- 自閉症は男女に同じ割合で発生するのか?
- なぜ自閉症では男児の方が診断されることが多いのか?
- どのようにして自閉症の診断における性差を軽減できるのか?
自閉症は女の子にも男の子と同じくらい頻繁に起こる可能性がある。
一般的な診断ツールを微調整して性差を最小にし、「きょうだい児」赤ちゃんを5年間にわたって追跡調査した新しい研究で、それが明らかになりました。
自閉症の研究において、女の子の約4倍の男の子が自閉症と診断されることはよく知られています。
この自閉症の男女比の違いは、生物学的な違い、診断の偏り、あるいはその両方を反映している可能性があることが、これまでの研究で指摘されています。
今回の研究では、一般的に用いられている自閉症特性測定ツールが、男の子と女の子でどのように異なる特性を捉えているかを評価しました。
そして、測定に見られた性差を調整した結果、自閉症を持つ男の子と女の子の割合はほぼ同じになりました。
この研究を行った米ミネソタ大学小児科のキャサリン・バローズ助教授によれば、この研究結果から、臨床医が自閉症の女の子をより正確に識別するために、自閉症の特徴が時間の経過とともにどのように展開するかを調べる必要があることを示唆している、人生の早い時期に自閉症と診断される閾値ぎりぎりの特性を持つ子どもたちにとくにそうであると言います。
今回の研究では、複数の時点にわたって子どもたちを追跡し、評価を続けることで、そうしなければ見落とされていたかもしれない女の子たちを特定し、正しく診断することができました。
バローズ助教授の研究チームは、自閉症の兄、姉を持つ子ども377人の子どもを調査しました。
このような「きょうだい児」は、自閉症と診断される可能性が高くなっています。
そうでない人が1〜2パーセントであるのに比べ、約20パーセントです。
研究チームは2歳未満は幼児用自閉症観察スケール(AOSI)、それ以上は自閉症診断観察スケジュール(ADOS)を用いて、生後6カ月から5歳までの間に4回、子どもたちの評価を行いました。
その結果、2歳の時点で86人が自閉症と診断されました。
そのうち女の子は20人。
男女比は3対1強となり、きょうだい児についての他の研究結果と一致したものになりました。
研究チームは、AOSIとADOSの結果を調和させ、それぞれのツールのどの項目が診断上の中核的特性を測定するかを明らかにし、研究期間全体にわたってこれらの特性の変化を追跡しました。
そして、AOSIとADOSが男の子と女の子で測定結果がどの程度同じなのか、各項目が男女それぞれでどの程度特性を測定できているのかを分析しました。
すると例えば、「共同注意の開始」は女の子の方が男の子よりも社会的コミュニケーション能力の指標として弱いこと、固定観念や反復的行動は、男の子よりも女の子の方が制限的・反復的行動の分野でより強く高得点を示すことがわかりました。
「このような違いを考慮しない測定での合計点を用いることは、リンゴとオレンジを比べるようなものです」
そう、バローズ助教授は言います。
このような測定上の偏りを考慮すると、子どもたちの社会的コミュニケーションの問題や制限的・反復的行動の経時的変化に基づいて、子どもたちは4つのグループに分けることができました。
その各グループ内では、男女比はほぼ1対1でした。
この研究成果は『Biological Psychiatry』誌に掲載されています。
この研究には参加していない米ドレクセル大学の教授で、修正可能な自閉症リスク要因研究プログラムのリーダーであるダイアナ・シェンデルはこう言います。
「これは進展ですが、一つのサンプルにすぎません。
しかし、自閉症の特性の軌跡を追跡した研究結果は、きょうだいに限らず、有効であることを示唆してます」
また、この研究には参加していない米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の精神医学・教育学著名教授であるキャサリン・ロードも、自閉症と診断される可能性の高い子どもたちにとって、長期にわたって特性を追跡することは賢明な方法であると述べています。
しかし、性差の偏りをなくすためにこのデータを使うことよりも、これらの子どもたちの成長の軌跡を前向きに追跡することに使うほうが重要だとも述べています。
支援を必要とする子どもたちを見過ごすことがないよう、さらなる研究により、適切な診断につながることを願っています。
(チャーリー)