- 自閉症や発達障害を持つ人が美容業界で働く際に必要なサポートや工夫は何か?
- 美容業界で働く自閉症や発達障害を持つ人が直面する困難とは何か?
- 自閉症や発達障害を持つ人が美容業界で働くことによってもたらすメリットや特長は何か?
英国では、発達障害である自閉症スペクトラムは100人に1人以上がかかえていると推定され、70万人がそうであると考えられています。
自閉症は「スペクトラム」であるため、人によって様々な現れ方や強さがありますが、一般的には制限的または反復的な行動や、社会的なコミュニケーションや相互作用の困難さをともなうとされています。
美容業界は、そこで働く人たちや提供できるサービスの幅が広いという良いところがあります。
そのため、発達障害の人が働くにはとても歓迎される場所であり、ほとんどの人に活躍できる場があります。
美容業界で自分の居場所を見つけた一人が、エステティシャンのシャーロット・キングです。
ラディアンス・エステティック・クリニックで働くキングは、学校では苦労しました。
14歳のときに自閉症と診断されました。
「友だちが美容師になりたいと言って、学校の体験会に参加しました。
私も一緒に参加しました。
午後はネイルをして、その魅力に取りつかれました。
美容に興味をもったのは、このときが初めてだったかもしれません。
学校では解剖学と生理学がとても楽しくて、その背後にある科学がすべて理解できるようになりました。
以前の学校では、科学の授業に耳を傾けることはできませんでした。
その後、オーストラリアで働き、そこでレーザーなどを多く扱い、エステティックの道に進むようになりました。
帰国して今の職場で働き始めてからは、レーザー、ピーリング、クールスカルプティングなど、あらゆるメニューに対応できるようになりました」
キャロ・サイソンは、ポッドキャストの司会やソフトウェア「Pocket PA」を設立して、美容業界を支えています。
サイソンは、ディスカリキュリア(計算障害)を持つビューティーセラピストの娘、メーガンが、自分で仕事をしたいと思いながらも、ビジネス運営に苦労していたときに、「Pocket PA」を作りました。
「メーガンは、クライアントとの会話は素晴らしいのですが、数字が苦手なんです。
だから、母親として、彼女が使えるビジネスツールを探していました。
もし彼女が数字を管理できていなければ、12ヵ月後にはつぶれてしまうと思いました。
私はこれまでにあるツールを見て、こんなに難しいことができるのか?娘のために私が作ろう、娘が何を必要としているか知っている、私は30年間ビジネスもしてきたのだからと思いました。
そして6年前、それまで一度もコードを書いたことがなかったのですが、ソフトウェアの開発を始めました。
オンライン予約、リマインダーメッセージ、記録など、自営業の美容プロフェッショナルとして活動するために必要なすべてのことに、少しずつ対応できるようにしました」
Pocket PAが他のソフトウェアツールと異なる点は、発達障害の人を念頭に特別に開発されたことです。
「文字や数字を処理するのが難しい発達障害の方にとって、これは本当に必要です。
さまざまなニーズを持つ発達障害の経営者に使いやすくなっています」
サイソンの息子も使っています。
彼はディスレクシアで自営業の電気技師です。
サイソン自身も昨年、50代で自閉症と診断されました。
「Pocket PAを作った理由の1つです。
普通の人なら、娘のミーガンにはこれまでにあるソフトでなんとかしようとするのでしょうが、私も発達障害なので、これまでにないものを作ろうと思ったんです。
私は、昔から夢中になるので」
美容業界は、人とのコミュニケーションや交流が中心であるため、自閉症の美容関係者には困難がともなうことがあります。
自閉症の人の中には、相手の気持ちや意図を理解することや、自分の感情を表現することが苦手なため、コミュニケーション方法が無神経であったり、不適切であると思われることがあります。
サイソンはこう言います。
「私は直情的で無神経なタイプなので、私を唐突に感じたり、少し無礼に感じるかもしれません。
私が自閉症であることを知るまでは、それが私の意図したことではないとは分かりません。
初対面では、それがなかなか難しいことです。
私は、初対面の人との会話に耳を傾け、自分の深みにはまらないようにするために、アイコンタクトを保つことを自分に教えなければなりませんでした」
自閉症の人は、日常生活の変化にも悩まされることがあり、予定が変わったり、クライアントが予告なしにキャンセルしたりすると、ストレスを感じることがあります。
キングはこう言います。
「私は常に携帯電話の日記と頭の中で、その日にやることをチェックしています。
もしそれが変わったら、もう一度考え直し、頭の中で整理しなければなりません。
誰かがキャンセルしたり、予定が詰まってしまったりすると、たとえ十分な時間があったとしても、それを管理することにストレスを感じてしまうんです」
しかし、どんな小さなビジネスでも、少しは柔軟に対応しなければなりません。
キングの雇用主にサポートされています。
「私が一番働きやすい方法で仕事をすることを認めてくれています。
私が日記を見るのが好きなことも知っていますし、私だけ携帯に日記を入れていることも。
私が自分のやり方を好むことも知っています。
私は自分専用のトリートメントルームを持っていて、いつもその部屋でやっています」
自閉症であることの欠点がある一方で、自閉症の美容師を業界の貴重な存在にしている、知られざる長所もたくさんあります。
コミュニケーションは難しいものですが、自閉症の人が他者との関係を築くためにとるさまざまな方法は、実はメリットになることもあるのです。
自閉症の人は、社会的な合図を受け取る方法が異なるため、時に他人の意図に対して少しナイーブになることがあるとサイソンは考えています。
そしてこう言います。
「しかし、その分、正直で誠実な人が多いのです。
倫理観のない経営者とは誰も仕事をしたくはありませんから、その点でも私たちは有利だと思います」
キングは、人間関係の構築が自分にとってのスーパーパワーであると考えています。
「人と一緒にいるときに特別な感覚があります。
クライアントが何を望んでいるのかを知り、自分を高めることができます」
また、「違う」ことで、状況や問題に異なる視点からアプローチできることもメリットです。
「さまざまなシナリオに対応するためには、既成概念にとらわれない発想が必要でした。
また、自閉症の人は細部にまで気を配るので、それが功を奏することもあります」
そう、サイソンは言います。
また、趣味や関心が高いことも自閉症の特徴ですが、これによって専門家になることもあります。
「自閉症の人は本当に特別なことに興味を持つことが多いので、好きなことがあれば、他のことを排除してまで、そのことに過集中します。
そして、本当に好きなことであれば、特定のことに関する本当の専門家になることがよくあります」
この超集中力によって、キングは肌に関する知識を深め、その明らかな技術によって、2022年の英国美容医療賞の美容セラピスト・オブ・ザ・イヤー部門のファイナリストになりました。
「肌のことを知り尽くしているからこそ、お客さまの肌を読み解き、何が必要かを正確に把握し、お客さまのためにプランを立てることができるのです。
どれくらいの時間がかかるのか、何をすればいいのか、そしてそれについて正直に話すことができます。
偽りの約束はしません」
そう、キングは言います。
誰しもそうですが、自閉症の人も2人として同じ人はいません。
一人ひとりが独自の課題と長所をもっています。
サイソンはこう言います。
「自閉症の美容家たちには、より深いつながりや幅広い知識、革新的な考え方があります。
業界を活性化させることは明らかです」
(出典:英PROFESSIONAL beauty)(画像:Pixabay)
自閉症、発達障害、他の人と違うことはマイナスなことだけでなく、プラスなこともあります。
「プラス」を発揮できる機会が広がることを切に願います。
発達障害、自閉症の人はサイバーセキュリティ分野で重要な存在に
(チャーリー)