- なぜ面白いものを見ているときにまばたきの回数が減るのか?
- まばたきが自閉症の初期症状を検出する方法として有用か?
- パーキンソン病や自閉症などの発達障害の診断にまばたきの回数が役立つ可能性は?
人間の「まばたき」は、1分間に約10~25回、行われます。
その主な目的は、眼球を潤すことです。
しかし、それだけではありません。
ゲームをしているときなど、とくに面白いものを見ているときは、まばたきの回数が1分間に5回以下になってしまいます。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
まばたきの回数を減らすことで、視覚情報を最大限に取り込み、処理しようとするためです。
私たちは、見ているものが魅力的だと感じたとき、驚くことに、無意識のうちにまばたきを抑え、脳への視覚的な情報の流れを増やしています。
友人や同僚と食事をするとき、その人が話しているときにまばたきをする頻度に注目してください。
あなたの会話が面白いかどうか、わかるかもしれません!
一説によると、まばたきは興味のある経験によって活性化される脳の一部と関連していると言われています。
まばたきは、報酬の経験に関連する伝達物質であるドーパミンによって制御されているという証拠もあります。
報酬を感じると、脳は自動的に好きなものに注意を向ける能力を高めるというのは理にかなっています。
また、ドーパミンは、認知の柔軟性、つまり、あるものから別のものへと注意や知覚を素早く変える能力にも関係しています。
まばたきの回数は、科学者がさまざまな活動をする際に、人がどのように注意を向けるかを追跡するために使用されています。
たとえば、感情を揺さぶるような映画を見ると、まばたき回数が減少することがわかっています。
集中力や記憶力が必要な作業をしているときにまばたきを観察することで、その人がどれだけ正確に作業をこなせるかを予測することもできます。
パイロットの注意力維持の妨げとなる要因や、飛行に関わる能力への影響を調べるためにも、まばたきの回数が利用されています。
研究者たちは現在、まばたきの回数がパーキンソン病や自閉症などの発達障害の診断にも役立つかを探っています。
パーキンソン病は、ドーパミンレベルの変化に関連する脳疾患で、協調性やバランスに困難をもたらします。
薬物療法でパーキンソン病の患者を助けることができますが、薬の量が患者のドーパミンレベルにどのように影響しているかを理解することは困難でした。
しかし、まばたきの回数とドーパミンは関係しているため、医師はパーキンソン病患者のまばたき回数をモニターすることで、薬が効いているかどうかをより簡単に追跡できることが発見されています。
最近、米デューク大学の研究チームは、まばたきの回数が自閉症の初期症状を検出する方法となる可能性を示唆する研究結果を発表しました。
タブレットにダウンロードしたアプリを使用して、後に自閉症と診断された子を含む、数百人の幼児に短い面白い動画を見せました。
動画の内容はさまざまで、童謡を歌う女性など「人」を映した動画や、コマなどの「物体」が映っている動画などです。
幼児たちが動画を見ている間、タブレットのカメラが子どもたちの顔を記録しました。
その後、デューク大学のエンジニア チームはコンピューター ビジョンと呼ばれる技術を使用して、幼児が動画を見ている間にまばたきする頻度を測定しました。
その結果、定型発達の幼児は人の動画を見るときにまばたきの回数が減少するのに対し、自閉症の幼児は人でも物体でも、どちらの動画を見てもまばたきの回数に違いはありませんでした。
自閉症は、人の世界よりも物体の世界の方が面白いと感じることが多いと考えられています。
約6分間のこの行動の記録によって、動画に顔を向ける傾向があるかどうか、まばたきの回数などを調べることで、後に自閉症と診断される子どもを82パーセントの精度で予測することができました。
このような客観的な行動指標は、幼い子どもたちの自閉症を発見するのに役立つ「バイオマーカー」になると考えられます。
まばたきだけでなく、瞳孔の開き具合や、映画を見るときの首の動かし方など、私たちの行動には微妙な変化がたくさんあります。
それによって私たちが何に興味を持っているのかがわかるのです。
このような私たちの行動の微妙な違いを、コンピューターは人間の目よりもずっとうまく検出することができます。
今後、人間の行動をより深く理解するために、コンピュータビジョンのような技術がますます活用されていくことでしょう。
(出典:米Psychology Today)(画像:Pixabay)
精度の高さにおどろきました。
早期診断により可能になる、早期療育はその後の困難を大きく軽減できるものと考えられています。
早く実用化されるといいですね。
自閉症の子は人より「幾何学模様」を好む。米国立精神衛生研究所
(チャーリー)