- 感情をコントロールするためのテクノロジーが自閉症の人々のニーズにどの程度応えているか?
- 自閉症の人たちが求める感情調整技術とは何か?
- テクノロジー企業が自閉症の人たちと一緒に製品開発を行う必要性はあるか?
多くの自閉症の人が、自分の感情を表現することに困難を感じています。
その結果、不安、抑うつ、怒り、身体的な健康問題が増加することがあります。
調査によれば、自閉症の成人は同年代の成人と比べて、うつ病や不安神経症を経験する可能性が非常に高いことが分かっています。
テクノロジーが人々の感情をコントロールし、感覚に圧倒される前に警告を発してくれるような未来を想像してみてください。
感情をコントロールするためのテクノロジー・ソリューションが、自閉症の人たちのために多く開発されるようになりました。
また、デジタル心拍計などの技術を応用して、自分のストレスレベルを把握しようとする自閉症の人たちもいます。
スマートウォッチ、バーチャルリアリティ(VR)、ブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)などのウェアラブルテクノロジーを使って、自閉症の人々が自分の感情をコントロールすることについて、多くの研究がなされています。
BCIは、脳の電気活動と外部機器(一般的にはコンピュータやロボット手足)との間の直接的な通信経路となります。
しかし、私たちの研究以前は、自閉症の人たちに、この技術がどれほど有用であるかについての意見を求めていませんでした。
開発者が自閉症の人たちのニーズを理解していないため、使い勝手の悪さが、自閉症のユーザーにとって長年の問題になっています。
最近の研究では、自閉症の人向けのウェアラブルテクノロジーは、わずか10パーセントしか彼らのニーズに対応しておらず、90パーセントが自閉症の特徴を修正すべき欠点として捉えていることもわかりました。
私たちの最近の調査では、自閉症の人たちが感情をコントロールするために以前使用したことのあるテクノロジーについての考えや、テクノロジーに何を求めているかについての見解を探りました。
34人の自閉症の人とその支援者(家族、医療・福祉関係者、大学職員)がフォーカスグループに参加しました。私たちは、感情調整技術がどのように利用できるのか、情報を提示しました。
例えば、生理的なストレス信号を検知し、ユーザーに対処法の開始を促すスマートウォッチなどです。
その結果、自閉症の人たちが感情をコントロールするためのテクノロジーの利用に熱心であることを知りましたが、コストがかかりすぎたり、トレーニングなしでは使いにくかったり、彼らのニーズにうまく合っていないことが多くあることもわかりました。
そのため、ウェアラブル・テクノロジーは、デザイン・プロセスに自閉症の人が参加することによって、自閉症の人々にとってより有益なものになる可能性があることがわかりました。
ある参加者が、自分の娘が感情的な問題にどのように対処しているかを話してくれました。
「彼女は、見た目も態度もまったく問題ありません。
でも、そうではないんです。
彼女はそれをうまく隠して、不安やその他もろもろを隠しているのです。
時には、それがが大きな爆発につながることもあるのです」
一方、介護スタッフは、自閉症の人たちの気持ちを理解することがいかに大切かを語ってくれました。
「行動が始まる前に理解したい。
エスカレートする前に。
私たちは、安心させたり、気をそらしたりするために、その前に理解できることが必要です。
自分の空間を与えてあげてください」
別のケアワーカーはこう言っています。
「パターンがあることは分かっていても、それが分からないんです」
参加者は、テクノロジーによってすべてが変わると語っています。
ある自閉症の人の親はこう言いました。
「何か……自己調整できるような、自分の気持ちを伝えられるようなものが欲しい。
色と連動するようなアプリで、自分の気持ちを表す絵を選べば、大げさに歌ったり踊ったりしなくても、みんなに伝わるような」
自閉症の参加者の中には、IQの高い人へのサポートが不足していると感じている人もいました。
ある人はこう言っています。
「2つの世界の間にいるような感じがします。
重度ではないんです。
なので、多くの支援を必要とするようには思われていません」
これまでのほとんどの研究は、自閉症が医学的な病気であり、治療が可能であるという考えなど、自閉症に関する時代遅れの理論に基づいていました。
しかし、最近のニューロダイバーシティ(神経多様性)運動の躍進をきっかけに、自閉症の研究を「治そう」とするのではなく、自閉症の人々や彼ら独自のコミュニケーションスタイルに力を与えることに焦点を当てることが求められるようになりました。
自閉症の人たちも、自閉症を覆い隠そうとする技術やデザインではなく、自立を促進するものであるべきだということに同意しています。
多くの自閉症の人たちがは、自分の能力に自信が持てないために、テクノロジーを使うことに消極的でした。
その他の障壁としては、コストや既存のテクノロジーに対する認識不足も挙げられます。
私たちの研究結果は、個人の人生の目標を考慮した支援戦略の重要性を強調しています。
新しい技術の開発には多くの資金が費やされていますが、研究者も医療機関も、それが実際にどのように実装されるかを考慮していないことがよくあります。
ある自閉症の人は、こう言っています。
「もし、誰かのために何かを作ろうとするなら、その人が何を望んでいるのかを聞いてください。
ただ何かを作って、これが私が作ったものですと言うだけではいけない。
学習障害のために何かを作ったと主張する人の論文が多くあります。
しかし、それをテストしてもらったことがあるのか?誰かに使ったことがありますか?」
テクノロジー企業は、自閉症の人たちと一緒に製品を作る必要があります。
そして製品は、人を変えようとするのではなく、個人のニーズに応じて環境を適応させることを目指すべきでしょう。
自閉症は、単に世界の見方が違うだけなのです。
自閉症の人とともに行うことは、テクノロジーに基づく有用な支援策の開発に役立つだけでなく、誰にとってもより包括的な環境を作るのに役立つはずです。
ローレン・ギリーズ・ウォーカー
西スコットランド大学 コンピューティング学部 博士研究員/准講師
ナイーム・ラムザン
同大学、コンピューティング工学教授
(出典:英THE CONVERSATION)(画像:Pixabay)
思い込みやイメージではなく、実際に試してもらう、一緒に考える。
商品を「売る」ためには必要なことですが、「売る」必要がないアカデミックなところでは、どうしてもそれが希薄になってしまいます。
(アカデミックなところがするべき研究開発は、企業ができない、もっと長期的な今売れる見込みがなくても将来役立つ未来を創る可能性があるモノですから)
しかし、実際に多くの方が使える(≒売れる)製品には必要となってきます。
アカデミックなところが得意とする、特殊で大掛かりなものだと、高価なだけでなく例えば子どもが学校に着けていったり、大人が日常使いするのも困難になるので、Apple WATCHやスマホなど、今あるもので実現できると利用しやすいですね。
(チャーリー)