- 自閉症スペクトラム障害(ASD)は知的障害と併発するケースとそうでないケースがあるのか?
- なぜニューヨーク・ニュージャージー都市圏でASDの診断が増加しているのか?
- 自閉症の診断が人種や社会経済的地位と関連しているとされるが、その理由は何か?
米ラトガース大学の研究によれば、ニューヨーク・ニュージャージー都市圏における自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断は、2000年から2016年の間に500パーセントも増加しました。
なかでも知的障害のない子どもたちの増加率が最も高いことがわかりました。
これは、自閉症は一般的に知的障害と併発することを示唆してきた過去の知見とは異なります。
「ASDに関する前提の一つに、知的障害もあわせてもつということがあります」
そう、ラトガース公衆衛生大学院の非常勤教授で”Pediatrics”に掲載された今回の研究の主執筆者のジョセフィン・シェノウダは述べています。
「知的障害もあわせてもつことは、自閉症の子どもの最大75パーセントが知的障害も持っていることを示唆する古い研究によって支持されていました。
私たちの研究が示しているのは、この仮定が真実ではないということです。
実際、私たちの研究では、自閉症の子どもの3分の2は、何の知的障害もありませんでした」
ニュージャージー自閉症研究の年2回のデータを使って、研究チームはニュージャージーの4郡(エセックス、ハドソン、オーシャン、ユニオン)で4661人のASDの8歳児を特定しました。
このうちの1505人(32.3パーセント)には知的障害があり、2764人(59.3パーセント)は知的障害はありませんでした。
その後の分析で、知的障害もあるASDの子ども割合は、2000年から2016年の間に、1000人あたり2.9人から7.3人と2倍に増加していました。
一方、知的障害のないASDの子どもの割合は、1000人あたり3.8人から1000人あたり18.9人と、5倍も増加していました。
正確な原因を特定するためにさらなる研究が必要とするものの、観察された増加には説明がつくかもしれないとシェノウダ教授は述べています。
この研究の筆頭著者である、ラトガース・ニュージャージー医科大学のウォルター・ザホロドニー准教授はこう言います。
「ASDの認知度向上と検査が、ある程度、影響しています。
しかし、知的障害を持たない自閉症の子どもたちが、5倍になったという事実は、他の理由があることを示唆しています」
自閉症の診断は、人種や社会経済的地位と関連していることがこれまでに示されています。
ラトガース大学の研究では、黒人のASDで知的障害のない子どもは、白人の子どもに比べて30パーセント少なく、一方、豊かな地域に住む子どもは、恵まれない地域に住む子どもに比べて80パーセント多く、知的障害をもたない自閉症と診断されることが確認されています。
研究チームは、ニュージャージー州自閉症調査のデータと米国の国勢調査のデータを用いて、4つの郡におけるASDと正式には診断さえていない人の数を推定しました。
これに対処することで、診断のギャップを解消し、最終的には恵まれない地域の子どもたちに求められる支援サービスを提供することができようになると述べています。
「ASDの人の最大72パーセントが、境界線上または平均的な知的能力を有しています。
早期スクリーニング、早期特定、早期介入に重点を置くべきです。
知的機能の向上は、より幼い年齢での療育介入に比例するため、特にサービスが行き届いていない地域において、診断がもっと行われるようになることが求められます」
支援が必要な方に適切な支援がなされるよう、それにつながる研究はますますお願いします。
(チャーリー)