- 他人の感情に過度に共感しすぎている場合、生活にどのような影響が出る可能性があるか?
- 自閉症の人たちは、共感が不足しているとされることがあるが、実際にはどのような状況があるのか?
- ハイパーエンパシーを持つ人の特徴として挙げられるものは、具体的にどのような点があるか?
私たちは「共感」、つまり他人の感情に寄り添う能力が自然と自分に備わっていると考えがちです。
この能力により、他人に優しくなれます。
なぜなら、他人の感じていることを理解できるとき、私たちはその人の最善の利益のために行動しやすくなり、意図的に彼らを傷つけることが少なくなるからです。
しかし、ときには感じる共感の量が多すぎて、生活に影響をもたらすこともあります。
自閉症は、人との関わりに関する多くの特徴を持っているとよく言われます。
なかでも、共感が不足しているという話もあります。
しかし、これは必ずしも正しいわけではありません。
実際には、自閉症の人たちの中には共感が低い人もいれば、「ハイパーエンパシー(過剰な共感)」つまり共感が強すぎる人もいます。
「共感もスペクトラムであり、多くの自閉症のある人たちは平均よりも高い、または低い共感を持っています」
そう、エイミー・マーシャル博士は説明しています。
ハイパーエンパシーは、すでに複雑な自閉症体験にさらに加わるものです。
ハイパーエンパシーは、他人の感情に対して過度に共感しすぎる状態を指します。
他人が経験していることを強く感じすぎるために、遮断することが難しく、ハイパーエンパシーを持つ人は、他人と一緒にいるだけで定期的に疲れたり消耗したりすることがあります。
ハイパーエンパシーの兆候には以下のようなものがあります。
- 話さなくてもその人の気持ちがわかる
- 他人が体験している感情を深く感じ取る(とくに自分が経験したことのないことを話されたとき)
- 人間関係や「空気」を、説明されなくても理解する
- 誰かに自分の感情について話されると圧倒される
- 不安定な愛着
- 自分のニーズが他人のニーズよりも重要でないと感じるため、常に「YES」と言う
- 他人との身体的接触に圧倒される
自閉症のある人たちは、ある特性が強く、他の特性が弱いことが一般的です。
「自閉症のある人たちは『突出した』スキルセットを持ちがちで、多くの異なることに対して、平均よりもはるかに多かったり少なかったりする傾向があります」
そう、マーシャル博士は言います。
科学的に証明されているように、自閉症のある人たちは平均よりも共感が多かったり少なかったりするかもしれませんが、共感と自閉症に関してよく思われていることは、「共感しない」というものです。
私は46歳で自閉症と診断されるまで、自分は過剰に共感するため、自分が自閉症である可能性はないと何十年も考えていました。
しかし近年、自閉症における共感に関する以前の研究が再評価されるにつれて、これらの研究が「共感」をどのように考えているかについて一貫性がないことがわかりました。
あるメタ分析研究では、
「自閉症と共感に関する111の論文で、31の独特な共感の概念的解釈が見つかり、12の異なる基準があった」
と指摘されました。
これらの異なる定義が研究の結果に影響を与え、それにより、さらなる研究が必要になっていると指摘されています。
また、ハイパーエンパシーは「トラウマ」によって引き起こされることがあるとマーシャル博士は説明しています。
私は診断を受けるまで、人生で何度も虐待的な状況にあいました。
とくに性的暴力に関することが、自閉症のある人たちにとって定型発達の人たちよりも不釣り合いに高いことを、自閉症が説明するのに役立つとは気づきませんでした。
マーシャル博士はこう言います。
「私が虐待を受けたとすれば、私は彼らが害を及ぼす可能性があるときを予測するために、その人の感情と過度に合わせようとするかもしれません。
自閉症のある人たちは、自閉症の特性を示すためにしばしば虐待され、自閉症の子どもたちに対する多くの伝統的な『治療』は虐待的であり、トラウマを引き起こします。
これにより、自閉症のある人たちが保護的な反応としてハイパーエンパシーを発達させる可能性があります」
自閉症におけるハイパーエンパシーは、自閉症の人たちは定型発達の人たちよりも感情を口に出すことが難しいため、とくに難しいものになります。
これは、アレクシサイミア(失感情症:自分の感情を認識し説明することが困難)に加えて、感情は口頭で語られなければ理解されないという定型発達の人の考えがあるためです。
それは、自閉症のある人にとっては、感情の山を経験していても、無関心で動じていないかのように見られることを意味します。
私の経験では、私が書いた詩にパートナーが驚いたことが数え切れないほどあります。
彼らは、私が私たちの関係を大事にしていないと思ったり、私が相手に対して感情を持っていないと思っていたりしました。
なぜなら、私が表現することが少なかったからです。
自閉症と診断されるまで、私は感情を深く感じるものの、それを言葉にすることができない事実にどう対処していいかわかりませんでした。
書いておけば、読み上げることはできたのですが。
自閉症であり、さらにハイパーエンパシーを感じていることに気づいたら、それをどのように扱うか疑問に思うのは自然なことです。
私は次の二つのことが重要だと理解してから、関係する人たちに、より私が理解されるようになったと感じました。
第一に、自分のエネルギーがないために対応するのが難しい、または見知らぬ人との身体的接触によって疲れることがある場合には、境界を設定し、それらを伝える方法を学びましょう。
身近な人たちに対しては、特定の行為がなぜあなたにとって難しいかを、書いて説明することから始めましょう。
マーシャル博士は「あなたがどのようにコミュニケーションを取るかを信頼する人たちに伝えること」を推奨しています。
「境界は他人の行動をコントロールするために設定されるのではなく、他人にあなたの個人的な限界や能力を理解させるために設定するものです」
例えば、ハイパーエンパシーと自閉症との関連について学んだとき、私はなぜ見知らぬ人とのハグが嫌いなのかが理解できました。
他人の身体性による感情の大波に圧倒されます。それは一度に私にぶつかる感情の大きなかたまりです。
私のガールフレンドは「ハグはお断り」と書かれたピンを買ってくれ、私は新しい人に会うときは、最初に手を振るか握手をすることを見知らぬ人に伝えることにしました。
さらに、私が知っている人たちやソーシャルメディアをフォローする人たちがこの現象をよりよく理解するのを助けるために、インスタグラムのリールにも投稿しました。
第二に、自閉症の多くの要素と同様に、異なることが必ずしも良いことでも悪いことでもないことを理解することが重要です。
ハイパーエンパシーは、あなたを集団から遠ざけたり、関係で不安を感じさせたりするかもしれませんが、それはあなたが他の誰よりも感情的な問題をかかえているという意味ではありません。
それは単に、他の人たちのやり方は、あなたにとっては、うまくいかないというだけです。
マーシャル博士はこう言います。
「残念ながら、自閉症のある人たちは、定型発達の人たちが知覚する方法で感情を表現しないため、しばしば罰を受けたり誤解されたりします。
しかし、自閉症の人たちの感情的な反応が『間違っている』、『悪い』、または自閉症でない人よりも『劣っている』というわけではありません」
ハイパーエンパシーを持つことは、感情生活を複雑にすることがあります。
さらに、自閉症が加わることで、豊かな感情がある一方で、それらを表現する方法が限られるという独特の状況を生み出すことがあります。
しかし、境界を表現する方法を学び、自分自身のアイデンティティを肯定するために費やす時間が多くなればなるほど、幸せになり、人生を通じて動きやすくなるはずです。
(出典:米verywell mind)(画像:たーとるうぃず)
まるで自分のことのようにすごく共感してしまうのに、伝えることがうまくできないために「共感していない」と思われる。
ひどい話です。
「共感」についても、自閉症の人もそれぞれ異なることが理解され、
相手をきちんと理解しようとし、「感情がない」「共感できない」そんなふうに簡単に決めつけることはなくなってほしいと願います。
(チャーリー)