- 自閉症の人が自己開示する際の安全性にはどのような考慮事項があるか?
- 自閉症であることを伝えることによって得られるメリットとリスクは何か?
- 職場が自閉症の人の自己開示をサポートするためには具体的にどのような取り組みが必要か?
自閉症の人の割合が、認識と研究が進むにつれて増加しています。
少なくとも100人に1人が自閉症であると言われています。
しかし、どのように受け取られるのかという不安から、オープンに公表している人は少数派です。
自閉症の人は、自閉症について自分の知っているすべての人と共有する「包括的な開示」が最良の選択肢であるという考えがあります。
しかし、新しい調査研究は、このアプローチを単純に支持するものではありませんでした。
その研究から、実際の情報開示の経験がどのようなものであるかについて、自閉症の人たちが私たちに語ったことを紹介します。
そして、自閉症の人が自閉症であることを伝える選択をした場合に、より安全にするために職場がすべきことは何かを考えてほしいと思います。
豪ARCAP(Aspect Research Centre for Autism Practice)による調査研究では、21歳から71歳の36人の自閉症の人が2ヶ月間に経験した231の出来事が記録されました。
特別にデザインされたスマートフォンのアプリケーションを使用することで、さまざまな環境下での経験を追跡し、自閉症の人たちが経験する日々の、自閉症であることを示す機会についてリアルタイムに確認することができました。
そして、自閉症であることを「公表する」「公表しない」という決断の裏にある思考プロセスについて知りました。
また、ポジティブな体験とネガティブな体験、そしてどのような環境がより好ましいかがわかりました。
自閉症であることを公表することは、理解と支援につながります。
一方で、差別やいじめさらされるリスクもあります。
公表しないことはストレスや不安などの精神衛生上の懸念につながります。
しかし、自閉症であることを打ち明けることは、例えば、仕事の機会を失うなど、人生を変える結果をもたらす可能性があります。
153の機会が「公表した」と分類され、参加者は自分が自閉症であることを共有しました。
また、78の機会は「非公表」に分類され、参加者はその機会だと感じていたものの、共有しませんでした。
自分が自閉症であることを伝えるのに最も一般的な方法は対面での会話でした(43パーセント)。
少なかったのは、Eメール(4パーセント)、電話(3パーセント)、文章(3パーセント)、診断書(0.4パーセント)でした。
安全性が、開示の背後にある重要な考慮事項でした。
自閉症の人は、他の人が「すでに私の感覚の問題を認識している」ときに、自分が自閉症であることを共有し、「私は安心して開示することができた」と述べています。
しかし、それには時間とエネルギーが必要でした。
伝えなかった自閉症の人は「社会的に疲れていると感じた」「職場のリーダーに対して不快な雰囲気を感じた」ために公表しませんでした。
この調査研究では自閉症であることを伝えたあとの、一般的な否定的および肯定的な反応についての洞察も得られました。
例えば、ある回答者は「見捨てられた」と感じていました。
また、「自閉症なのにどうして美容師になれるのか」と聞かれ、ショックを受けた人もいました。
あるいは、奇異の目で見られるようになっただけという人もいました。
肯定的な反応としては、「これまでと変わらない」「特別扱いされない」といった中立的な反応から、「批判されない、むしろ励まされ祝福される」という解放感まで、さまざまでした。
自閉症であることを伝えた場所は、職場(31パーセント)が最も多く、次いで地域社会(21パーセント)、教育現場(11パーセント)、家庭(11パーセント)、医療機関(9パーセント)、お店(6パーセント)でした。
職場が、自分が自閉症であることを伝えることで最もネガティブな経験を持つ環境であり、差別やいじめについても頻繁に言及されていました。
雇用者は、自閉症の人が自己開示できるような安全な環境作りにもっと責任を持つべきです。
これには、採用時の調整(面接の代わりに職場体験など)、労働条件(在宅勤務の柔軟化)、感覚的環境(照明や音の調整など)、コミュニケーション方法(明確な文書による指導など)なども含まれます。
すべての職場において、障害に対する意識向上トレーニングは有益です。
医療機関においては、教育を提供し、文脈を超えた誤解を減らすための鍵であるため、とくに重要です。
より広い社会的なレベルでは、私たちは、期待されていることとは異なる考えや行動をする人たちをもっと尊重し、支援する必要があります。
また、尊敬の念を持って扱われるためには、プライベートで個人的なこともみんなに共有しなければならない、といった考えも捨てるべきです。
情報を開示する人たちにとって、これがしばしば恐ろしい決断であることを知らなければなりません。
開示されたら、それは、あなたには安心できるからこの情報を託す、ということかもしれません。
そうであれば彼らを信じ、受け入れてください。
彼らは開示する前と変わりません。同じ人物なのです。
(出典:豪THE CONVERSATION)(画像:Pixabay)
>あなたには安心できるからこの情報を託す
その通りだと思います。
勇気を出してそうした人に、それで態度が変わるような人間には、私は絶対になりたくありません。
アンソニー・ホプキンスが自閉症を公表。世界を豊かにする人たち
(チャーリー)