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母親の「うつ」が自閉症の子を悪化させることはない。研究

time 2022/08/28

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

母親の「うつ」が自閉症の子を悪化させることはない。研究
  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもを持つ母親は、高い割合でうつ状態になりやすいのか?
  • 母親のうつ病が自閉症の子どもの行動問題に影響を与えるのか?
  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもを持つ家族のストレスが、母親のうつ病にどう影響するのか?

発達障害でない子どもを持つ母親に比べて、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもを持つ母親は、高い割合(約50パーセント)でうつ状態のレベルが高くなっていました。

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者による研究結果です。
“Family Process”に掲載されています。

これまでの研究では、親がうつ病であることは子どもが精神的な健康や行動の問題を抱えるリスクを高めることが示唆されていました。
しかし、今回の研究で、それは違うことがわかりました。

「母親のうつ病の症状は、多くのストレスを経験する自閉症の子どもを持つ家庭においても、子どもの行動の問題の増加につながるものでないことがわかりました。
この結果には驚きましたが、良い発見です」

そう、今回の研究を行ったカリフォルニア大学サンフランシスコ校の精神医学と行動科学科の助教授、ダニエル・ルビノフ博士は言います。

「特別支援を必要とする子どもの親であることは、本質的に毎日がチャレンジングです。
慢性的なストレスの典型的な例となります。
だからこそ、私たちはストレスが健康に及ぼす影響を調べる研究において、介護をしている母親に焦点を当ててききました」

そう、ともに研究を行った同大学同学科の教授、エリッサ・エペル博士は言います。

「私たちは、うつ病をかかえる母親は、平均して、抗老化ホルモンであるクロトのレベルが低く、免疫細胞が古いなど、生物学的老化の兆候が早く現れる傾向があることを既に知っています。
そこで、母親のうつ病が子どもに与える影響と、逆に子どもが母親のうつ病に与える影響を理解したいと考えました」

研究チームは自閉症の状態に関係なく、子どもの行動上の問題によって、母親のうつ病のレベルが高くなることが予測されることを発見しました。
しかし、その逆、母親のうつ病の有無は、子どもの行動問題を予測するものにはならないことがわかりました。
ルビノフ助教授はこう言います。

「今回の研究で、母親のうつ病が子どもの症状の悪化にはつながらないということがわかりました。

これは、ASDの子どもを持つ母親が子どもの診断や行動問題に対して感じている罪悪感を軽減するために特に重要です。

この研究結果でわかった、
慢性的な介護という高ストレスの状況下で、多少のうつ病に悩むことは一般的であること、
そして、母親のうつ病が子どもの行動問題を悪化させる可能性は低いということが、
母親たちの安心につながってほしいと期待しています」

自閉症の子の親が自責の念や罪悪感は抱くことはよくあります。
それが、長期的にうつ病の悪化や生活満足度の低下につながることは、これまでの研究で明らかになっています。

今回の研究では、86組の母子を対象に、18カ月にわたって母親の「うつ」と子どもの行動問題について、測定を繰り返し行いました。

参加した母親の半数は自閉症の子どもをもち、もう半数は発達障害でない子をもっています。
子どもの年齢層は2歳から16歳。
小学生以下が75パーセントと大半を占めました。

母親のうつ病は、母親が記入する自己報告式の尺度であるInventory of Depressive Symptomsを用いて測定されました。
子どもの行動は、癇癪、攻撃性、反抗性などの外面化行動に焦点を当てたChild’s Challenging Behavior Scaleを母親が報告することによって測定されました。

母親のうつ病と子どもの行動問題との双方向の関連は、これまでの研究でも報告されていました。
しかし、自閉症の家族におけるこれらの関係を検討した研究はほとんどありませんでした。

自閉症の家族は、夫婦間の葛藤が多く、人間関係の満足度が低く、その他多くの課題を経験する傾向があると、ルビノフ助教授は言います。

「ストレスの多い家庭環境は、家族にも波及し、母親と子どもの関わり方を変えてしまう可能性があります。
私たちは、子どもが自閉症である場合など、高ストレスの家族システムの中で、母親と子どもの精神衛生の関連性が異なるかどうかを確かめたかったのです」

この研究は、自閉症の子どもを持つ家族は、高いストレスを経験することを認めています。
しかし、ストレスが彼らの唯一の特徴ではないことに注意し、慎重に取り組みました。

「自閉症の子どもを持つ母親の多くは、感情的な親密さや子どもとの積極的な交流に高い喜びを感じています。
これらは、支援プログラムによって積み重ねることができる重要な経験です」

研究の後、研究チームは育児ストレスを管理するために、すべての親にマインドフルネスを学ぶ機会を提供しました。
エペル教授はこう言います。

「親たちは、共通の課題を共有し、対処するための内なる戦略を学ぶことに感謝していました。
多くの研究が、マインドフルネストレーニングが、育児ストレスに役立つことを示しており、また私たちの研究に参加した親たちも、精神的健康の向上を示していることが分かりました」

困難な生活状況をかかえていても、ポジティブな感情や喜びを経験し、それに気づくことが重要だと言います。

「慢性的なストレスが健康や気分に及ぼす影響を考えれば、介護をする親たちにも精神的なサポートが必要とされます。
子どもの精神的健康と同様に、親の精神的健康への支援も不可欠です」

研究チームは、今後の研究では母親のうつ病と子どもの内面化症状(例えば、引きこもり、不安、感情反応性)との関連についても調べたいと述べています。

(出典:米NEWS MEDICAL)(画像:Pixabay

自分のせいで、子どもがますます悪い状態になってしまう。

そんな心配を減らしてくれる、救いの研究結果ですね。

自閉症の子の親たちも助けてくれる。マインドフルネスのススメ

(チャーリー)


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