症の神経的多様性の根底にある可能性が少なくとも部分的にあることを意味していると考えられます。
この新しい研究では、視覚刺激への網膜反応を測定するために携帯型デバイスが使用されました。
視覚刺激は、単一の光のフラッシュ、ちらつく光、または単一の赤い光のフラッシュでした。
61人が実験に参加者しました。
自閉症スペクトラム障害の診断を受けた22人と、診断を受けていない39人です。
研究者は、GABAのレベルを調整するために薬剤アルバクロフェンを使用しました。
これは15mgと30mgの2つの異なる用量で使用され、参加者の一部はアルバクロフェンを服用しない比較対象のグループとなりました。
実験の結果、単一の白いフラッシュにさらされたとき、自閉症のある人では自閉症のない人よりも網膜(a波活動)の反応が大きかったことを示しました。
アルバクロフェンを服用した参加者では、自閉症のある参加者の網膜活動は減少しましたが、自閉症のない参加者では増加しました。
研究者は、参加者の網膜反応がアルバクロフェンによってどの程度変化したかを調べました。
そして、一般的な自閉症特性の尺度を使用して、自閉症特性が多いほど、自閉症のある参加者とない参加者の両方で網膜反応に大きな変化が見られたことを発見しました。
アルバクロフェンを使用してGABAを調節することにより、この脳化学物質が感覚処理にどのように影響するかについて、より明確にわかりました。
GABAにより、自閉症特性の個人差や、療育介入によるメリットを予測できるツールの開発につなげられるかもしれません。
(出典:英キングス・カレッジ・ロンドン)(画像:たーとるうぃず)
自閉症の人たちについては、「世界を別のかたちで見ている」ようなことが言われてきましたが、比喩ではなく本当にそうかもしれないという研究結果です。
かかえる困難を減らすことにつながっていってほしいと願います。
(チャーリー)