- 自閉症における脳の変化は、どのような範囲に及んでいるのか?
- 現状の自閉症治療法の難しさは何に起因しているのか?
- 自閉症の脳に見られる変化は、どの機能や領域に影響を及ぼしているのか?
自閉症における脳の変化は、これまで知られていたよりもはるかに広範囲に及ぶことが、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)主導の研究で明らかになりました。
この研究は、自閉症が脳に及ぼす影響を分子レベルで研究した、これまでにない包括的なものとなります。
自閉症における脳の変化は、社会的行動や言語に影響を与えると考えられている特定の領域だけでなく、大脳皮質全体に及ぶものでした。
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)が分子レベルでどのように進行するのかについての科学者の理解を大きく前進させるものです。
今回の研究は自閉症の分子レベルでの特徴を明らかにするための包括的なものでNature誌に掲載されました。
アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経疾患には明確な病態がありますが、自閉症やその他の精神疾患は明確な病態がなく、より効果的な治療法を開発することが困難でした。
今回の研究では、推論、言語、社会的認知、精神的柔軟性などの機能に関わる高次重要連合領域か、一次感覚領域かに関係なく、分析した11の皮質領域のほぼすべて、脳全体に変化が見られることがわかりました。
本研究の著者であるUCLAのゴードンおよびバージニアマクドナルド特別教授のダニエル・ゲシュウィンド博士(人類遺伝学、神経学、精神医学)はこう言います。
「この研究は、自閉症の脳を包括的に分析するために必要だった、多くの研究室メンバーの10年以上に及ぶ研究の集大成です。
我々は今ようやく、自閉症と診断された人の脳の状態を、分子レベルで把握できるようになりつつあります。
これは、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中などの他の脳疾患と同様に、分子病理学を定義するもので、この疾患のメカニズムを理解するための重要な出発点となり、疾患を変える治療法の開発に情報を与え、開発を加速させるでしょう」
ちょうど10年前、ゲシュウィンド博士は、側頭葉と前頭葉という2つの脳領域に着目し、自閉症の分子病態を特定する最初の取り組みを行いました。
これらの領域を選んだのは、高次の認知、とくにに自閉症が障害をもたらす社会的認知に関係する高次の連合領域だからです。
今回の研究では、自閉症の49人から死後に採取した脳組織サンプルと、対照となる自閉症でない54人の脳組織サンプルを比較しました。
それぞれから採取した4つの主要な皮質葉のRNAをシークエンスして、11の皮質領域における遺伝子発現を調査しました。
その結果、それぞれの皮質領域で変化が見られました。
RNAレベルの変化が最も大きかったのは、視覚野と頭頂皮質であり、触覚、痛み、温度などの情報を処理する領域でした。
これは、自閉症の人において頻繁に報告される感覚過敏を反映しているのかもしれないと研究チームは述べています。
なお、研究チームは、自閉症の遺伝的リスクは、脳全体でみると発現量の少ない神経細胞に関わる特定の遺伝子群に濃縮されているという強い証拠も発見しました。
脳内のこれらの相関するRNAの変化が、自閉症の原因である可能性を示していました。
研究チームの次のステップとしては、研究チームが自閉症で発見した遺伝子発現の変化を元に戻す治療法を開発するために、計算科学的アプローチを用いることができるかどうかを見極めることです。
そのメカニズムをより理解するためには、オルガノイドを用いて変化をモデル化することが役に立つだろうとゲシュウィンド博士は述べています。
(出典:米カリフォルニア大学ロサンゼルス校)(画像:Pixabay)
「分子レベル」で研究することによって、自閉症に関わる脳の違いは一部だけのものでなく、もっと広範囲であったことがわかったという研究です。
うちの子も小さな頃にCTだかMRIで脳を診てもらったことがあります。
私もその画像を見せてもらいました。
そのときに言われたことは、
「これで見る限り、脳に異常はまったくありません」
もっと、ミクロなところに原因があるのだろうと私も思ったものです。
支援が必要な方への適切な支援につながる研究には期待しています。
(チャーリー)