- 自閉症スペクトラムの人は左利きが多いのですか?
- ADHDの人には左利きや両利きが多いのですか?
- 発達障害の人に左利きや両利きが多いのはなぜですか?
社会性、気分、注意力などの脳の働きは、人それぞれで、とても多様です。
たとえば、ある人はとても社交的で、24時間365日他人と過ごすことを楽しみます。
一方で、あまり社交的でなく、ほとんどの時間を一人で、あるいは少数の親しい家族や友人と過ごすことを好む人もいます。
ほとんどいつも機嫌が良い人もいれば、ネガティブな感情を示す人もいます。
注意力についても、ある人は非常に複雑な仕事でも何時間も集中できますが、ある人はほんの数分取り組んだだけで集中力を失いがちです。
ニューロダイバーシティ、神経多様性という概念は、このような脳機能の多様性を、病的でない形で捉え直すために作られたものです。
たとえば、自閉症は発達障害に分類されますが、この言葉は、自閉症が本質的に病的な状態であることを暗に示しています。
これに対し、ニューロダイバーシティ運動の支持者は、自閉症スペクトラムは一般人の脳機能の多様性の一部であると主張します。
彼らによれば、自閉症スペクトラムの人たちは「病気」として扱われるべきでなく、「治療」する必要もなく、ありのままを社会に受け入れられ、支援されるべきです。
脳機能の多様性でよく観察されるものに、利き手があります。
約90パーセントの人が「右利き」です。
「左利き」とニューロダイバーシティは関係あるのでしょうか。
まず、左利きと自閉症スペクトラムに関するデータを見てみましょう。
このテーマに関しては、非常に多くの科学的研究が長年にわたって発表されてきました。
そのため、自閉症スペクトラムの人の利き手に関して、いわゆるメタアナリシスを行うことが可能でした。
メタアナリシスとは、発表された複数の研究のデータを組み合わせて統計解析を行うものです。
こうすることで、一つの研究では起こりうる方法論の問題の影響を少なくし、結果がより強固になります。
つまり、メタアナリシスではとても信頼性の高い結果が得られるのです。
利き手と自閉症スペクトラムに関するメタアナリシスでは、自閉症スペクトラムである723人とそうでない476人のデータを分析しました。
「左利き」、「両利き」、「左利きか両利き」の3種類について分析算出できました。
その結果、自閉症スペクトラムの人は、自閉症でない人に比べて2.49倍も「左利き」が多いことがわかりました。
一般には約10パーセントであるのに対し、自閉症スペクトラムの人の約28パーセントが左利きでした。
また、自閉症スペクトラムの人は、一般集団よりも「両利き」である可能性が2.34倍高く、一般集団よりも「左利きか両利き」である可能性が3.48倍高くなっていました。
つまり、自閉症スペクトラムの人は、一般集団よりも「左利き」になる確率が高いようなのです。
ニューロダイバーシティの対象は、自閉症スペクトラムだけではありません。ADHD(注意欠陥多動性障害)もその一つです。
ADHDの人たちを対象に手指に関するメタ分析が行いましたが、あまり明確な結果は得られていません。
「左利き」と「両利き」それぞれについては、統計的に有意な結果は出ませんでした。
しかし、「左利きか両利き」については、ADHDの人は一般集団と比較して、有意に割合が多いことが示されました。
ADHDの人は、一般集団の18.1パーセントに対し、27.3パーセントの確率で「左利きか両利き」でした。
つまり、自閉症スペクトラムの場合よりも影響は小さいものの、ADHDの場合も「左利き」が多いという概ね同じような傾向にあることが示されました。
どうして、発達障害の人には「左利き」や「両利き」が多いのでしょうか?
まだ完全にはわかっていません。
しかし、いくつかの手がかりはあります。
重要な事実として、「左利き」は「手」とはあまり関係がないことが挙げられます。
一般に、手を見ただけでは、「左利き」と「右利き」を見分けることはできません。
「左利き」か「右利き」かの違いは、「脳」にあります。
「左利き」の人は、文字を書くなどの複雑な運動をするときに、右脳の運動野が優位になります。
「右利き」の人は、左脳の運動野が細かい作業をするときに優位になります。
「左利き」か「右利き」かは脳で決まるため、それに関係する遺伝子は脳の発達にも関係することが多いと考えられます。
関連する遺伝的経路のいくつかは、神経発達状態に関与することもこれまでに示されています。
セバスチャン・オクレンバーグ博士
(出典:米Psychology Today)(画像:Pixabay)
「利き手」は手ではなく、脳で決まる。
その当たり前のことを思えば、関連はあるのでしょう。
「右利き」の人が多いこの世界では、「左利き」の人に不便なことが多いことは忘れずに注意しなければなりません。
(チャーリー)