- 自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもは成長と共に診断基準を満たさなくなることがありますか?
- 幼い頃に自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断された場合、その診断は将来的に変わる可能性がありますか?
- 自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断を受けた子どもに対する療育は、その診断の持続性や非持続性にどの程度影響を与えますか?
米ボストン・チルドレンズ・ホスピタルの研究者たちが、幼児期に自閉症と診断された子の中には、学齢に達すると自閉症スペクトラム障害(ASD)の基準を満たさなくなるケースが多いことを発見しました。
子どもが自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断を受けると、親はそれが子どもの一生にわたって続くものと考えがちです。
しかし、新しい研究では、特に幼い頃に自閉症と診断された子どもについては、必ずしもそうでない可能性があることが示唆されています。
この研究は、JAMA Pediatrics誌に発表されたもので、ボストン・チルドレンズ・ホスピタルの研究者たちが12〜36ヶ月でASDと診断された幼児のうち、約40パーセントが6歳になるともはや自閉症の診断基準を満たさなくなっていることを示しました。
これらの結果は、以前の研究で自閉症の持続率が68パーセントから100パーセントに及ぶとされていたことと違っています。
研究を行うために、研究者たちは12〜36ヶ月でASDと診断された213人の子どもを特定し、5〜7歳になるまで追跡調査を行いました。
追跡調査の最後に、研究者たちは診断基準がまだ自閉症を満たしているかどうかを判断するために、精神障害の診断と統計マニュアル(第5版)などの基準を使用しました。
すべての参加者はある種の療育を受けましたが、その中で201人は自閉症に特化した療育、例えば行動分析(ABA)を受けていました。
研究チームは、約6歳の時点で、37.1パーセントの子どもが自閉症の診断基準を満たさなくなったことを発見しました。
さらに、女の子やコミュニケーション、意思決定、自己ケアのスキルなどの適応能力が高い子どもは、男の子や適応能力の低い子供よりも自閉症の診断基準を満たさなくなる可能性が高くなっていました。
さらに研究者たちは、ほとんどの参加者が療育を受けたにもかかわらず、これらの療育の強度が子どもの自閉症の持続性または非持続性にはあまり影響を与えなかったことを明らかにしました。
それでも、研究者は療育が重要であると述べています。
ただし、彼らの結果は、自閉症の子どもを治療する際にはより個別化されたアプローチが必要であることを示唆しています。
今回の研究を行ったエリザベス・ハースタッド博士はハーバード医学校の小児科助教授であり、ボストン・チルドレンズ・ホスピタルの発達医学の臨床医です。
ハースタッド博士は早期の自閉症の診断が研究の結果に影響を与える可能性があるかどうかについて、こう言います。
「今回の研究結果は、現行の精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)の行動基準を幼児に適用すると、幅広い発達的な違いがある子どもを含めてしまう可能性があります。
一部の子どもは自閉症に一致する行動特性を持ち続けますが、他の子どもは持ち続けない可能性があることを示唆しています」
今回の研究は、子どもたちの最初の診断がそもそも誤診だったかもしれないことは特定できません。
ですが、ハースタッド博士は標準的なアプローチを使用し、自閉症の診断基準を満たすかどうかを厳格に評価する方法で、自閉症を持つ参加者を特定したと述べています。
例えば、発達行動小児科医と心理学者からなるチームが、参加者の発達スキルを評価し、ASDの症状を評価するための行動観察テストである「自閉症診断観察スケジュール(ADOS)」を使用しました。
ただし、ハースタッド博士によれば、最初にASDと診断されて、後に自閉症の診断基準を満たさなくなった一部の研究参加者は、依然として発達障害に関連する特性を示している可能性があると述べました。
「私たちは、研究評価でASDの基準を満たさなかった子どもたちの発達プロファイルを現在分析しています。
自閉症の基準を満たさなくなった子どもの一部は、引き続きコミュニケーションの難しさなど、自閉症に関連する特性を持ち続けている可能性があります」
DSM-5の以前のバージョンには、自閉症の診断カテゴリーとして「普及性発達障害・その他の指定なし(PDD-NOS)」が含まれていました。
DSM-5からは2013年に削除されるまで、幾つかの自閉症の特性を持ちながらも完全な自閉症の診断基準を満たさない子どもにはPDD-NOSの診断がつけられました。
しかし、今回の研究で幼児期に自閉症の診断を受けた子供の約40パーセントが学齢に達すると自閉症の診断を失うことが示されたため、PDD-NOSを再び診断に加える必要はないのでしょうか。
ハースタッド博士は、PDD-NOSの診断には厳格な基準がないため、この診断を考慮すべきだとは考えていないと述べています。
「代わりに、幼児期(3歳未満)の自閉症の診断基準を作るべきでしょう。
支援と療育は早期に必要だからです。
そして、大きくなってから、再診断をする必べきでしょう」
(出典:米healthnews)(画像:Pixabay)
うちの子も2歳の頃にはおかしいと思って、それからいろいろ相談に行きましたが、どこでも、
「もう少し様子を見ましょう」
ずっとそうでした。
正式に障害であると診断されたのは5歳くらいになってからだと思います。
なので、幼少期に正しく診断することは本当に難しいことだと思います。
この研究結果を朗報と思う親御さんも少なくないはずです。
喜ばしい気持ちも当然よくわかります。
ですが、本人が困難をかかえていれば、診断基準を満たさなくなったとしても、ずっとかかえていたそれが、それですっと消えたわけではないので、その点はどうかご留意ください。
(チャーリー)