- IQの推移は、青年期のコミュニケーションや行動発達を予測するのに役立つのか?
- ある自閉症児のIQの変化パターンに基づいて、将来の進路や支援方法を予測できるのか?
- 自閉症の幼少期のIQの軌跡が重要なのか?
米カリフォルニア大学デービス校MIND研究所の研究者による長期的な研究で、自閉症児のIQレベルの変化が、青年期におけるコミュニケーションや行動の発達の道筋を予測するのに役立つことが確認されました。
この新しい研究は、2歳から8歳の自閉症児のIQの推移に関するMIND研究所の過去の研究に基づいたものです。
今回の研究結果は、より年齢の高い青少年にも適用されるものです。
JCPP Advances誌に掲載されたこの研究では、自閉症の子どもの知的発達について、持続的な知的障害、IQの上昇、平均以上のIQの維持という3つの異なる発達のタイプが確認されています。
筆頭著者のMIND研究所の副所長で、精神医学・行動科学科のマージョリー・ソロモン教授はこう言います。
「今回の研究で、IQを利用して自閉症の子どもたちを、さらにグループ分けできることがわかりました。
IQはおそらく自閉症の子のその後の変化を最も強く予測する因子であることを考えると、幼少期のIQの軌跡を研究することは非常に重要であると私たちは考えています。
それは、彼らの潜在的な異なる将来の進路や、活躍するための支援方法についての手がかりを提供するものです」
この研究には、あらゆるレベルの知的能力の2歳から12歳までの373人(女性115人、男性258人)の自閉症の子が参加しました。
行動と自閉症特性の評価は、幼少期を通じて収集されました。
IQは、平均3歳、平均5.6歳、平均11.5歳、の3つの時点で評価されました。
自閉症を専門とする臨床心理士が、自閉症評価ツールを用いて参加者を評価しています。
これらの評価に基づいて、自閉症の子どもたちを3つのグループに分けることができました。
■「変化者」グループ
幼少期に IQ が低い状態から始まり、中学生になるまでIQが大幅な上昇した子どもたちです。
39パーセントがこのグループに属していました。
■「持続性知的障害」グループ
幼少期を通じて持続する平均未満の IQ で始まった子どもたちです。
参加者の約45パーセントがこのグループに属していました。
■「持続的高IQ」グループ
平均または平均以上のIQで始まり、子供時代を通じて比較的安定していた個人を表しています。
16パーセントがこのグループに属していました。
研究者たちは、これらの子どもたちの自閉症の特徴とコミュニケーション適応機能の変化を分析しました。
ミュニケーション適応機能は、言語を理解し、意味のある言語表現を行い、読み書きをする能力のことです。
また、不安や抑うつなどの内面化行動と、衝動性や攻撃性などの外面化行動も調べました。
その結果、
- 2つ以上の時点で評価を受けた、実験に参加した子どもたちの191人のうち、10人が自閉症と診断されない状態となりました。
この中には、「変化者」の約5パーセント、「持続的高IQ」の10パーセントが含まれていました。 - 早期コミュニケーション適応機能が強く、自閉症の「重症度」スコアが低い人は、思春期までに「持続性知的障害」よりも「持続的高IQ」に属する可能性が高くなっていました。
- 「変化者」と「持続性知的障害」は、ともに幼児期のIQスコアは低くなっていました。しかし、思春期にコミュニケーション適応機能の改善や外向行動の減少が見られたのは、「持続性知的障害」より「変化者」でした。
ソロモン教授はこう言います。
「幼児期と思春期の時点で評価した場合、異なる知的発達の軌跡をたどる個人にこれほど多くの共通点が見られたことは、驚くべきことです。
もちろん、結果の決定には他の多くの要因が関与していますが、知的能力レベルは中核的な特徴であり、重要な出発点です」
MIND研究所の密接に関連した昨年の研究では、3歳時点での3つのIQサブグループの子どもたちのMRIスキャンが比較されています。
その研究では、知的機能に関連する2つの脳ネットワーク、「前頭葉ネットワーク」と「デフォルトモードネットワーク」が評価されました。
前頭葉ネットワークは、持続的な注意、問題解決、ワーキングメモリに関与しています。
デフォルトモードネットワークは、記憶、未来について考えること、心の迷いなどに関係しています。
研究チームは、3歳時のIQが低い「変化者」グループと「持続性知的障害」グループで、前頭葉ネットワークのいくつかの領域で、平均的なIQのグループと異なることを発見しました。
一方、デフォルトモードネットワークは、「変化者」グループと他の2つのグループとの間で差がありました。
この差は、このネットワークが知的機能の向上に関連するメカニズムに関与している可能性を示唆するものでした。
両研究の共著者である、自閉症フェノームプロジェクトのディレクターであり、精神医学・行動科学科の教授のクリスティン・ウ・ノダルはこう言います。
「両研究の結果は、幼児期における知的障害のある自閉症の人とない自閉症の人の脳の違いが、将来の結果を予測する手がかりとなることを示しています。
今後の研究では、幼少期にわたる脳の構造と機能の発達を評価し、自閉症の知的発達の様々なサブグループ間でそれらがどのように異なるかを評価する予定です」
(出典:米カリフォルニア大学デービス校医学部)(画像:Pixabay)
たしかにこの3グループの分類は、児童発達支援センター、特別支援学校などでのうちの子の同級生をずっと見てきた私としては納得感があります。
うちの子は自閉症の子の45パーセントが属する「持続性知的障害」です。
いつまでも笑顔でいられることを願っています。
(チャーリー)