- オープンオフィス環境における神経多様性への配慮は適切なのか?
- リモートワークがニューロダイバージェントの人々にとってどのような影響を与えているのか?
- カナダ企業は障害を抱える従業員に対してどのような配慮を行うべきか?
ハンナ・プラットは、これまでのオフィスでの対面での仕事では、ノイズに悩まされていました。
ある職場では、机の近くに換気口があり、ロケットが迫ってくるような音がしたといいます。
あるオフィスでは、壁が薄く、人の往来や会議の声が絶えずあり、集中することができませんでした。
35歳のマーケティング・コミュニケーション・コンサルタントであるプラットはADHDです。
当時は、自分でも知りませんでした。
ADHDでは、集中力や静寂が得られないだけでなく、特に集中しようとするときに、雑音に敏感になるなど、さまざまな症状を経験することがあります。
「私はますます息苦しくなりました。そして、自分の生産性が低下していくのを感じました。
昼でも自宅に帰って仕事をしたり、週末に仕事をしたりするようになりました」
ADHD、自閉症、ディスレクシア、ディスカリキュリア、トゥレット症候群、知的障害、双極性障害などの精神疾患などを含む総称である「ニューロダイバージェント」にとって、現代のオープンオフィスでプラットが経験したことはめずらしいことではありません。
プラットの過去の仕事では、在宅勤務を希望することは、怠慢、あるいは管理されたくないという気持ちの表れと見なされることがありました。
しかしそれが、新型コロナウィルスの大流行によって一変しました。
突然、カナダ中のオフィスワーカーがオフィス以外の場所で仕事をすることを余儀なくされたのです。
この働き方は、1年近くフルタイムで在宅勤務しているプラットをはじめ、多くのニューロダイバージェントにとって理想的なものです。
「おしゃべりして、私の邪魔をする人がいないんです。
今やっていることを中断して、会話をする必要がないのです。
自分でコントロールできるんです」
リモートワークへの移行が盛んになっているにもかかわらず、職場における神経多様性への対応は必ずしも改善されていないという声もあります。
職場におけるインクルージョンとアクセシビリティに焦点を当てたコンサルタント会社、コンプリートリー・インクルーシブの創設者、自閉症と難聴をかかえるケリー・ブロン・ジョンソンは「後退している」と言います。
ニューロダイバージェントの人たちは、同じ診断名でも、さまざまな症状を経験します。
たとえば、ADHDの人の中には、常に落ち着きがなく、リラックスできない人もいれば、夢見がちで自分の世界に入り込んでいるような人もいます。
しかし、ニューロダイバージェントの人に共通してあるのは、刺激に対する感度が高いことです。
蛍光灯の光や強いにおいなど、あらゆるものが含まれます。
カナダADHD啓発センターによると、成人の6パーセントがADHDであるとされています。
カナダ医師会は、全年齢のカナダ人口のおよそ1〜2パーセントが自閉症スペクトラムであると推定しています。
そして、これだけ多くの人がいるにもかかわrず、雇用を得る、継続することに苦労しています。
国際的なピアサポート団体であるADHD協会によれば、米国ではADHDの人のおよそ60パーセントが解雇されたことがあります。
カナダ健康科学アカデミーによると、カナダでは自閉症の成人の就職率はわずか14.3パーセントです。
そのような状況の理由のひとつは、多くのニューダイバージェントの人が、自分が心地よいと感じる職場環境を見つけることが困難であることです。
自閉症の人の多くは、経済的に不安定なため、どんな仕事でも受けざるを得ないといいます。
「対面しなけれなならい職場でも、お金が必要なので、その仕事を受けることになります。
仕方なのです」
そして、職場で自分を擁護することも、常に選択できるわけではないといいます。
ADHD、自閉症、ディスレクシアの診断を公表すると、雇用主から歓迎されない、差別的な視線を浴びることがあるためです。
新型コロナの感染拡大がリモートワーカーの有効性を教えてくれたにもかかわらず、大手銀行を含むカナダの多くの企業は、従業員にオフィスでの勤務を要求しています。
センター・フォー・アディクション・アンド・メンタルヘルスの共同ファシリテーター、ミーガン・ピラツキーさんは、約半数の企業がリモートワークを進めているものお、残りの半数はパンデミック以前の状態に戻そうと考えていると推測しています。
「全員がリモートワークを希望するわけではありませんが、希望する社員は大流行が証明したように、たくさんいます」
そして、職場が障害に関する人権基準を守る必要性を指摘します。
カナダの法律では、自閉症やADHDなど、多くの疾患が障害とみなされます。
業務に支障がなければ、リモート勤務を認めることは、適切な配慮となり得ます。
アルバータ・インベストメント・マネジメント・コーポレーションのダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン、従業員体験担当ディレクターであるレイチェル・ウェイドは、従業員への配慮は単に福利厚生制度を充実させるだけでは不十分だと言います。
ノイズキャンセリングヘッドフォンなどのツールを使って気が散るのを抑えたり、会議中にじっと座っていないなど、ニューロダイバージェントが抑えるのが難しい行動を受け入れることも有効です。
ウェイドは、フレキシブルな勤務時間や勤務地を認めることは、ニューロダイバージェントの人たちにとって理想的なことだと言います。
「多くの人にとって、フレキシブルな職場環境は、ご褒美というより期待するものになりつつあります。
なぜなら、多様なニーズに対応しながら、充実した仕事を生活に取り入れることが容易になるからです」
慈善団体アップ・ウィズ・ウーマンの創設者で最高経営責任者であり、自閉症とADHDもかかえるリア・グリマニスは、ニューロダイバージェントの人たちにとっては、ホームオフィスでさえ、気が散ったり、パニックの引き金になったりすることがあると言います。
それでも、自宅の環境は、職場での誤解や配慮の欠如から、より距離を置くことができると言います。
「差別や無知にさらされることが少なくなります。
そうした環境と常に折り合いをつける必要がなくなれば、疲れも少なくなります」
プラットの場合、現在の仕事の状況はずっと良くなっています。
そのひとつが、ADHDをかかえる起業家たちと協力して、デジタルコースや製品を立ち上げたことです。
リモートワークのおかげで気が散ることもなく、スケジュールをコントロールして、午前中に集中できる仕事を優先しています。
「一日の管理は、完全に自分の責任で行うようになりました。
そして、より生産的になり、より成功し、自分のキャリアに対するストレスが大幅に軽減されました」
彼女は自宅の環境で自分らしく働いています。
「あの部屋では、騒音をなくすことができます。
すべてを私にあわせて、コントロールできるんです」
(出典:カナダTHE GLOBAL AND MAIL)(画像:Pixabay)
GAFAMでも出社するように求め始めているようです。
しかし、リモートワークを希望する人には、そのままリモートワークを認めたほうが、
企業にとってもメリットがあるだろうと思うのですが。
(チャーリー)