- 自閉症の方がコミュニケーション手段を見つける際に、どんなサポートが必要だろうか?
- 介助者との関係性やコミュニケーション方法において、本人の意思を確認するためにはどうすれば良いのか?
- 単語や文章を通して表現される本人の思考や感情が、正確に伝わるために必要なことは何だろうか?
カナダの自閉症の若者は、自分の人生を変えたというコミュニケーションの方法を世間に知ってもらいたいと願っています。
19歳のエリック・ヘルツォークは、ほとんど言葉を話すことができません。
そのため、自分の深い考えや夢について表現することができませんでした。
「まるで閉じ込められているようでした」
そう、エリックはコミュニケーションパートナーのマディソン・マーティンを通して語りました。
エリックの母親のモーは、1年半ほど前にRPM(文字盤によるコミュニケーション)を知りました。
「友人から聞いて、試してみようと思いました」
マーティンとの週2回のセッションで起こったことは、予想以上でした。
「RPMセッションでは、レターボードをツールとして使用します。
レッスンでは、私は教える、聞くのループに生徒を巻き込みます。
私は彼らに情報を教えているのです。
私たちは既知の答えから始め、徐々に自由なコミュニケーションへと発展させていきます」
マーティンはアルファベットボードを持ち、エリックは文字を指差して単語や文章を作ります。
「最新の技術だと、うまく利用できない自閉症の人たちのいます。
iPadのアプリもありますが、最初はローテクなアプローチが最適だと考えています。
そして、最終的には、iPadやキーボードを使えるようになることを期待しています」
この方法のおかげで、エリックはもう言葉を失うことはなくなりました。
「人生を変えるような出来事だった」
そう、エリックは指を動かして言います。
閉塞感ではなく、自由を感じるようになりました。
「私たちは2時間かけてエリックの頭の中を知ることができました。
19年間一度もわからなかったことがわかるようになったのです。
セッションごとに息子のことがもっとよくわかるんです」
マーティンはエリックのことをこう言っています。
「セッションを始めたばかりの頃は、エリックは内なる考えや対話を伝える能力がほとんどなく、とても感情的でたくさんの涙を流すこともありました。
それから、彼は、自分の脳の働きや色の味わい方など、想像もつかなかったようなことを話してくれました」
エリックの父であるウェインも最初は信じられませんでした。
「RPMを始める前は、彼は私たちの手を取って、欲しいものを見せてくれました。
それが私たちとの唯一のコミュニケーション方法だったのです。
私は疑い深い性格なので、長い間、ここで起こっていることを受け入れられませんでした。
以前は、息子の知性は、3〜5歳児程度だと思っていました。
今では、息子の能力や脳内の思考を見て、罪悪感を感じています。
私はずっと息子を見くびっていたのです。
今までは、どうしてそんなことをするんだと尋ねることもあきらめていました。
しかし、今は息子は頭の中にあることを伝えてくれるようになりました」
母親のモーは、エリックの最初の会話にとく感動しました。
「ママ、愛してると書いてあったときは、絶句しました。
息子は私を愛してくれているけれど、言葉はもらったことがありませんでした」
エリックは、いつか大学に行って、教育者になるために勉強をしたいと語っています。
(出典・画像:カナダGlobal News)
このようにボードを介してコミュニケーションができるようになったという方の記事を以前掲載したときに、
「こうした記事は掲載するべきではない。
ボードによるコミュニケーションは本人の意図とは異なり、介助者が行っている可能性がある。
それはむしろ、本人にとっても害になるものだから」
という抗議がありました。
私も昔、「**の詩人」をテレビで見たときのことを思えば、たしかにそのとおりだなと思いました。
しかしながら、当記事の方の動画をみても、介助者は板をもっているだけで全く動かさず、自ら文字を選んでタッチしているように見えます。
それでも、疑えばキリはありません。
ですが、ボードを介したコミュニケーションの全部が全部「本人の意思を示すものではない」ということもないはずです。
そう疑って、残されたコミュニケーション方法を奪ってしまうことも、ものすごく恐ろしいことです。
ただ、その抗議が指摘したリスクは間違いなく存在するので、できるかぎりご本人の意思を汲み取るように、ご本人のために注意して目と耳を傾けて頂きたいと願います。
(チャーリー)