- 言葉を話すことができない自閉症の子どもたちは、言葉を理解できるのか?
- 運動能力や社会性に優れた子どもは、話すことができなくても人の言っていることを理解できるのか?
- 自閉症の子どもたちにとって、言葉を理解することと話すことへの関連性はどのように考えられるのか?
自閉症の子どもの約3分の1は話すことができません。
しかし、聞いて理解できないわけではないことが、新しい研究で報告されました。
米ボストン大学自閉症研究センターの博士研究員であるヤンル・チェンはこう述べます。
「自閉症の子どもたちの約4人に1人は、言葉をほとんど発しないにもかかわらず、自分が発した言葉よりもはるかに多くの言葉を理解しています」
また、運動能力や社会性に優れた子どもは、たとえ自分で話すことができなくても、人の言っていることを理解できる可能性が高いことも明らかになりました。
「私たちの発見は、こうした自閉症の子どもの言語理解能力の発達をサポートすることの重要性を強調するものです。
医師やセラピストは、療育を計画・実施する際に、これらのスキルを考慮し、療育を最大限に活用できるように、理解できるようにシンプルで明確な指示を提供すべきです」
これらの言語療育に社会的・運動的スキルトレーニングを取り入れることも有益であると述べています。
「これは、発達のいくつかの密接に関連した領域を統合することによって、療育の全体的な結果を最適化する可能性があります」
チェンは、スウェーデンのストックホルムで開催された国際自閉症研究学会(INSAR)で、この研究結果を発表しました。
INSARの次期会長であり、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の自閉症研究・治療センターの創設メンバーであるコニー・カサリはこう言います。
「この研究は、言葉をほとんど発しない自閉症の人たちに焦点を当てた重要な研究です。
長い間、これらの人々は、コミュニケーションが取れないという理由で、研究対象から除外されてきたからです。
それは差別的であり、潜在的に彼らを助けることができる研究の妨げとなってきました」
この研究のために、チェンたちは、自閉症で言語能力が低い、平均年齢約9歳の約1600人の子どものデータを分析しました。
話す能力である「表現力」のスコアが低い自閉症の子どもたちが、言われたことを理解する「受容力」のスコアも低いかどうかを調べました。
「この研究では、親の報告と標準化された言語測定の両方を使用し、標準化された測定よりも親の報告の方が、こうした自閉症の子どもの言語バリエーションを捉えるのにふさわしいことがわかりました」
その結果、25パーセントの子どもたちが、表現力よりも受容力に優れていることが示されました。
また、受容能力が高い子どもたちは、運動能力や社会性も他の子どもたちよりも優れているようでした。
話すことができなくても、言われたことを理解できるかもしれないというのは、理にかなっているとチェンは言います。
「まず、言葉を理解することが、言葉を生み出すための足がかりとなることが多くあります。
言葉の意味を理解せずに、話し言葉を作ることはできません」
また、運動能力や社会性が、話し言葉を理解する能力の向上と関連することも理にかなっていると、米マウントサイナイ・ヘルスシステムで行動小児科の臨床助教授を務めるキャロライン・マルティネス博士は述べています。
「私たちは、言語の表現に焦点を当てる傾向がありますが、言語の理解も、他の多くのスキルに関連するものです。
言語は、社会的スキルや教育的スキル、学業成績、適応や自立の機能など、様々な異なるスキルの最も安定した予測因子であることが判明しています」
医師が子どもの表現力に注目する理由のひとつは、言語を理解する能力よりも測定しやすいからです。
「赤ちゃんは生後6ヶ月で喃語を話し始め、1年後には2,3語を話すようになります。
親に尋ねることができるので、小児科医にとって簡単です。
しかし、初期の受容言語のマイルストーンはの把握は簡単ではありません」
親は、受容言語の特定のマイルストーンに目を光らせておくべきだとマルティネス博士は言います。
- 6ヵ月未満の赤ちゃんは、さまざまな音に一貫して反応し、首をかしげて音源を探すようになります。
- 6ヵ月になると、自分の名前に反応するようになり、両親の異なる声のトーンに感情的に反応するようになるはずです。
- 1歳になると、日常生活で使う簡単な言葉を認識し、”おいで “などの簡単な命令に従えるようになります。
- 1歳半には、「鼻はどこ?」「はどこ?」と聞かれたときに、体の一部を指差すことができるようになるはずです。
自閉症の子どもたちが、言葉を理解することから話すことへと飛躍するのを妨げるものが何であるか、現時点ではわかっていません。
チェンはこう言います。
「私たちの研究室では、口腔運動機能、粗大運動発達、音声や音に対する脳の反応などが、個人の発話能力にどのような影響を与えるかなどの仮説を検証しています」
チェンは、これらの子どもの何人かがスピーチを理解しているものの、その言語理解能力は典型的な発達で見られると予想するものからは遅れていると言います。
「使う言葉を簡単にすると良いと考えられます。
コミュニケーションを円滑にするために、最小限の指示、見せ方、実演、視覚的補助を使用してみてください」
カサリは、この研究は、これらの子供たちが他の人とコミュニケーションを取るのを助けることができる技術や他のシステムを開発するための努力に役立つかもしれないと述べています。
「人間はコミュニケーションをとりたいのです。
自分の欲求を満たしたいのです。
だから、自分の考えや願望、希望を表現できるように、誰かにコミュニケーションへのアクセスを与えることは、本当に重要なことなのです」
また、今回の研究結果は、子どもたち一人ひとりのスキルセットを個別に評価することの重要性を浮き彫りにしていると言います。
「どの程度、言葉を理解しているか、どの程度表現できるかなど、さまざまなことを評価すれば、その子どもを対象に、どのような介療育をすべきか、個別化すべきかがわかります。
受容言語が高い子どもには、その強みを活かすようにするのです」
学会で発表された今回の研究は、査読付き雑誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされます。
(出典:米Medical Xpress)(画像:Pixabay)
うちの子もまったく話すことはできません。
しかし、こちらの言っていることは概ねわかっています。
「カーテンを開けて」
とお願いすると、逆に閉めたりすることもありましたが、今ではちゃんと開けてくれます。
「これ食べる?」
と聞けば、両手を数回合わせて「食べたい」と示してくれます。
今回の研究結果のとおり、理解はずいぶんできています。
最近はよく目もあわせてくれます。
時間はかかりましたが、成長しています。
(チャーリー)