- 自閉症の人は他者の感情状態を感じ取りたいと思う能力を持っているのか?
- 自閉症の人が感情的な共感と認知的な共感の違いは何か?
- 自閉症の人の共感力に焦点を当てることで、どのように理解や対応が向上する可能性があるのか?
イスラエルの心理学者たちは、新しい研究が自閉症の人たちがどのように共感を経験するのかを理解する上で大きな変化をもたらすはずだと述べています。
これまで、専門家も多くの人も、自閉症の人は共感能力が低いと考えています。
しかし場合によっては、自閉症の人は他人の感情状態をきちんと感じ取り、それに応えたいと思う能力はもっています。
しかし、その感情状態が何であるかを認識し、どのように応えたらよいかを知るのに苦労していると示唆されています。
これらはそれぞれ、情動的共感(affective or emotional empathy)、認知的共感(cognitive empathy)と呼ばれています。
イスラエルベングリオン大学が主導した1905人の参加者による査読付きの研究では、自閉症の人たちの共感レベルは必ずしも他の人たちより低いわけではなく、場合によっては感情的な共感レベルは実際には高いこともあると論じています。
自閉症の人が直面する共感に関する最大の課題は、共感力の低さではなく、感情的な共感と認知的な共感の間に遅れが生じていることをこの研究結果は示唆しています。
自閉症でない人の場合、感情的な共感と認知的な共感のレベルはほぼ一致しています。
感情的共感によって他者の経験を感じたとき、適切な反応を決定し実行するための認知的共感力も備えています。
この研究を担当した心理学者の一人であるフロリナ・ウゼフォフスキー博士は次のように語っています。
「私たちが発見したのは、自閉症の人たちは状況に影響を受け、状況の認知的理解が、感情的反応よりも遅れてしまうということです」
ウゼフォフスキー博士は、ベングリオン大学の同僚イド・シャレフ、生命科学科とボストン小児病院のアラル・エラン博士、ケンブリッジ大学とバルイラン大学の共同研究者とともにAutism Researchに掲載されたこの研究に取り組んでいます。
この研究は、詳細なアンケート調査に基づいたものです。
自閉症の人たちの感情的・認知的共感がどのように経験されるのかについて、これまでで最も深く掘り下げた研究です。
「この研究は、自閉症と診断された人が認知的共感を欠いているとか、感情的共感を欠いている、そう考えるのは単純すぎるということを示しています。
この2つの共感がどのように関係し合っているのかを理解する必要があります。
それが診断やいくつかの自閉症特性の理解の助けになると考えています」
ウゼフォフスキー博士は、もし、2つのタイプの共感の間のギャップに焦点を当てるように、自閉症の人の共感についてシフトすれば、セラピストは、自閉症の人をより良く理解できるようになり、社会も自閉症の人たちへ適切な対処ができるようになるだろうと述べています。
「自閉症の人の経験をよりよく理解することは、何が起こっているかを理解し、よりよい助けとなる療育介入方法を設計するのに役立ちます。
また、一般社会では、自閉症の人は単に共感能力が低いと思われているので、その偏見を覆す重要なこととなります。
多くの人がこのことをよりよく理解すれば、自閉症の人たちをよりよく理解することができるようになるでしょう」
(出典:イスラエルTHE TIME OF ISRAEL)(画像:Pixabay)
「共感能力が低い」
そんな思い込みによって、人によってはどれだけの苦しみ、悲しみがあったでしょう。
誤解なく、正しく理解されるよう、ますますの研究を望みます。
(チャーリー)