- 感情が決断に与える影響は、自分の心拍を感じない人にも同じく見られるのか?
- 発達障害の人は、感情ではなくどのような要素を使って決断をするのか?
- 発達障害の人が合理的な判断をすることが明らかになったが、それは発達障害のない人にとってどのような意味を持つのか?
決断は、自分の決められた範囲の選択に基いて行われます。
決断しようとする時には、感情の影響を受けて、他より良いと思う選択をします。
例えば、50ユーロをもらったら、このまま20ユーロは持っていたいと考えるよりも、このままでは30ユーロを失ってしまうと考えた場合のほうが、ギャンブルを行います。
それは、数学上はどちらも同じで、ギャンブルに負けても手元には20ユーロ残るのですが、お金を失うと考えることのほうが強い感情を引き起こします。そしてお金を失うのを避けるために、賭けにうって出ようとするのです。
これは、1980年代に心理学者のダニエル・カーネマンが最初に見つけた認知バイアスというものです。
フレーミング効果とも呼ばれます。感情が決断に強い影響を与えるのです。
この現象はたびたび論文に書かれていますが、科学者たちは今なお、なぜ私たちの感情がこのように決断に強い影響を与えるのかを知ろうとしています。
ロントン王立大学で、体の変化がどのように感情に結びついているか、そしてそれがどのように決断に関係してくるのか、が研究されています。
最初に、典型的な成人のグループに対してフレーミング効果の程度をはかるために、先程のギャンプルのテストを行いました。
そして、次に目の動きや心拍数を体の変化を知るための測定とアンケートにより感情を知ります。
そして発見しました。
自分の心拍をよく感じる人、つまり自分の心臓の音を聞いている人は感情で決断をしやすく、フレーミング効果が強く現れていました。
となると、自分の心拍を感じない人は感情が決断に影響は与えないのでしょうか?
言い換えれば、感情が決断に影響を与えない人は、自分の心拍を感じないのでしょうか?
感情を見せないとして知られるアレキシサイミア(失感情症)のケースでも調査を行いました。
感情を見せないのは、発達障害の人に多く見られます。
発達障害と診断されている成人のグループで同じギャンブルのテストを行いました。
発達障害の人には感情が決断に影響を与えず、フレーミング効果があまり見られないことがわかりました。
しかし、発達障害の人もそうでない人と同じように心拍を感じていることもわかりました。
しかしそれでは、発達障害でない典型的な成人グループのテストからわかった「心拍を感じる人は、感情に左右されるフレーミング効果が出やすい。」という結論とは違っています。
そこで考えられるのは、発達障害ではない人は決断するときに感情を使うのに対して、発達障害の人は決断をするときには感情ではなく別のものを使っているということです。
自分の心拍を感じたり、自分の感情などを決断する際には使っていません。
そうではなくて、数学的、論理的な決断をします。
発達障害でない典型的な人よりも合理的な選択肢をもちます。
さきほどのギャンブルのテストでは、発達障害でない人と同じようにギャンブルへの対応をしますが、感情ではなく、数学的な判断に基いて行います。
発達障害でない典型的な人の場合には、心拍を感じることと、決断には複雑なつながりがあります。
ギャンプルテストの例では、つまり心拍を感じることは、ギャンブル、お金の世界で生きていくことにも関係があるということです。
心拍を感じること、感情に従うこと、それらは良いことにように言われますが、
発達障害でない典型的な人には、合理的でない決断をさせてしまうことがあるのです。
(出典・画像:英INDEPENDENT)
映画レインマンでは、ダスティン・ホフマン演じるレイモンドは記憶力を武器にギャンブルに強かったわけですが、
今回の研究では、発達障害の人はそうでない人に比べて、感情的な判断ではなく、合理的な判断をすることが明らかになったことを伝えています。
それは決断を迫られる場面で、感情に左右されてしまう発達障害でない人にとって、発達障害のある人が合理的な判断ができる頼れる存在になりうるということです。
違っているのは決して劣っていることではありません、優れていることでもあるのです。
うれしい話です。
発達障害の人についての理解を深める研究が他にも進んでいます。
発達障害だから共感しない。それは違う。
(チャーリー)