- 1. 性別に関する自分の感覚が他の人と異なるのは普通なのか?
- 2. 自閉症とジェンダーの間にはどんな関連性があるのか?
- 3. 自己実現と選択の自由を尊重するためには、どんな医療制度や社会の変革が必要なのか?
幼児期のイジー・ディアーは女の子らしい服よりも、男の子が履くスニーカーが大好きでした。
「私はいつも、女の子の友だちよりも、自分はずっと男性的だと直感していました」
幼稚園の頃から、イジーは自分の性別に疑問を持ち始めていました。
10代になると、自分の男性ホルモンが平均より高いのではないかと思うようになりました。
「私はいつも顔の毛がふさふさしていて、顎に小さな点々もあったんです」
今、23歳になったイジーはその時々によって男性、女性を行き来する「ジェンダー・フルイド」であると自認しています。
そして、イジーは散歩や車の運転をするときには必ずヘッドホンをしています。
「そうしないと不安感が高まり、どんな些細なことにもハッとするんです。
不安でたまらなくなって、ちょっとしたことでも息が上がってしまうんです」
イジーは3歳のときに、自閉症と診断されました。
幼稚園の先生も、イジーが衝動的で多動的であることを指摘していました。
トランスジェンダーやノンバイナリーの人は、自閉症である可能性が高いと言われています。
ある大規模な研究によると、一般の人の3倍から6倍も多くなっています。
研究者たちは、この関係を理解し、社会がこの交差点に生きる人たちをもっと受け入れるにはどうしたらよいかを探っています。
米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部の精神科医であるアロン・ヤンセン博士はこう言います。
「私たちは、自閉症と多様な性にかなり大きな重複があることを確認しています」
つまり、自閉症の人が、生まれたときに割り当てられた性別に疑問を持つことはよくあることなのです。
米スタンフォード大学の精神科医であるローレンス・ファング博士はこう述べます。
「ホルモンの違いなど、生物学に関連する理由があるのかもしれません。
自閉症スペクトラムの女性には、テストステロンが多く、男性的な顔立ちをしている人もいます。
一方で、自閉症スペクトラムの男性には、より女性的な特徴を持っている人もいます。
たとえば、医師は自閉症の男性の声がよく甲高いことを知っています。
自閉症の女性は顔の男性性が増す傾向にあるという研究もあります」
また、ファング博士の研究によれば、自閉症の男性と自閉症の女性の脳は異なっています。
感覚や運動機能を司る脳の部位が、この性差の鍵を握っているのかもしれません。
これは、自閉症の人たちが出生時に割り当てられた性別に疑問を抱きやすい理由を説明するのに役立つ可能性があります。
自閉症と多様な性には明らかな重複がありますが、その根源を理解するためには、さらに多くの研究が必要です。
ダニエル・サリバンは、彼女の生きた経験について科学者が何を発見するのかに好奇心を抱いています。
「私は女性であることがあまり好きではありませんでした。
私は自分が女性であると感じていませんでした。
しかし、私は自分が男性であるように感じることもありませんでした」
サリバンも自閉症です。
37歳の彼女は、米コロラド州でニューロダイバーシティ・コーチとして、自閉症スペクトラムの人たちの相談にのっています。
5年前に自閉症と診断されたときに、サリバンは安心しました。
なぜなら、自分がいつも少しよそ者のように、ずっと感じていた理由がわかったからです。
「私からすると、私以外の多くの人は、デートの仕方、人との話し方、服装など、
私がどこかでなくしてしまったマニュアルをもっているようでした」
今でこそ、サリバンは性別がない、ノンバイナリーの自閉症の人であることに慣れていますが、子どもの頃はずっと困難な状態でした。
「私はいつも失敗しているような、できないような気がしていました
自分の内面が壊れているように思っていました」
サリバンは、社会がもっと、もっと自閉症を受け入れてくれることを願っています。
それは、サリバンだけでなくサリバンの2人の子どもも自閉症スペクトラムをかかえているからです。
サリバンは自閉症の人の脳は恐れるべきものでなく、社会的な規範や期待に邪魔されることなく、心がオープンになっているのだと言います。
そして、多くの専門家は、サリバンが言うこの自閉症の人の心理状態が、自閉症と多様な性の重なりを後押ししていると言います。
米国立小児病院のジェンダーと自閉症プログラムのディレクターであるジョン・ストラングはこう言います。
「自閉症の人は、そうでない人とは多少異なる方法で社会的情報を取り込み、対応します。
そのため、自閉症の人は社会の期待にあまり縛られないかもしれません。
これは、社会における性別役割にも縛られないかもしれないことを意味します」
イジーは、自分のユニークな脳と性別の流動性が自分にとって最大の才能であり、回復力の根源であると言います。
「結局のところ、自己実現した人生を送れるようにすること。
つまり、選択をし、その選択を伝えられるようにすることなのです。
そのようなニーズに対応できる医療制度が必要なのです」
誰もが自分らしくのびのび生きていける。
ますます、そんな社会になるように願っています。
(チャーリー)