- 発達障害や自閉症をもつ子どもの強みをどう生かすべきか?
- 発達障害やADHDに対して、どんなサポートが必要か?
- 子どもの異なる能力や興味をどのように尊重し支援すべきか?
マレーシアのクアラルンプール郊外にある自転車店で、ムニラ ハニム アフマド ジャフディとアフマド シャウキ アフマド サイードがサイクリングに向けて準備をしています。
これから、40kmを仲間と走ることを楽しみにしています。
アフマッドとムニラには、14歳の息子ウザイアがいます。
ウザイアは驚くべき持久力とサイクリングを楽しんでいることで今、注目を集めています。
ウザイアは週に合計200kmから300kmの距離を走ります。
いつもそばには父親のアフマッドや何人もの「お目付け役」となる熱心なライダーたちがいます。
ムニラは、ウザイアが2歳のときに反復的な動きをしていることと、双子の兄弟と比較して言葉の発達が遅れていることに気づきました。
「何か問題があるのではと思っていましたが、アイコンタクトはしっかりできていました」
3歳のときに、感覚処理障害と診断され、その後重度の自閉症、ADHD、失読症と診断されました。
発達障害のひとつである自閉症は、社会的相互作用やコミュニケーションが困難で、思考や行動のパターンが制限されたり、繰り返されたりします。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の方は、落ち着きがなく、集中力に問題があり、衝動的に行動することがあります。
母親のムニラと父親のアフマッドは、ウザイアの症状に注目するよりも、むしろ強みとして生かすことを決意しました。
そして、ウザイアにさまざまな活動を薦めました。
「しかし、ウザイアを連れて兄弟とともにラグビーやサッカー、水泳などを試していましたが、なかなか定着しませんでした」
2018年に、ウザイアに自転車に乗ることを試させてみました。
すると、自転車に強く興味をもち、ペダルを漕ぐようになりました。
父親のアフマッドはダイエットをしたいと考えていたので、ウザイアをサイクリングに連れていきました。
「最初は6km、15km、25km、35kmと、ウザイアはついて来るのに必死でしたが、特別な才能があることがわかりました」
今では、両親ともにウザイアが何キロまで走れるのかわからないといいます。
1年間で300km、400km、600kmを一気に走破し、マレーシア最年少のスーパーランドヌールとしてマレーシア記録に名を連ねています。
「息子が初めて100km走ったときには、私たちが無理やり止めなければなりませんでした」
言葉が不自由でも、ウザイアは促したり、彼独自の手話を使って自分の言いたいことを伝えることができます。
また、不快感を表現したり、水が欲しいときに合図を送ったりすることもできます。
アフマッドは息子のウザイアが無理をしないように、また安全を確保するために、監視システムも作りました。
ウザイアのスポーツウォッチに接続されたワイヤレスデバイスによって、ウザイアの心拍数や自転車の速度を知ることができ、必要に応じてギアチェンジや減速するように合図を送ることもできます。
2021年に、新型コロナ感染拡大のためにパイロットの仕事を休職していたアフマッドは、自転車ショップを開きました。
ショップは、地元のサイクリング・コミュニティの拠点となり、毎週のライドがここを起点に行われています。
アフマッドはウザイアのサイクリングに対する情熱を周囲の人々が十分に理解し、尊重することを願っています。
「例えば、お店のスタッフは一緒にサイクリングに行きます。
そうしてウザイアの世界を知ることができますし、言語療法士も一緒にサイクリングをしています」
ウザイアがサイクリングをするようになってから、家族の生活はすっかり変わってしまいましたが、11歳と15歳の他の3人の子どもたちも協力的です。
「他の子どもたちもウザイアをとても誇りに思っていますし、ウザイアの状態を十分に理解しているので、知らない人に質問されると喜んで説明します」
2019年には、ウザイアの兄のアーマドは自閉症のために立ち上がったとして、トゥアンク・バイヌン・ヤング・チェンジメーカーズ賞を受賞しています。
受賞に際し、当時12歳のアーマドはこう語っています。
「兄はまだ、きちんと読み書きや会話はできませんが、彼なりに輝いています。
私は、他の親たちにも、子どもたちをさまざまな活動に触れさせ、子どもたちが興味を持っていることを探し続け、兄弟姉妹で協力し合うことを奨励したいのです」
母親のムニラは、自閉症の子だけでなく子どもの教育には、規律と一貫性が不可欠だと言います。
「私たちはウザイアが自閉症だからといって、『フリーパス』を与えたことは一度もありません。
なので、たとえば家事にも他の人と同じように参加しています」
一方で、家族はウザイアには特別支援が必要であることも理解し、ふさわしい教育を熱心に探しもしました。
「6歳のときから週に3回、先生に家に来てもらっています。
先生には、ウザイアの生活に関連した話題や技術に重点を置いてもらうようお願いしていて、カリキュラムは交通安全やサイクリングに関するものが中心です。
健康面では、サイクリングにエネルギーを注ぐことが、健康状態や認知行動に良い影響を与えています」
現在では、ウザイアがパニックを起こすこともなくなり、穏やかになり、睡眠パターンも改善され、サイクリングによって社会性も育まれています。
2018年にウザイアが初めて自転車に触れたとき、ウザイアにとって人生の大きな出来事になるとは両親も思っていませんでした。
それでも、両親は真に向き合い他人に任せず、それまで自転車に乗ったことがなかった父親のアフマッドはウザイアにずっと付きあい、体重も20kg減りました。
他の親からも、自分の子もサイクリングに連れて行ってと頼まれたこともありました。
「自転車で走ることが大好きな男の子がいました。
しかし、その子の親は一緒に自転車で走ろうとはせず、車でついて走っていました」
母親のムニラは、親は子どもを応援するために多くの努力をしなければならないと言います。
「親があきらめなければ、子どもはいつまでも希望を持ち続けることができます」
(出典・画像:香港South China Morning Post)
一緒にすることで、親もいろいろなことを学べます。何より楽しさも2倍です。
自転車でなくても、散歩だっていいと思います。
(チャーリー)